「いいですか、わかりましたか?」
「はい……」
本当に蚊の鳴くような、小さな小さな声でうなずく看護婦の真似をした少女に、菅井は莞爾と笑った。どうやら小雪の態度と風貌に好意を抱いた様子だった。そして菅井は下呂井に向き直る。
「下呂井センセイも、学校の保健医なんてやって遊んでいないで、とっとと病院なり、研究室に戻ってくださいね。もっとも」
そこで菅井は言葉を切り、小雪に流し目をくれる。
「こんな可愛いお嬢さんを、お嫁さんとして捕まえてくる、っていうなら、話は別ですけれどね」
──!!!──
菅井のセリフに小雪は心臓が止まりそうなほどの衝撃を受けた。しかし、小雪よりも吃驚したのは下呂井の方だった。
「すッ、すッ、菅井サンッ! なッ、なッ、なんてコトを言うんだッ!? 彼女に失礼じゃないかッ!」
そしてあわてて小雪に向き直り、釈明を始める。
「きッ、きッ、キミもッ、キミもッ、今の言葉なんか、聞き流しなさいッ! キミは将来のある身なんだから。大人の、その場限りの冗談に本気になったり、惑わされちゃあ、いけないよッ!」
「…………」
下呂井の普段と違う、しどろもどろの言葉と態度に、小雪は自分の気持ちの行き先が定まり、急速に落ち着いていくのを感じていた。
それから、二人は菅井が去った後、コスプレ撮影を再開させた。
人目の多いロビーを早々に切り上げ、人気の少ない通路や病棟へと移っていく。そして人気が絶えたような通路に移っても同様の、また似たようなポスターに使われても不思議ではない姿を撮影された。
ぱしゃかしゃぱしゃしゃんッ。
(ひょっとしたら、今日はこのまま終わるんじゃないのかしら)
今までと同じようなポーズをとりながら、安心しかけ、小雪が緊張を解きかけた時だった。
「裾をまくり上げなさい」
──!!!──
カメラを構え、笑顔で言った下呂井の指示が小雪の全身を貫いた。
(……ここでですか?)
一瞬で涙目になり、あたりをうかがう看護婦姿の小雪の無言のささやきに下呂井は大きくうなずく。そこは病院の通路だった。左右に手術室や機材置場などが並んでいるが、どうやら今日は手術などはないようで、人通りも人影もなく、ひっそりとしている。
(ああ、ココでだよ)
下呂井はにこやかに微笑みながら、カメラを構え直してその瞬間を待つ。
小雪が下呂井の指示に逆らうことなど、頭から疑っておらぬ様子だった。
事実、小雪は下呂井の指示に逆らえなくなっていた。
小雪は内股になりながら、おそるおそる短すぎる看護婦の制服の裾をつかみ、わずかながらにめくり上げた。
ピッ! カシャンッ!
シャッターの乾いた音が病院の廊下と小雪の耳道、頭の中に響き渡る。
「もっと上に」
(は……ッ、はい……ッ)
さらなる露出命令に、小雪は影を落としてうなずき、さらに短い裾をめくり上げ、可愛らしい純白の下着を中年男の眼と、カメラのレンズにさらした。
パシャパシャかしゃしゃんッ。
(あああ……ッ、あああ……ッ)
小雪は自分の最奥、オンナの部分がざわめきながら、ぬかるみ出すのを感ジていた。
それから小雪は色んな姿を取らされ、撮影された。
落ちているペンを膝を伸ばしたまま、拾い上げる姿を背後から、短すぎる裾がズリあがって下着が丸見えになっている姿。
パシャパシャかしゃしゃぁんッ。
屈みこんで下着をチラ見せしている姿。
かしゃぱしゃかしゃパシャシャンッ。
下着を丸見えにしながら階段を上がっていく姿。
かしゃパシャカシッ、パシャシャンッ。
もう一度短すぎる裾をめくり上げ、下呂井に向かってにっこりと微笑んでいる姿や落ちたモノを膝を伸ばしたまま拾い上げながら微笑み、カメラに向かって妖しい視線を送っている姿まで取らされ、撮影された。
かしゃかしゃッ、パシャシャンッ。
さらには短い裾を大きくめくり上げて四つん這いになり、下着丸出しにした姿や、その這いつくばった格好で病院の廊下を練り歩かされたりした。
ぱしゃぱしゃッ、かしゃしゃんッ。
「お尻を振ってごらん♡」
小雪は言われるままに、犬のように、あるいはブタみたいに這いつくばったままお尻を振ってみせる。
かしゃかしゃパシャシャンッ。
(あああ……ッ。こ……ッ、これじゃあ……ッ、これじゃあ、ホントウに露出狂……ッ。ど変態の、イロ気違いだわ……ッ)
そう思うものの、発情した家畜よろしく、可憐な女子中学生は下着をさらけ出したまま、可愛く丸まっちいお尻を、イヤらしく左右に振って見せる。
ふりふりッ、ふりふりッ。
かしゃかしゃパシャシャンッ。
まるで飼い主に媚を売っているみたいだった。
さらに下呂井は人気のない廊下の一角に小雪をしゃがませて、足を開くように指示、いや命令をする。
(あああ……ッ、いやぁぁ……ッ! 全部……ッ、ゼンブ……ッ、見えちゃぅぅ……ッ。見えちゃうぅぅ……ッ)
そう思うものの、小雪の肉体は下呂井に簡単に従ってしまう。
がばぁッ。
「はぁぁぁぁ……ッ」
小雪は病院の片隅で大きく熱いため息をついた。
大股開きになった下腹はしとどに濡れそぼち、可愛らしい下着がべっとりと貼りつくその船底部に、淫猥な被虐少女の微妙な構造をくっきりと浮かび上がらせていた。