(これじゃあ、玄関への出迎えがなかったのも頷けるわね。もし玄関を開けたタイミングで家の前を誰かが通ったら、見られてしまうんですもの)
驚きのあまり全身を硬直させつつ、悠里はインターホンを押した際に、電子錠を解錠した千佳子が、「勝手にあがって、廊下の突き当たりにあるキッチンまで来て」と言った理由を理解した。
(こんなはしたない格好、絶対に無理。でも、なんでお二人はこんな姿に……。あれ、ここは千佳子先生のご自宅。ということは、ご主人が……)
「あ、あの、千佳子先生。今日、旦那さんは?」
「主人は朝からゴルフよ。じゃなかったら、こんな格好で二人を迎えたりしないわ」
脳裏に浮かんだ疑問に、千佳子が苦笑混じりに返してきた。それもそうだ、と思いながらも、だからといって裸エプロンになろうとは思えない。
「うふっ、恥ずかしいのは分かるけど、いつもとは違う解放感を味わうのも悪くないわよ。それに、夫にも見せない人妻の艶姿を見られて拓実も嬉しいでしょうし、ねッ」
悠里の内心を見透かしたかのように晴恵が艶然と微笑み、拓実に同意を求めた。
「あっ、いえ、あの……。ち、千佳子先生」
「私も恥ずかしいって言ったのよ。でも、晴恵さんがやろうって」
突然、話を振られオロオロした様子を見せた少年が、千佳子に助けを求めた。その熟妻は、柔和で美しい顔を赤く染め、三十路妻に視線を向けていく。
「そうよ、私の提案。悠里ちゃん、あなたも拓実とエッチ、したんでしょう?」
「えっ! あ、あの、いえ、私はそんなこと、は……。えっ? あなた、も?」
「拓実の童貞、奪ったのは私なのよ。料理教室が終わったあと、書店で料理本を見ていた拓実を偶然見かけて、レシピ本を貸してあげようと家に呼んだの。そのときにね」
突然の問いかけに、頬が一気に赤らむ。夫以外の男性との不貞を指摘されたことによる狼狽も全身を駆け巡った。だが同時に、頭に「?」も浮かんだのである。その疑問に対し、晴恵が悪びれた様子もなく、艶やかな微笑とともに答えてきた。
(そんな、みんな秋山くんと……。秋山くんのあの熱くて硬いオチンチンが、千佳子先生だけではなく、晴恵さんのあそこにまで入っていたなんて……。いえ、でも、考えればあり得たことよ。じゃなかったら、いかに晴恵さんが大胆でも、いきなり秋山くんに裸エプロン姿を見せるとは思えないもの)
隣に立つ少年の、若々しく逞しい肉鑓。夫との義務的な性交では決して得ることができない快感と悦びを与えてくれたペニス。その強張りが、熟妻ばかりか、艶妻の肉洞にも圧し入っていた事実に、少なからぬ衝撃を受けた。
「で、では、千佳子先生と教室でエッチしていたのは、そのあと」
「そうなるわね。そして、それを覗いてしまったあなたも、拓実くんと……」
料理教室後の調理実習室。スマホの置き忘れに気づき取りに戻った際の情景を脳裏に甦らせての問いに、料理教室の主催者は頬をかすかに染めて頷いた。
「驚くのは無理ないけど、難しく考えるのはよしましょう。それぞれに抱えている日頃のストレスや旦那への不満を、拓実のカチンコチンのオチンポを利用して晴らしているだけなんだから。そりゃあ、世間様に言えることじゃないけど、でもそれで心の均衡が保たれるのであれば、それも悪くないんじゃない」
「なんか、僕、結構、酷い言われ方、されていません?」
「あら、人妻三人と取っ替え引っ替えエッチしている拓実が、一番、美味しい思いをしていると思うんだけど。それともなあに、私たちとのセックス、よくなかったのかしら。あんなに大量のザーメン、中出ししたくせに」
「そんなことは、ないです。すっごく気持ちいいですし、ほんと、感謝しています」
晴恵の少し吊りあがり気味の瞳で、甘く睨まれた拓実が、慌てて首を左右に振る。その素直な反応に、悠里はクスッと小さく笑んでしまった。
(そうよ、あの人は好き勝手ヤッてるんだもの。今日だって……。だったら私も……。幸い、千佳子先生も晴恵さんも、立場は同じ人妻。秋山くんも信用できるし)
「分かりました。恥ずかしいですけど、私もお二人と同じように、は、裸にエプロンだけの格好になります」
「へっ!? ゆ、悠里さんッ!?」
若妻の態度の変化に、拓実が驚きの表情を向けてきた。大きく見開かれた瞳が「本気ですか?」と問いかけている。その少年の反応に、優越感にも似た感情が芽生えた。
(ベッドではいつも、秋山くんにリードしてもらってるんだし、今日くらいは私が)
「そうこなくっちゃ。そっちの扉から直接リビングに入れるから、そっちで脱いできなさいよ。大丈夫。レースのカーテンが引かれているから、覗かれる心配はないわ」
「はい」
晴恵の言葉に頷いた悠里は、廊下からつづく扉と同じ壁面にある、アーチ型をした扉を開け並木家のリビングへと足を踏み入れた。シンプルモダンな内装のリビングの床には、二組の洋服や下着が畳まれていた。晴恵と千佳子のものに違いない。
(恥ずかしいけど、見られる相手が千佳子先生、晴恵さん、それに秋山くんなら……)
トートバッグを床に置き、中から料理教室で使っているピンクのエプロンを取り出すと、悠里は七分袖のブラウスのボタンを外しはじめた。下からあらわれたのは、白地に青い水玉があしらわれた可愛らしいブラジャーである。ブラウスを脱ぐと次に、膝丈のタイトスカートを脱ぐ。ブラとお揃いの可愛らしいパンティが露わとなった。