ハーレムマンション 僕と美人妻たちの秘蜜な昼下がり

ハーレムマンション
僕と美人妻たちの秘蜜な昼下がり

小説:北條拓人

挿絵:ロッコ

リアルドリーム文庫

ハーレムマンション 僕と美人妻たちの秘蜜な昼下がり

登場人物

はら ようすけ 705号室

叔父夫婦が住んでいたマンションに転がり込んだ貧乏学生。単純でお人好し。

かみ あや 703号室

洋介の高校時代の先輩。当時はマドンナ的存在で現在もその美貌は健在。三年前に結婚するが、夫婦関係はうまくいっていない。

はら まなみ 705号室

女優に歌手、グラビアなどこなしていた元アイドル。現在は年齢を経て艶っぽさが増す未亡人。

だち 706号室

三十歳年上の夫と十六の時に結婚した幼妻。夫を愛しているが、年若い洋介にも興味を持つ。

序章

「あれえ? おかしいなあ なんでだ……?」

はらようすけは、手の中のカギを、再度鍵穴に挿し込もうとした。けれど、やはり、その狭い隙間にカギは収まろうとしてくれない。

「だって、エントランスのオートロックは、このカギでOKだったじゃん……」

叔母から預かったカギをためつすがめつして、なぜ挿さらないのか確かめる。もしや鍵穴に問題があるのかと、目を細めて覗いたが、おかしなところは見当たらない。

「叔母さん。開かないよ。どうしたらいいのさ?」

叔母の顔を頭に浮かべながら洋介は途方に暮れた。

少なくとも五年は海外勤務となる夫についていくことを選んだ叔母は、気前よくも家賃も取らず、部屋を貸してくれると言い出した。

「他人に貸してしまうと賃借権が生じるし、誰とも知らない人間に貸すよりはよっぽどましだから……。でも購入して二年も住んでいないのだから汚さないでよね」

貧乏神に取りつかれたかのような慢性金欠病の洋介は、叔母から持ちかけられたその話に一も二もなく飛びついた。

通っている大学からそう遠くない上に、高校時代を過ごした街でもあるだけに土地勘もある。まして叔母の住まいは、駅や商店街に近い高台に建てられた高級分譲マンションなのだ。それまで洋介が住んでいた八畳一間のワンルームと比べるまでもなく、学生の分際にはもったいないほどの部屋だった。

とは言え、実は洋介がこのマンションを訪れるのは、これが初めてのことだった。

優しい叔母ではあったが、その優しさがかえって気づまりに感じられるのと、彼女の翻訳の仕事がことのほか多忙であったことが、ついにここに足が向かなかった理由である。そう遠くもない実家にすら立ち寄らず、自由気ままに学生生活を謳歌する洋介だから、叔母たちもそれには何も言わずに許してくれていた。

「さて、本当にどうしよう……」

もう一度、カギを挿し込もうと試みるも、合わないものは合わない。

もしやカギなどかかっていないのではと、ドアノブを回してみたが開くはずもなかった。

マンションのエントランスには、管理人の詰所があったものの、そこは照明も落ちていて誰の姿もなかったことは確認済みだ。

「うーん。困った。なんで合わないんだあ?」

不審者に映らないかと気にしていたが、そうも言っていられない。

今度はガチャガチャと音が立つのも無視して、カギを無理やりにでも挿し込もうと、親指と人差し指にぐいっと力を入れた。

「ちょっと、あなた。人の部屋で何をしているの? 怪しいわねえ!」

突然、背後から声がかかり、ひやりとした。

(そうだよなあ。やっぱり怪しいよなあ……)

気になっていただけに、やはりとの思いがあった。

「あ、あの、僕今度この部屋に越してきたもので……」

言い訳しながら振り返ると、目に飛び込んできたのは、思わずはっと息を呑むほどの美女の姿だった。

不審人物を怪しむ表情は、それでも美しいとしか形容の仕様がない。お人形のような小顔の中に、小さなパーツが絶妙のバランスで配置されているのだ。

くりくりとしたアーモンド形の大きな瞳は、どこまでも澄み切って凛とした光を湛えている。

愛らしいまでに鼻腔、鼻翼は小さく、それでいて鼻筋がきれいに通っていて、その意志の強さを表すかのようだ。

やはり小さめの口には、口紅のTVCMにでも出てきそうなつやつやふるんとした唇が、魅惑的に輝いていた。

ショートボブの髪型が活発な印象の美貌に良く似合っている。

年齢は二十二歳になる洋介よりは、若いようにも見えるが、それでいてその年齢の女性には珍しい艶っぽさも感じさせている。

完全無欠の美少女が、妖しい色香を漂わせているようなそんな雰囲気なのだ。しかも、小柄な体格からは、似つかわしくないほどの溌剌としたものも感じられた。

「この部屋に越してきたなんて、そんなはずないでしょう! 嘘をつくなんてますます怪しい。あなた空き巣かなにか? それとも今この辺りで騒がれている下着泥棒?」

泥棒かと問われて、そうだと答えるものもないものだが、半ば動転している洋介には、反論の言葉がみつからない。

「えっ、いえ、あの、だから……」

「ますます怪しい! もしかして私にストーカーしているのもあなたなの?」

顔に似ず気の強い性格なのだろう。及び腰でありながらも、彼女は洋介にさらに詰め寄ってきた。そして、突然のようにくるりと踵を返すと、マンション全体に呼びかけるように、大声を上げはじめた。