ハーレムマンション 僕と美人妻たちの秘蜜な昼下がり

「田山先輩。自分でできますから……。照れちゃいますよ」

「そう? 本当に大丈夫だった? やけどひどくない?」

大きな瞳が、洋介の瞳を至近距離から覗き込んでいる。眦のほくろが、やけに色っぽい。

「大丈夫です。痛くありませんから……」

「あの……それなら、私の手、返してくれる?」

言われて洋介は、いつの間にか綾香の手をおしぼりごと握りしめていることに気がついた。

「うああ、す、すみません」

あわてて甘手を解放すると、洋介におしぼりだけを預けて素直に引き下がっていく。

間近にあった綾香の唇が遠ざかると、先日のキスをもう一度謝罪しなければと気がついた。けれど、そうすることで、また気まずい空気となってしまうことも考えられ、中々それを切りだせない。

「ところで、あの……一緒に、私のパンティも返してくれない?」

恥じらいを茶目っ気にくるんだような綾香の物言い。当然の要求に不意打ちを食らった洋介は、ズボンのポケットに手を突っ込んだ。未だ、水色のパンティを、そこに忍ばせたままなのだ。

「忘れていました。でも、これ……返したくありません。先輩のパンティ、僕にください!」

小さく丸めた薄布を引っ張り出し、ひらひらと掲げながら、洋介は思い切ってお願いをした。

「先輩が身に着けたパンティ。どうしても欲しいです」

薄化粧をした日本的な美貌が、ぱあっと赤味を帯びた。誰よりも色白の綾香だから、透明感溢れる肌が紅潮すると、桜の花がほころぶようだ。

その肌の白さが、他人に儚い印象を抱かせる所以だろう。それでいて綾香は、凛とした内面の強さを持ち合わせている。その一面が、思いがけない問いかけになって、洋介に降り注いだ。

「私のパンティをどうするつもり?」

思わず、返答に窮した洋介に、さらに大胆な問いかけが振り向けられた。

「興味があるのは、下着だけ? 中身には、もう興味を持ってくれない?」

問いかけられた洋介は、一瞬その意味がよく判らなかった。もしや嫌われたかと不安も抱いていただけに、頭の中が混乱した。けれど、目の前の綾香は赤らめた頬をさらに紅潮させて、瞳をうるうるさせている。その様子から、恥じらいを滲ませながらも、少し古風なところのある彼女が、自ら変わろうとしているのだとようやく理解できた。

「な、中身って……先輩の身体ってことですか? もちろん、きょ、興味あります! 大好きな田山先輩の肉体に、興味ない方がおかしいです!! でも、それって……」

続きを言おうとした洋介の唇に、縦に立てられた人差し指が押し当てられた。

「私、洋介くんにキスされてドキドキした。なんだかとっても嬉しかったし、ウキウキもしたわ。でも、人妻の私では、洋介くんに迷惑がかかるでしょう?」

そう言えば、キスした時も拒まれはしなかった。もしかすると綾香も、洋介と同じ気持ちを抱いてくれているのかもしれない。いやが上にも、淡い期待が膨らんだ。

「そ、それって……田山先輩も僕のことってこと?」

前のめりになって問いかける洋介に、綾香はこくりと頷いてくれた。

「高校時代と変わらない熱い視線で私を求めてくれたこと、とっても嬉しかった……。それなのに洋介くんったら、他の人と……。それも、私と同じ人妻ばかり……」

「ああ、やっぱり、知っていたんですね」

「それは、お隣だし、洋介くんのこと気になっていたから。足立さんの奥さんは、可愛らしい人だし、木原さんは元女優さんだけあって、同性の私から見ても魅力的だから洋介くんが惹かれるの仕方がないって思ったけど……」

洋介はまっすぐに綾香と向き合い、彼女の言葉を受け止めている。菜緒とまなみとのことは、事実なだけに言い訳の余地はない。だから、真摯に向かい合う以外洋介にはないのだ。

「でも、私、いつの間にか、嫉妬していた。自分でも勝手だと思う。洋介くんにダメって言っておいて、誰かにとられそうになった途端、ぷりぷり怒っているのだから」

詰られるものと思っていたが、雲行きが少しおかしい。綾香が自分を責めている。それではいけないと、洋介は思った。

「だめです。先輩。悪いのは僕なのだから。先輩のこと好きって告白しておきながら、優柔不断で流されて、他の女性にふらふらしている僕が悪いのです。だから、先輩は、勝手なんかじゃない……って、あれ、僕、何が言いたいんでしたっけ?」

様々な想いが溢れすぎて、途中で、話がぐちゃぐちゃになっていることに気がついた。そんな洋介に、ぷっと綾香が噴き出してしまう。

「ああ、ひどいなあ先輩。言い訳せずに思いを告げるつもりが、こうなったんですよ」

「うふふ。判ってるわよ。洋介くんの気持ち。そして、私も素直にその気持ちに応えたいの。本当に洋介くんをとられてしまう前に……」

そっと洋介の太ももの上に、やわらかな手が置かれた。温もりでも、想いを伝えようと言うのだろう。その効果は、絶大だった。刹那に、ゾクッという微電流が背筋を走った。太もものその部分だけが、過剰に熱を帯びてむずむずしてくる。鼓動が高鳴り、頬が赤くなっていくのが自分でも判る。

身体の奥がカッと熱くなり、股間に力がこもってくる。綾香の魅力に、身体は素直に反応している。

「先輩、僕ぅ!」