こつこつッ、こつこつッ。
靴音が遠ざかっていくのをドア越しに聞き、危険が去ったのを確認した下呂井は抱きかかえていた、看護婦姿の女子学生を見やる。
はぁぁぁ……ッ、はぁぁぁ……ッ。
淫魔に犯されたままでいる少女は、双眸を淫らに蕩けさせ、よだれを垂らして夢見心地の表情を浮かべているばかりだった。
下呂井は薄く開いた紅の唇に誘われるままに、少女の唇に自分の口を重ねた。
ちゅッ。
少女は夢見心地のまま、下呂井の接吻に応える。
ぶぢゅっるるッ、ちびゅびぢゅるるッ、ぶぢゅるるるぅぅッ。
白衣を着た中年男と、ピンクの看護服を乱し着した、半裸の少女との間に濃厚な口づけが交わされる。
ぶっぢゅるるぶぢゅるるッ。
互いが互いを貪りあうような、また互いに互いで満たしあおうとするかのような、濃密な口づけだった。互いの口の中を舐めくり回し、舌と舌とを絡めあい、唾液を交換しあう。
二人は時と場所も忘れて自分たちの激情をぶつけあい、思慕の念を確かめあう。口のまわりだけでなく、頰、鼻の先まで互いの唾液にまみれさせ、顎から唾液の糸が何本も滴り落ちていた。
ぶぢゅぶぢゅぷちゅちゅッ。
ひとしきり、互いの思いの丈を確認しあった後、下呂井は小雪をその部屋の片隅へと連れて行く。
下呂井は何も無計画に、人気のない場所を選んで小雪を連れ回してコスプレ露出撮影をしていたのではなく、あらかじめこの部屋を準備し、そこに誘導したのだ。
いくつもの器具が雑然と置かれているが、やや開けたソコには幅八十センチ、長さ一メートル五十センチくらいの斜めになった台のようなモノがあり、上には青い厚手のシートがかけられていた。
ばさッ。
下呂井がシートをはずした。
──!!!──
小雪は息を呑んだ。思わず、裸になったままの胸に手をやり、全身を硬直させてしまう。
それは産婦人科で妊娠の有無や婦人病などを調べるために、女性の性器そのものを診るために用いられる、開脚式の診察台だった。
小雪はそこに座り、脚を広げて診察される自分を想像して頬を燃やした。
どんなにハレンチな痴態をさらして、乱れまくろうが、少しすると理性と羞恥心を取り戻してしまう少女が下呂井には可愛くてならない。もっともっとイジメてしまいたくなってしまう。
「キミのすべてを見せてもらうよ」
下呂井のささやきに、小雪は震えつつこくっとうなずいた。
「よぉし、いい娘だ。それじゃあ、これに乗るんだよ」
こくッ。
そのささやきにも小雪は素直にうなずいてしまう。
下呂井は一本の麻縄を取り出した。
本来、そんな診察台を使っての診療にはそのような拘束は一切不要だ。患者の恐怖心を無闇にあおり、万一地震や火災などの緊急事態が発生した場合、避難の妨げになるからだ。そんなコトは当然下呂井も理解しているし、熟知している。
しかし、この少女の治療にはそのような拘束、いましめが必要だと下呂井は考えたのだ。
「背中を向けなさい」
取り出してきた麻縄をシゴキながらの下呂井の言葉に小雪は素直に従い、背中を向け、両腕を背中に回し、手首を重ねる。
たったそれだけの行為に少女のうなじから細い肩にかけて匂うような色香が放たれる。
ぞくぞくッ。
(本当にこんな娘が実在するんだなぁ)
今日だけでも何度目かになる下呂井は心の底から感嘆してしまう。
普段は、本当にどこにでもいるごく普通の女の子なのに、いったん性的な場面になると、強烈な色香を発散し、男の心をとらえてしまうような少女。しかも、それがM的な、いわゆる被虐嗜好的な傾向が強いとあっては、下呂井のような加虐嗜好的な性の好みを持つ男性にとっては、それこそ、夢のような少女だった。
下呂井は小雪の両手首を縛り、縄を前に回してむきだしになっている胸のふくらみの上下に回して、充分注意しながら引き絞る。
「う……ッ、うぅンン……ッ」
むずかるような、それでいてけっして嫌がってなどいない、少女の反応に下呂井は内心で讃嘆を禁じ得ない。
(本当に、素晴らしい反応をするな、この娘は)
鼻息ひとつ、眉の顰めようひとつとっても、男の嗜虐欲・征服欲を掻き立てずにおかないのと同時に、保護欲(=守ってあげたい)をわかせずにはおかないのだ。
(まるで縛られるために、牡に可愛がってもらうため、庇護されるために産まれてきたような娘だ)
そう感じずにはおれない。
「それじゃあ、乗せるよ」
こんな、素晴らしい少女に巡り会うコトができた運命に対する感謝を、心の中で押し隠しながら、下呂井はそう言うと返事を待つことなく、小雪を抱きかかえる。
結婚式や初夜のベッドインなどで用いられる横抱き、いわゆる『お姫様抱っこ』に小雪は頬を燃やしながら、下呂井という中年の男性保健医師に対する好意と信頼をいっそう深めた。
後方に大きく倒れ、水平近くにまでなっている背凭れに背中を預け、ヘッドレストに頭を置いて深く腰を掛ける姿勢になるように、下呂井は小雪を座らせるというか寝かせる。そして、小雪のほっそりとした足首を持ち、その膝の裏を診察台についているニーレストに一つずつ掛けていく。そして、短めの縄を取り出して、膝の上下、太腿の終わりあたりからふくら脛の上部とそのニーレストとをがっちりと縛り上げてしまう。