人妻フルコース~熟れ頃・食べ頃・味見頃~

人妻フルコース
~熟れ頃・食べ頃・味見頃~

小説:芳川葵

挿絵:asagiri

リアルドリーム文庫

人妻フルコース~熟れ頃・食べ頃・味見頃~

登場人物

あきやま たく

ごく普通の高校生。指定校推薦で早々に大学に合格し、四月からの一人暮らし生活に備えて料理教室に通い始める。

もりぐち ゆう

半年前に結婚したばかりの二十六歳の新妻。楚々とした佇まいで、抜群の美貌とスタイルを併せ持つ。

さかした はる

妖艶な雰囲気を纏った三十六歳の人妻。気取りのない性格で、拓実に気軽に話しかけたり、からかったりする。

なみ

母性的で豊満な肉体を持つ四十二歳の人妻。「Chikako’s Kitchen」を主催する料理研究家。

第一章 妖艶妻の誘惑レシピ

─ 1 ─

八月に入ったばかりの火曜日。時刻は午後二時半すぎであった。県立高校三年のあきやまたくは、東京郊外のターミナル駅前にある、市民会館三階の調理実習室にいた。

『Chikako’s Kitchen』。

同じ市内に住む料理研究家、なみが主催する料理教室に通っていたのだ。

カッタン──カッ……タン──カタン……。

おっかなびっくりな手つきで、ピーラーで皮を剥いたジャガイモを包丁で半分にすると、そのジャガイモをさらに縦、横と包丁を入れ、四等分する。もう半分も同じように切り、もとのサイズから八等分されたジャガイモが、まな板の上に残った。

「ふぅ」

「拓実くんの手つき、見ているこっちが怖いわ」

「そうですよね。見ている私のほうが、思わず手に力が入ってしまいそうです」

「す、すみません」

ジャガイモひとつを切り分けただけで、すでに一仕事終えたように息をつく拓実に、同じ調理台の反対側に立つ二人の女性が声をかけてきた。それに対して拓実は、恐縮したようにペコリと頭をさげる。

調理実習室には、調理台が全部で七つ。ひとつは講師用で、入口を入ってすぐ右手、備え付けのホワイトボード前に設置されている。生徒用の六台は、講師用調理台の左右前方に二台、三列。拓実がいるのは左中央の調理台で、窓を正面にして立っていた。

調理台は長さ百八十センチ、幅九十センチ、高さ九十センチで、ホワイトボードに近いほうの横幅を利用してシンク。反対側の角、長さ側をメインとして三ツ口のIHヒーター。IHヒーターの下にグリルと、オーブンレンジが備わっている。

「でも、来年からの一人暮らしに向けて、自炊を勉強しようという心がけは立派よ」

「ありがとうございます」

見ているほうが怖い、と言った女性、さかしたはるが少しだけ吊りあがった瞳を細め、うんうんと頷いてくるのに対し、拓実は恥ずかしそうに小さく返した。

晴恵は妖艶な雰囲気をまとった三十六歳の人妻である。うりざね顔は、少し吊りあがり気味の瞳に、高めの鼻梁、そして肉厚の朱唇で構成され、肩より少し長いウェービーヘアは、ブラウンに染められている。ざっくばらんな性格らしく、初めから拓実のことを下の名前で呼んできていた。

(坂下さんは色っぽくて、スタイルもすっごくよさそうだよなぁ……。おまけに、声が少しハスキーだから、なおさら艶っぽい印象になるし)

ポロシャツとジーンズという、極めてラフな服装の晴恵は、その上から黒地にピンクの花柄があしらわれたエプロンを着けていた。プロポーションも悪くなく、スラッとした印象ながら、胸元などはしっかりと膨らみ具合を主張している。

ジーンズに押しこめられたヒップはボリューム満点で、モンローウォークのように左右に振りながら歩く姿は、後ろから抱きつきたくなるほどに艶めかしかった。

「男性の一人暮らしは、外食や出来合いのお総菜、コンビニ弁当とかが多そうですけど、自分で作ったほうが節約になりますもんね」

「僕は全然、料理できないので、いい機会かな、というのもあって」

見ているほうが力が入る、と言った女性、二十六歳の若妻、もりぐちゆうは涼しげな瞳に優しい微笑みを浮かべていた。その顔を見るだけで、頬が赤らんでしまいそうだ。

(森口さん、本当に綺麗だなぁ。こんな美人を奥さんにできた旦那さんが羨ましいよ)

女性経験のない拓実は、悠里のような美女を妻に迎えた夫に、羨望の思いを抱いてしまうのであった。

卵形の顔は、涼しげな瞳にすっと通った鼻筋、そして桜色の可憐な朱唇で構成され、肩胛骨のあたりまでのびる艶やかなストレートの黒髪を、いまはポニーテールにしていた。育ちのよさそうな、お嬢様然とした佇まいの悠里は、涼しげなワンピースの上から、Aラインタイプのピンクのエプロンを着けている。

(綺麗なだけじゃなく、スタイルも抜群だよなぁ。オッパイなんて、坂下さんより大きそうだし)

エプロンを押しあげる若妻の膨らみは、晴恵よりもその主張が強い印象だ。

ヒップは晴恵に比べれば小ぶりながら、ツンと無防備に張り出し、ワンピースのヒップラインを悩ましく盛りあげている。とにかく抜群のプロポーションなのだ。

「ほら、拓実くん、ボーッとしてない。手を休めている暇はないのよ。タマネギとニンジンも切らないと」

「あっ、はい、そうですね」