(パンティを脱いだら、スケベなお汁がそのままあふれ出して、内腿やその先まで濡らしちゃう……ッ)
がくがくッ。
膝小僧がフルえた。
ぞくぞくッ。
背筋を戦慄が駆け抜け、頭の芯を痺れさせる。
(そ……ッ、そ……ッ、そんなコトになったら、大勢の人に、センセイ以外の人に、ワタシがエッチな娘だって、露出症のヘンタイ……ッ、頭のおかしいイロキチガイ……ッ、エロ狂ヒだって、バレちゃうぅぅ……ッ)
破滅への期待に胸ときめかせ、小雪は病院の廊下の隅に立ち、自分でも知らないうちに淫らに体をくねらせながら、短すぎる看護服の裾の下に小さな手を伸ばし、下腹を覆う小さな布きれを脱ぎおろしてイッた──。
かしゃかしゃぱしゃしゃんッ。
(あフ……ッ)
自分でも知らないうちに、卑猥で淫らな尻振りダンスを大胆にしながらの脱衣シーンを撮影され、小雪は軽く昇りつめてしまう。
ぶるぶるッ、わなわなッ。わなわなわななッ。
ぽたぽたぽたたッ。
絶頂を迎えた少女の肢体はわななき、フルえ、そのまだまだ肉付きの薄い内腿の間から、淫らな液体が粘っこい糸を引きながら舞い散る。
かしゃかしゃぱしゃしゃんッ。
ごくりッ。
下呂井は液晶ビューワーを見ながら、固唾を呑んで、少女の足下に落ちる粘液の水たまりにシャッターを切りまくっていた。
(……こんな娘が本当に実在するんだッ)
下呂井は素直に感動していた。感激していたと言ってもよい。普段は本当にどこにでもいるような、ありふれた女の子なのに、いったん性に目覚めると急速に開花し、付き合っている男の望みのままに激しくも淫らな変貌を遂げてしまう。しかも、その女の子はコトが終わると、また元の、至極ありふれた、年相応の女の子に戻ってしまうのだ。
普段の、地味ともいえる慎ましやかさと、性の快楽に溺れた時に見せる淫逸さと卑猥さを併せ持つ、ある意味男の理想とも呼べる女性だった。
ふらりッ。
小雪は自分自身のあまりの淫らさと、露出の悦びに耐え切れなくなり、足下をフラつかせ、倒れかけてしまう。
「危ないッ!」
下呂井は一足飛びに小雪に駆け寄り、バランスを失った華奢で小柄な肢体を受け止める。
どさッ。
「大丈夫かい?」
「…………」
自分が通う学校の保健医の胸に抱かれて、小雪は薄目を開けてうなずく。
その黒い瞳は淫蕩な輝きを放ち、下呂井のさらなる治療=調教を望んでいた。それは十代半ばの少女の表情ではなく、性の快楽に目覚め、溺れゆく牝の表情だった。
「貧血かい?」
──!!!──
自分たちの世界に浸りきる二人は突然、背後から別人に話しかけられて吃驚した。
下呂井は小雪を抱いたまま、背後を振り返り、その人物の顔を見て叫んだ。
「伊東ッ!」
怒鳴り声と言ってもよい下呂井の剣幕など、『糠に釘』とばかりに、わざとのんびりとした声で言葉をつないでくる。
「そいつはいけないな。早く診察しないと」
下呂井に「伊東」と呼ばれた、下呂井と同じ年恰好の中年男の提案は当然と言えば当然と言えたが、二人は、とりわけ小雪はそれどころではなかった。
(いつから、いつから、見られていたのッ!? いったいいつからッ!?)
心臓が小さな胸郭を跳ね回り、口から飛び出してしまいそうなほどの恐慌状態に陥りかけてしまう少女を立ち上がらせ、白衣で隠すように自分の背中に下がらせながら下呂井が叫ぶ。
「オマエは何をしてるッ!? 今日は非番のはずだぞ」
「いやあ」
ぽりぽりッ。
下呂井の怒声を、伊東は頭を掻きながら、馬耳東風と受け流す。
「今日のコトを聞いてなかったからね」
「ウソつけッ!」
下呂井が伊東の言い分を即座に否定する。
「メールと書面で、オマエ自身の承認と確認をとったハズだッ!」
下呂井は素早い動作で白衣のポケットから封筒を出してきた。どうやら、そこには今日の小雪とのデート、この病院でのコスプレ撮影についての許可証が入っているらしい。
「いやいやいやいや」
ぽりぽり。
伊東は頭を掻いて、あたりにフケをまき散らしながら、悪びれた風もなく言い訳をする。
「こんな可愛い娘だって、知らなくってさ」
伊東はそう言って、小雪の顔を覗き込もうとするが、それはたちまち下呂井に遮られてしまう。
「ふざけるなッ!」
「そう、怒るなよ」
伊東は下呂井の白衣越しに小雪の方に向けていた首をさらに伸ばして、そのピンク色した看護婦の衣装に包まれた華奢な体を盗み見、さらにはその裾の下まで覗き込もうとする。
──!!!──
小雪は息を呑んで、さらに下呂井の背中に隠れようとする。
「貴様ッ!」
ついに下呂井は怒気を発した。
「彼女に対する無礼は許さんぞッ!!」
──!!!──
先ほどとは異なる理由で小雪は息を呑んだ。
じわッ。
小雪の目頭が熱くなり、涙が湧いた。
「いやいやいやいやいや」
ぽりぽりッ。
なおも頭からフケを飛ばしてヘラヘラ笑いをしていた伊東だったが、下呂井の背中で身を縮めている小雪の様子に気づき、気まずそうにいずまいを正した。
「ゴメンよ。何もお嬢ちゃんを驚かそうとか、困らせようと考えたワケじゃないんだ」
ぐすんッ。
少女の涙に気づいた伊東はあわてて頭を下げた。
「ゴメン、本当に謝るよ。だから勘弁してね」