「あああ……ッ」
小雪は甘やかに鼻を鳴らしてあえいでみせた。その様子には被虐の情感がこもり、嗜虐的な男心を誘ってやまない。
「それじゃあ、キミのすべてを、キミの一番大事なトコロを見せてもらうからね」
少女の裸になったままの胸肌や、あらわになっているお臍のあたりを、ひとつふたつ優しく撫で回した後、下呂井は手術に用いる、極薄半透明の手袋を小雪に見せびらかすようにつけながら、ペリカンの嘴にも似た、銀色に輝く道具を保温器から取り出してくる。
それは膣鏡、クスコーと呼ばれる器具だった。片側がやや窄まった円筒をタテに真っ二つにしたものをもう一度繋ぎあわせたような形状をしているその器具は女性器に挿入し、ネジの力でその先端を広げ、女性の身体の奥を直接診るためのモノだった。
「コレをキミの大切な部分に入れるから、体から力を抜きなさい」
こくッ。
小雪がうなずいた後、深呼吸をして、そんなふうにすると、
にゅぅるんッ。
「う……ッ!」
秘部に衝撃が走った。しかし、それほどと言うか、ほとんど痛みはない。秘部に今まで経験したことのない違和感があるばかりだった。人肌まで温められ、潤滑油がたっぷりと塗りたくられた膣鏡はほとんど抵抗なく、無理なく挿入されていった。
(こんなに濡れているんじゃあ、潤滑油なんか不要だったかもしれないな)
(しかし、万が一ってこともあるからな)
そんなコトを考えつつ、慎重に少女の性器に挿入していった膣鏡だったが、すぐに行き止まった。どうやら嘴状の尖端が、膣の一番奥にまで達したらしい。
「それじゃあ、診せてもらうからね」
そう言うと下呂井は、新たなスイッチを入れる。
パッ。
音もなく、周囲が明るくなった。
それは部屋全体が明るくなったのではなく、天井に設置されている指向性の照明が二つか三つ点灯し、小雪、とりわけその割り広げられて拘束されている股間に向かって、強力な光を放っているのだ。
──!!!──
女性の、最も隠しておきたい、秘めておきたい部分を強力な照明で照らし、あからさまにされて、小雪は涙ぐんだ。
「うふッ、よく見えるよ」
まばゆい光の向こうで、誰かが小雪の大切な部分を覗き込んでいる気配がした。強烈な照明が逆光になって、そして涙にボヤけて、下呂井の表情がよく見てとれない。
ぱしゃんッ。
(あああ……ッ)
どうやら、大きく脚を開いた格好で産婦人科の診察台に縛りつけられ、秘奥まであからさまにされた姿を、下呂井に撮影されたみたいだった。
たった今、好感と信頼を高めたばかりだというのに、またもや不安に陥ってしまう少女の心情など知らないかのように、下呂井が診療を進めていく。
「ちょっと痛いかもしれないけれど、我慢するんだよ」
ごきゅッ。
(あああ……ッ、センセエ、何を……ッ、何をするつもりなの……ッ)
固くなった唾を飲み込み、不安におびえる小雪の体の奥の部分、今医療器具を差し込まれて、あからさまにされている部分が広がってきた。
(あああ……ッ、こわい……ッ、怖いの……ッ)
とうとう泣きじゃくりだしてしまう、看護婦姿の女学生の目の前に、下呂井がピンセットで持った小さなモノを差し出した。
(あああ……ッ、いやぁぁ……ッ)
さらなる凌辱に怯える小雪に下呂井が尋ねる。
「コレが何か、わかるかい?」
涙に暮れながら、目の前にかざされたモノを見やると、アルファベットのT字状をした小さなモノが見えた。
小雪は一瞬、カブトムシのツノのように感じたが、成虫のモノにしては小さすぎ、また柔らかそうだった。何より、色が白くプラスチック製に見えた。
「…………」
(いいえ、わかりません……ッ)
すんッ、くすんッ。
小雪は黙ったまま、鼻を鳴らしながらかぶりを振った。
下呂井が莞爾と笑った。どうやら優しく微笑んだ様子だった。
「コレはね、避妊具なんだよ。子宮頸部に設置して精液を殺したりして、妊娠しないようにする道具なんだ。今からキミに、キミの子宮頸部にこれを取り付けて、妊娠しないようにするからね」
──!!!──
小雪は吃驚していた。しかし、次の言葉にさらに驚いた。
「避妊の方法は、他にも色々あるけれど、経口避妊薬は毎日飲まなきゃいけないし、また、経口避妊薬による避妊をやめる時には他の避妊方法を一定期間おこなわないと体に悪い影響があると言われている。何よりキミのような成長過程にある女の子に経口避妊薬を飲んで擬似妊娠させるような真似は、発育の阻害になり、また将来に禍根を残すコトになる」
それから下呂井は他の、コンドームを用いる方法や、オギノ式、ペッサリー、またこのT字状の避妊具以外のリング状をした避妊具についてもひと通り、講釈を垂れた後、今から下呂井が小雪に施そうとしている銅イオンの殺精子効果を用いた、銅付加IUDについて説明をしてくれた。
下呂井の説明に小雪の疑いや不安は晴れていく。なぜなら、下呂井が小雪に有効性の高い避妊器具を取り付けるのは、下呂井が責任逃れをするためでなく、小雪の将来と健やかな成長を慮ってのコトだとはっきり理解できたからだ。
小雪の表情と視線の変化に気づいたのか、「ボクはキミが考えているような良い人間じゃない。卑劣なサディストだ」と言わんばかりに顔をそむける。