ハーレムマンション 僕と美人妻たちの秘蜜な昼下がり

「きっと窓から入り込んだんですね。まあ、確かにでかくてキショイやつですけど」

緊張から解放されると、すがりつく綾香の乳房の柔らかさが、より強く実感された。

確実に、メロンほどの大きさはありそうな胸乳が、まるで低反発のクッションでも押し当てられているように、ふんわり柔らかく背中にまとわりついているのだ。

「このままじゃ困るでしょう? やっつけちゃいますね。えーと、何かないかな……」

目についた傍らのラックから新聞紙を取り出し、それを丸めると、カサカサと動き回るゴキブリに振りかぶった。しかし、殺気を感じた甲虫は羽を広げ、挑みかかるようにこちらに飛んできた。

「うわっ!」

驚きの声をあげながら、洋介はラケットを振るように腕を返した。

パシンと乾いた音がして、黒光りした体が床へ落ちる。とどめとばかりに、丸めた新聞を打ちつけた。

「ティッシュを何枚かください」

潰した虫の体液を丁寧に拭い、何枚ものティッシュに包んでゴミ箱に捨てた。

「ほら。片付きましたよ」

それでも綾香は、洋介の背中を離れようとしない。

「虫、ほんとうに嫌いなの……」

首を捻じ曲げて、その表情を覗き込むと、未だ瞳いっぱいに涙をためてうるうるさせている。色気を集約させたような泣きぼくろが、情感たっぷりに洋介の顔を見上げてくるのだ。

愛らしくも悩殺的なその表情に、心臓がきゅんと鳴った。

洋介と視線がぶつかると、「いい大人が、恥ずかしいわ……」と、無理に微笑をつくろうとするのだが、青ざめさせた頬は強張ったままだった。

女を守ろうとする男の本能が、かつての淡い想いと結びつき、恋心となって燃え上がった。いけないと抑えようにも、こればかりは理性でどうなるものでもない。

綾香が人妻であるという事実も、菜緒との関係のお蔭(?)で、ハードルが低くなってしまっているらしい。そもそも障害が大きいほど燃え上がるのが、恋心というものだ。

相変わらず、ぐにゅんと乳房を押しつけられているあたりから、ぷすぷすと恋の炎が燃え上がるような感覚だった。

熟れはじめた女体の温もりと柔らかさに、洋介の理性はすっかり溶け崩れている。

鼻腔をくすぐるのは、馥郁としたバニラビーンズに似た香り。高校時代から変わっていないところを見ると、決して、特別なフレグランスを用いているわけではないのだろう。しかし、その香りが、成熟したおんなの皮下から滲み出るフェロモンとブレンドされた瞬間、洋介を陶然とさせずにいられない。

下腹部がずきゅんと疼いてしまい、もういけなかった。

「田山先輩!」

こみ上げる熱い想いに、思わず洋介はくるりと身体を入れ替え、綾香をぎゅっと抱きしめてしまった。

「あんっ!」

細身に映る女体は、着やせするたちらしく、思った以上に肉感的だった。それでいて、まるで雲を抱きしめているかのように、ふんわりと柔らかい。

(あれほど憧れた田山先輩が、僕の腕の中にいる!)

その思いだけで、洋介は射精してしまいそうになるほどの強烈な興奮を覚えた。

「先輩ごめんなさい。でも、そんなふうにされてしまうと、我慢できません。ずっと先輩に憧れていたから……」

あふれ出す思いを飾らずに、そのまま口にした。

腕の中の綾香は、罠にかかったウサギのように震えている。洋介には、その震えが、自分を恐れてのものなのか、それとも先ほどの甲虫による動揺が未だ続いてのものなのか、判断がつかない。

彼女を守りたい気持ちと、力尽くでも我がものにしたい衝動がないまぜになって、つい両腕に力がこもった。

(なんて、ふんわりしているのだろう……)

豊かな乳房が、胸板に柔らかく当たっている。肉感的な身体が、あつらえたようにすっぽりと腕の中に収まり、最高に抱き心地がよい。しかし、いくら肉感的であっても、やはり綾香は骨が細く華奢だった。刹那の内に消えてしまう初雪のような儚さが感じられるのだ。

「はっんん……」

今にも消え入りそうな綾香を強く抱きしめたため、上品な唇から苦しげな呻きが漏れた。その響きが思いがけず悩ましく、さらに興奮をそそられた。

女子高生のころには感じられなかった大人の色気が、ただそこに佇むだけで、白い膚の下から無意識のうちに、じゅくじゅくと滲みだしてしまうのだろう。

「よ、洋介くんっ……」

あまりに強く抱き締めたため、綾香は窒息しそうに喘いでいる。けれど、その圧迫感が心地よい安らぎを与えていることに、洋介自身気づいていない。いつまでも腕の中にいて欲しい素直な気持ちが、人妻に不思議な安心感を与えているのだ。

「洋介くん、苦しいわ」

仕方なく力を緩めはしたが、その腕は華奢な身体にまとわりつけたままでいた。

「好きです。僕、先輩のこと……。逢えたのは、久しぶりだけど……先輩ものすごくきれいになっていて。最高に色っぽくて……あっ、それって魅力的って意味で……」

だから田山先輩とHがしたい。さすがの洋介でも、言葉にできない思いだったが、肉体は素直な反応を示していた。

頬を赤らめ俯きながら綾香が腰を引いている。その様子に、膨らんだズボンの前が、彼女の下腹部に当たっていることに、ようやく気づいた。まずいと思い、慌てて腰を引く。けれど、どうしても腕を解く気にだけはなれない。