万引き女子学生調教医療
小説:松平龍樹
挿絵:孤裡精
リアルドリーム文庫
登場人物
白瀬 小雪
清芳学園中等部3年。可愛らしく整った顔立ちの美少女だが、内気で自分に自信を持てないでいる。お姫様に憧れる夢見がちな反面、内には被虐の性感を秘めている。
下呂井
小雪が通う清芳学園の保健医。カマキリに似た容姿をしており、女生徒から嫌われている。
伊東
下呂井と知己の、病院の事務員。コスプレ写真愛好倶楽部に所属している。
第1章 発端
白瀬小雪は学校からの帰り道、父母から長い付き合いのある本屋にいつものように入った。そして店番をしている顔馴染みのおばさんの様子に気づき、近づいて声をかける。
「おばさん、居眠りしていちゃあ、またおじさんに怒られるよ」
「……ああ、ごめんよ、小雪ちゃん。学校からの帰りかい?」
口から落ちた寝よだれを拭きながら、寝惚け眼のまま、女主人は小雪に問いかけてくる。
「そうだよ。最近は遊び半分、ゲーム感覚で万引きする子も多いんだから注意しないと」
「そうだねえ、注意しないとねえ」
そううなずいて、女主人は小雪の顔をつくづくと眺める。
「……それにしても、キレイになったね、小雪ちゃん」
思いがけない賞賛に、小雪は一瞬、大きく目を見開いた後、破顔して手を振って、否定する。
「イヤだ、おばちゃん。冗談ばっかり」
「冗談なモンかね。本当だよ。いつもお父さんとも『最近、白瀬サン家のお嬢ちゃんはとみにキレイになったねえ』って言い合っているんだよ」
「そんなコトないわ」
小雪はさみしげにかぶりを振る。
そして小雪はくるりと背を向け、店内を物色し始める。
(ありゃりゃ)
本屋の女主人は少なからず驚いていた。
(本当に、キレイなのにねえ)
本心から、本屋の女主人はそう思っていた。タマゴ型の頭に、大きく澄んだ黒い瞳や慎ましやかな紅い口、それに小さく愛らしい鼻などが整然と配され、それぞれが魅力的な大きさと可憐さで、互いに引き立てあい、強調しあっている。ただ前髪が額から眉毛にかかっていたり、後頭部より前の方が長めに切り揃えられた髪がやや内側にカールしたりしていて、その素晴らしさを隠してしまっているのが何とも残念だった。体型もこの年頃の少女としては十分以上で、太りすぎもせず、また痩せすぎでもなく、すらりとした、若木を思わせるしなやかな肢体をしていて、濃紺のブレザーと、黒と白のタータンチェック柄のミニスカート、膝下まであるハイソックスが映え、魅力的だった。何より、名前のような白い肌がきめ細かで美しく、若さと健康をあたりに振り撒いている。確かに胸のふくらみはまだまだだが、十四歳という年齢を考えればそんなものではないだろうか?
何より十代半ばの、若木を思わせるしなやかな肉体からは、ありきたりの制服などで抑えられるはずのないほどみずみずしく、弾けるような若さが放散されていた。二度とない、青春という季節をゆく少女は、老境をゆく女主人からすれば、それだけでまぶしく輝いているように思われる。
しかも、近在でも「成績や性格だけでなく、容姿でも標準以上でないと入学できない」と有名な私学の女子中等部に在籍しているのに、「そんなに卑下することないのにねえ」と思ってしまう。
(あとは、変なオトコにひっかからなけりゃあ、いいんだけどねぇ)
そう思いながら、女主人は再びこっくりこっくりしかける。
「…………」
(あれれ?)
女主人の様子に気づいた小雪は内心アキレながらも咎めたりしなかった。
それどころか、「よっぽど疲れているんだな」「最近は、本屋の経営も大変だって聞いているし」「おじさんがいないのも、新刊の配達などの得意先まわりなどで飛び回って忙しいに違いない」と考え、そして、「代わりに私が万引きするようなお客さんがいないかどうか、見張ってあげればいいか」などと思いを巡らせ、店内を時間をかけてゆっくりと物色する。
そうしてあちこち立ち止まって本を手に取ったりしながら店内を一巡して、女主人にもう一度声をかけて帰ろうとして、カウンター近くの棚の前で小雪の視線と脚が釘付けになった。
そこには背表紙に『お姫様凌辱特集!!』と書かれた本があったからだ。
その瞬間、小雪の心臓は弾け、頭の芯が爆ぜた。
胸が激しく高鳴るままに小雪は無意識のうちに店内に他の誰もおらず、店番のおばさんが座ったまま居眠りしているのを素早く見てとると、その新書版サイズの本を素早く手に取り、頁を繰る。果たしてそこには、小雪が期待したようなイラストが躍っていた。どうやらその本は、今流行のライトノベル形式のイラストレーションを多用した成人向け小説本であり、その特集本、アンソロジーらしかった。イラストに登場するお姫様たちは年齢や体型、性格などは様々だが、いずれも気品に満ち、彼女たちはあられもない格好で、悪漢や魔物たちに辱められ、犯されていた。中には公衆の面前、領民たちや、時には父親である王様や母后たちの前で凌辱されている構図もあった。
どきどき。どきどき。
拍動がはっきりわかるほどの心臓の高鳴り、胸が張り裂けそうになるほどの息苦しさを自覚しながら、椅子に腰かけたまま完全に寝入ってしまっている顔見知りのおばさんから隠すように、肩から掛けたバッグの中に見入っていたその本を滑り込ませる。