ハーレムマンション 僕と美人妻たちの秘蜜な昼下がり

太ももに置かれた手の甲に、洋介も掌を置いた。すると、くるりと綾香の手が返され、掌を握りしめてくれた。

「ねえ、洋介くん、こっちへ……」

しなやかな肢体が、そのままゆっくりと立ち上がり、洋介の手を引く。

導かれたのは、リビングを出た突き当りの寝室だった。カーテンが閉められているため、昼下がりのこの時間でも薄暗く、どことなく淫靡なムードを漂わせている。

セミダブルのベッドには、枕が一つしか置かれていない。

ご主人とあまりうまくいっていない様子だったことを、洋介は思い出した。

(自分なら先輩に寂しい思いを絶対にさせない。こんなに魅力的な女性をほったらかしにしているご主人の気がしれないよ!)

綾香たち夫婦のことなど、ほとんど知りもしない癖に、洋介は勝手な想像で腹を立てた。同時に、より彼女を大切にしたい想いを強くしている。

「洋介くん、私を抱いてくれる?」

つややかな肢体を投げ出すようにしてベッドに横たわった綾香が、不安そうにその顔を持ち上げた。洋介が躊躇していると勘違いしたらしい。

「ああっ、先輩っ!」

感極まった雄叫びを上げ、洋介はベッドにダイブすると、横たえられた女体をきつく抱きしめた。

豊麗な肉体が、すっぽりと腕の中に収まる。しなやかで柔らかく、それでいて肉感的な抱き心地。ただ腕の中にあるだけで、洋介の官能を根底から揺さぶってくる。

激情がさらに募り、つい腕に力が入った。

「あん!」

愛らしい悲鳴のような喘ぎをあげた唇に、強引に貪りついた。

一瞬、驚いたように目を見開いた綾香も、あえかに唇をひらき洋介の要求に応えてくれる。

(なんて滑らかな唇……。花びらを吸っているみたいだ……)

先日のキスの時より、幾分余裕があるだけ唇の感触を味わうこともできる。

微笑むと胡蝶蘭が咲き誇るような唇は、どこまでもふっくらとやわらかい。

互いの口粘膜が擦れあうと、ピチャピチャと唾液音が、静かな部屋の中に響き渡った。

ピンクベージュのルージュに彩られた唇に、今度は舌を挿し入れて、唇裏の粘膜や歯茎を夢中で舐め啜った。

「あぐっ、ふむぉう、ふぐぅっ」

荒く鼻で息を継ぎながら、彼女の舌を求めて右へ左へと彷徨う。薄い舌が差し出されると、勢い込んでざらついた舌を絡みつけた。

絡まりあった舌が互いの口腔を行き来し、溢れ出した涎が口の端から透明な糸を引いて垂れ落ちていく。

「ああ、こんなに激しいキス、久しぶりだわ……」

同じ家に住んでいても、キスさえもしない夫婦。熟年夫婦であればともかく、結婚していない洋介には、その関係が奇異なものに感じられてならない。

「ふうんっ、うぅっ、ほぉぅっ。はぁっ」

吐息のねっとりとした甘さといい、唇のグミのような弾力といい、口腔粘膜の温もりといい、どこもかしこもが洋介を夢中にさせる。中でも綾香の舌腹は、その柔らかさや滑り具合がヴァギナを連想させて、どうにもたまらない気持ちになった。

「先輩の唇ってものすごく官能的で、ああ、もっともっと味わっていたい!」

互いの唇の形が変形し、歪み、擦れあい、ねじれていく。

綿あめを思わせるふわふわ女体をさらに強く抱き締めて、ひたすら唇を奪い続ける。

あまりにも情熱的な目も眩むような口づけ。綾香の中で眠り続けた女の本能を呼び覚まそうと、熱く、熱く、どこまでも熱く唇を貪り続ける。

その努力が通じたのか、いつの間にか綾香は、洋介の太ももにすんなりと伸びた美脚を絡みつけている。股間のあたりがむず痒いのか、さりげなく擦りつけてまでいるのだ。

「ふおん、はあああっ、ふむむむっ」

息継ぎの時間さえ惜しいと思えるくらいに唇を合わせ、舌をもつれさせ続ける。

ストレートロングの黒髪の中に手指を入れ、豊かな雲鬢を愛しい想いと共にかき乱した。ひたすら甘い息苦しさの中に、時間さえ押し流されていく。

どれほど綾香の唾液を啜ったことか。ようやく離れた時には、混じりあった二人の唾液で、彼女のルージュがべっとりとふやけていた。

「先輩……」

「ふぅぅっ。こんなに情熱的にキスをしたの初めてかも……」

そう言うと綾香は、名残を惜しむように洋介の上唇を、上下の唇で挟み込み甘くプルンと引っ張った。

その悪戯っぽい表情は、殺人的なまでに色っぽい。

「先輩、それ本当ですか?」

紅潮した頬が、こくりと頷いた。その後に、何か物言いたげな首をかしげる仕草。洋介も首を斜めにかしげて促した。

「あのね、洋介くん。私のこと先輩って呼ぶのやめて。もう田山でもないのだし、だからと言って洋介くんに神谷で呼ばれたくないし……だから、綾香って……ね?」

秋波を含んだシルキーボイスに、耳元をくすぐられる。

「うん。あ、綾香……さん」

「ダメぇっ……さんもいらないっ! ね、綾香って、さあもう一度」

かぷっと耳朶を甘噛みされた。

「あ、綾香! 綾香、大好きだよ」

お返しとばかりに、美貌にやさしく唇を当てる。色っぽさの源のような眦のほくろにも口づけすると、綾香が蕩けんばかりの表情で微笑んだ。

「うれしい」

首筋に細い腕がむぎゅっと巻きつく。グレーのチュニックは、袖が肘ほどしかないため、腕のすべすべした肌触りが直接首周りを刺激してくる。二の腕さえも、ふんわりと食パンの生地のようにやわらかい。