ときめきアパート性活 愛しの管理人さんと魅惑の隣人たち

ときめきアパート性活
愛しの管理人さんと魅惑の隣人たち

小説:空蝉

挿絵:ロッコ

リアルドリーム文庫

ときめきアパート性活 愛しの管理人さんと魅惑の隣人たち

登場人物

じま けん

ひなた荘の五号室に住む十九歳の浪人生。容姿も体形も平均的な童貞。要領が悪く冴えないが、真面目で一生懸命なお人好し。美幸に一目惚れし、一途に想いを募らせる。

なみ ゆき

ひなた荘の一号室に住む二十五歳の管理人。Hカップの爆乳に安産型のお尻と肉感的なボディ。ポニーテールに纏めた黒髪をなびかせる、笑顔が似合う朗らかな女性。

あか

ひなた荘の六号室に住む二十九歳のホステス。スリップ姿でアパート内を闊歩する豪快な性格。酒とおしゃべりを愛する、欲求に素直で明け透けな女性。賢太の昔馴染み。

なみ ゆい

ひなた荘の二号室に住む十八歳の女子高生。美幸の妹。頭脳明晰、好奇心旺盛で怖いもの知らず。賢太の不器用さと誠実さに好意を抱いている。

第一章 お姉様の童貞指南

九月も終わりに近づき、街路を歩けば落ちた紅葉の葉が嫌でも目に入る、今日この頃。秋の気配が深まるにつれ、ある種の人々の胸には言いようのない焦燥が去来する。

「……あと、もう四か月もないのか」

明くる年のセンター試験を控えて焦り募らせる、受験生。

築六十年を超える木造ボロアパート「ひなた荘」に暮らす青年、じまけんもまた、その一員だった。

「……はぁ」

秋風に吹かれてガタガタと窓が鳴る。その向こうに覗く夕景色の艶やかさを目にしても、口をついて出るのは溜息ばかりだ。

着古した長袖Tシャツとゴム紐ズボンという、人目がないからこその部屋着姿で、座卓の前に腰を落ち着けてから、早三時間。改めて広げた参考書とノートに目を落とすも、お世辞にも効率よく進んでいるとは言えない。上手くいかない状況に気がはやるばかりで、集中力は削がれゆく一方だ。

すでに昨年失敗を経験した一浪の身である事も、人一倍の焦りを生む一因となっていた。昨年の受験前に啖呵を切って東京に出てきた手前、郷里の両親に金銭面での援助を願うわけにもゆかず、家賃と食費をアルバイトで賄いながらの受験勉強。その疲労が蓄積している事も、集中力の欠如に一役買っている。

「……はぁぁ」

隙間風が吹き込む年季の入った部屋壁にいくら嘆息をぶつけてみた所で、悪循環から抜け出せるわけではなかったが――。

自身の居室である五号室の扉へと近づいてくる、廊下の軋み音を耳にしてしまったからには、もう、今まで以上に盛大な溜息を吐かずにはいられない。

災厄は容赦なく、今日もいつも通りの時間に訪れた。

「よー、苦学生。相変わらずしけた面してるねぇ」

遠慮の「え」の字も感じられない大股で五号室の戸を開け放ち、姿を見せたのは、妙齢の女性。金に染めたセミロングヘアを靡かせて歩み寄る彼女の頬や目元には、すでに酔いを示す火照りが差していた。

元より垂れ目がちの眼がトロンと酔いにまどろむ様は、知った仲である賢太からすれば見慣れたもの――のはずが、毎度艶めかしさを感じずにはいられない。赤いリップの乗った唇がまた、色っぽさに拍車をかけていた。

あか。隣の六号室の住人である彼女にウインクを浴びせられ、賢太は自身の頬にも火照りが差すのを実感した。

「朱里さん。またそんな格好で……! ちっとは気を遣ってくださいっていつも言ってるでしょ」

目を背けつつ、日々の恒例となった苦言をぶつける。

無遠慮に受験生の部屋を訪ねてくる時点で相当だが、加えて、纏っている服装がおかしい――はっきり言って異常だ。二十九の熟成されたプロポーション。身長百六十六センチの肢体と、一個ずつが手に余るサイズの胸の膨らみ二つ。それらを覆うのが、ただの二枚。今にも透けそうな薄手のスリップと、その下に隠れているショーツのみという有様なのだから、十九歳の健全男子としては目のやり場に困ってしまう。

「いっちいち着替えるの面倒なのよねぇ。家でぐらい楽な格好でいたいっていうか」

十歳下の青年の照れぶりに気づいた朱里が、ブラの締め付けられる感じが好きじゃないのよ、とノーブラの胸を反らしながら語る。

薄手のスリップに乳房の丸みや谷間が陰影となって浮かんでいるのがかえって妖美に感じられ、賢太は赤面を誤魔化すべく声を荒らげた。

「俺の部屋はあんたの家じゃありませんっ。自分の部屋でだけにしてくださいよ……もうっ」

朱里があまりにもあっけらかんと言い放つものだから、苛立たしさから、つい昔の癖が出る。拗ねた子供めいた口調が、かえって昔馴染の女性の興を煽ってしまう。

「今の、すんげー懐かしい。ガキの頃、あたしが構ってやらないでいると、よくそうやって唇とんがらせて、むくれてたよね」

またわざと「ひっひっ」と意地悪い笑みまで追加するものだから、余計に癪に障る。

「いつの話してるんですっ」

結局いつも朱里のペースに呑まれる。互いに古くから見知っていて、腹の内が読めてしまうからこその弊害だ。実家が近所で家族ぐるみの付き合いが行われていた事もあり、ちょうど十歳上の朱里は物心ついた時から賢太にとって姉同様の存在だった。