人妻フルコース~熟れ頃・食べ頃・味見頃~

「えっ!? ちょ、ちょっと、秋山、くん?」

「あぁ、悠里さん、ゆうりさん……」

思いきり力を入れたら折れてしまうのではないか。若妻の肉体は、拓実が想像していたよりも、ずっと華奢だった。それでいて乳房は十二分に発育しているのだから、二人の熟女の肉体でおんなを知ったばかりの少年には、たまったものではない。

愛おしげに背中を撫でまわし、ついにはツンと無防備に突き出た双臀に両手を這わせた。柔らかさの中にも、パンッと内側から弾けるような張りが伝わってくる。

(あぁ、触っているんだ。僕はいま、悠里さんのお尻に、触っているんだ)

二人の熟女よりは小ぶりながら、みっちりと肉の詰まった感触に恍惚となる。悠里の下腹部に腰をグイグイッと押しつけてしまう。強張りが張りのある若妻の下腹部を圧迫する感触に、ペニスは胴震いを起こし、先走りが下着の内側にこぼれていく。

「ハッ! き、キャァァァァァァッ!」

直後、若妻の悲鳴が浴室内に反響した。

当然その叫びは、淫欲に呑みこまれかけていた拓実の鼓膜をも激しく震わせた。

「あっ! ぼ、僕、すみません。ごめんなさい、本当に、あの、すみませんでした」

(僕はなんてことを……。なんて失態を演じちゃってるんだ。なんてバカなんだ)

一気に理性を呼び覚まされ、慌てて悠里の肢体を解放した拓実は、濡れた浴室の床に土下座をすると、額を床にこすりつけるのであった。

「はい、どうぞ」

「ありがとうございます。本当に、すみませんでした」

森口悠里がテーブルにコーヒーカップを置くと、料理教室で一緒になった高校生は目を合わせないまま、小さく頭をさげ、消え入りそうな声で礼と謝罪を述べてきた。

(はぁ、さすがにあんなことがあったあとだけに、気まずいわよね。私の不注意が招いた結果ではあったけど、まさか秋山くんがあんな大胆な行為に出てくるなんて)

悠里は内心、重たい吐息をついた。

浴室からリビングに戻って十分近くが経過していた。下着が透けてしまうほどに濡れた麻のワンピースから着替え、薄いブルーのノースリーブワンピース姿だ。

うつむく少年も、先ほどまでのTシャツとチノパンではなく、スエットの上下である。肌に貼りつくTシャツ姿で土下座をする拓実を立ちあがらせ、夫のスエットを貸し与えていた。濡れた服のまま帰らせるわけにはいかないため、服はいま乾燥機の中だ。

拓実をリビングに待たせたまま、寝室に入った悠里は、そこで自分も着替えを済ませ、キッチンでコーヒーの用意をして、再び少年と向かい合い、重たい雰囲気に包まれているのである。

「私の不注意からの出来事だったんだし、料理教室帰りに、わざわざ寄ってもらって電球を替えてもらったっていうのもあるから、特別に許してあげるわ」

「あ、ありがとう、ございます」

うつむけていた顔をあげた拓実が、心細そうな表情の中で、少し引き攣った笑みを浮かべ、ペコリと頭をさげてきた。

(大胆な行動に出た割には、ずいぶんと頼りない顔をするのね。衝動を抑えられずにってやつだったのかしら。じゃあ、先週のあれは? あれも衝動的に?)

どこかオドオドとしながらカップを口元に運ぶ少年に、ある疑念が浮かびあがった。

先週の金曜日。料理教室終了後、駅前に建つファストファッションが入ったビルを見てまわっているとき、鞄にスマートホンがないことに気づいた。できあがった料理を写真に撮ったあと、そのまま調理台の上に置き忘れてしまったのだ。慌てて市民会館の調理実習室に戻ったとき、悠里はとんでもない場面を目撃していたのである。

(いえ、あれは違うわね。完全に合意の上での行為よ。でもまさか、千佳子先生と秋山くんが……)

パントリーの床にあお向けになった全裸の拓実の上に、やはり全裸の千佳子が跨がり、たわわな乳房を悩ましく揺らしながら、卑猥に腰を振っていた。

行為に夢中になり、悠里には気づかなかったようなので、音を立てないようスリッパを脱ぎ、忍び足で調理台に置かれていたスマホを手にすると、大急ぎでそこを離脱したのであった。

(千佳子先生はご結婚されているんだから、あれは立派な不倫よね。旦那さん以外の人と、それも高校生の秋山くんと、あんな淫らなことを……)

ブルッと腰が震え、同時に子宮がキュンッと小さく疼いてしまった。

(配偶者以外とのエッチって、そんなに気持ちがいいのかしら。だから、彼も……。いえ、あの人のケースは、まったく当て嵌まらないわね、なにしろ彼は……)

脳裏に、結婚したばかりの夫の顔がよぎった。悠里の父親は中小企業の社長であり、結婚相手の実家も会社経営の一族。お互いに重要な取引先であり、ならばより一層強く結びつきましょう、ということだけで決まった婚姻。旧態依然とした政略結婚だ。

社長令嬢として育った悠里は、完全に納得はできないながらもそれを受け入れ、なんとか夫婦としてやっていこうと思っていた。しかし、相手の男には結婚前からの女がおり、その女性も人妻であることを、つい最近、知ってしまったのである。

(バカみたいよね。仕返しに遊んでやろうかとも思ったけど、彼しか男性を知らない私には、自分から声をかける勇気なんてないし、ナンパしてくる見ず知らずの軽い男に肌を許すことにも抵抗がある。ほんと、つまらない女だわ)