万引き女子学生調教医療

「白瀬クン」

びくッ。

どうやら下呂井はここ、ロビーの待合室を見張っていた様子だった。

小雪はあわてて立ち上がり、「こんにちは、センセイ」と頭をさげて挨拶する。

そんな二人の様子を入院患者の一人が不思議そうに、あるいは興味深げに見ている。

確かに小雪はその白く透き通るような肌とは裏腹に若々しく、健康体で、青春の香気にあふれ、病気の影など微塵も見られない。しかも、その挨拶が礼にのっとったキチンとしたもので、最近の若い学生には最も欠けているモノだった。

実は清芳学園で最も厳しいのは、挨拶と礼儀、規律である。確かに学問や勉強、成績も大事だが、人間形成・人格陶冶の方により重点が置かれている。

小雪は今日は薄いベージュのワンピースを着ていた。あちこちに上品なフリルがあしらわれ、いかにもシックであり、名門校に通う良家の子女らしかった。

(やっぱり、可愛いよなあ)

下呂井はいつまでも見ていたい気分になったが、わざとらしくひとつ咳払いをして、

「おほん」

手にげていた紙袋を差し出した。

「そこの化粧室でコレに着替えてきたまえ」

「…………?」

いぶかしがりながらも小雪は紙袋を受け取る。

(病人服、患者服に違いないわ)

(それにしても、ずいぶんと本格的なのね)

そう考えた小雪は「履物まで入っているからね。それと中の、一番下にあるメモをよく読んでおきなさい」という下呂井の言葉に「はい」と生返事で答え、軽く聞き流した。

下呂井に言われた通り、小雪は化粧室の個室に入り、鍵をかけると着てきたワンピースを脱ぎ、紙袋に入っていた衣装を引っ張り出して驚いた。それは患者や病人が着る服ではなく、医療従事者、とりわけ女性看護師が身に着ける衣装だったのだ。

戸惑う小雪は『……一番下にあるメモをよく読んでおきなさい』という下呂井の言葉を思い出して、パンプスよりも下にある、二つ折りしたメモを引っ張り出して開いた。

──!!──

そこには今日の治療、いいやプレイの主旨とそれに基づいた注意書きが書かれていた。

「…………ッ!!」

小雪はその白い頰を紅潮させた。

「……センセイッ」

かなり長い間待たされた下呂井はためらいがちの、それこそ人目をはばかってベソをかいているような声に、芝居がかったようなゆっくりとした動作で振り返った。

そこには随分と小柄な看護婦がいた。

言うまでもなく、下呂井が選んで購入し、手渡した看護婦ナース制服ユニフォームを身にまとった、白瀬小雪だった。

下呂井は目尻を下げ、にこやかに笑った。

「可愛いよ、よく似合っている」

「…………」

そう褒められても、羞恥心の強い十代半ばミドルティーンの女子中学生は返事することができない。

愛らしい耳たぶまで真っ赤に染まった顔さえ上げられずに、もじもじするばかりだった。

事実、下呂井が用意し、小雪に着せた看護婦の制服は、実際に病院で看護婦が使う仕事着としては問題がありすぎた。まず、裾が極端に短い。股下と呼べる部分がまったくなく、少しかがんだだけで下着パンティが覗いてしまう。そのウルトラミニの裾を強調してやまないのが、膝上まであるナイロン地のロングストッキングだ。小雪の太腿は付け根から三分の二近くが完全にあらわになっている。しかも、衣服とそのロングストッキング、ナースキャップがほぼ同系色のピンク色をしていて、着ている小雪の本当に肌理細かな、真っ白な地肌と引き立てあい、いやが上にも目立ってしまう。看護婦ナース制服コスチュームそのもの、その臍から上は半袖、丸首襟の、胸前から裾まで二重になっている、ごくありふれた形状なのが、逆に卑猥な印象を与える。もし、着ているのが小雪のような、いかにも清純可憐な少女でなければ、そういった風俗店コスプレ・パブか、頭のおかしい露出狂が仕立てたのかと受け取られても仕方のないほど、肌の露出が多く、人目を引かずにはおかない衣装だった。

それに実際にその看護婦の制服を着た小雪は別のことにも気づいていた。服そのものが小さいのだ。ワンサイズほど小さく、体にぴったりと貼りついてしまっていて窮屈だった。動けなくなるほどではないが、ちょっと体を動かすだけで、縫製の糸がほつれたり、生地そのものが破れそうな気配がする。それに短すぎるウルトラミニの裾が今にも上にズリ上がってしまいそうだ。事実、下着が今にも見えそうな気がして、小雪は何かとズリ上がってくる裾をしょっちゅう引っ張らなくてはならなかった。さらに言えば、生地そのものが非常に薄い。ピンク色しているためもあり、丸見えシースルーというわけではないが、下着の形状や、お尻や胸の形、さらにはお臍の窪み具合まで見えてしまいそうだった。

さらに小雪がまだ気づいていないのであろうが、その看護婦ナース制服コスチュームには他にもいくつかのイヤらしい仕掛けが施されている。

だが、こんな服を着せられただけなのなら、マシだったに違いない。問題はこの衣装で行う、プレイにあった。

小雪は下呂井から貰ったメモを読んで、今から自分に対して行われる治療、下呂井とのプレイの、あまりの恥ずかしさに、気が遠くなってしまった。

そこにはプリンターで打ち出された文字で箇条書きされていた。