人妻フルコース~熟れ頃・食べ頃・味見頃~

早くも立ちあがった千佳子が、拓実の耳に唇を寄せ、囁いてきた。そちらに視線を向けると、今日の料理で使う野菜が、大きな籠に盛られている。小さく頷き返すと、熟女講師も小さく頷き、息を整えると一足先にパントリーを出て行った。

「あら、佐佐木さん、今日は早いわね」

千佳子が女性に声をかけているのを聞きつつ、拓実は急いでブリーフとジーンズを履き直した。大きく何度か深呼吸を繰り返して心を落ち着けてから、指定された籠を手にパントリーをあとにするのであった。

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「それじゃあ、今日のレッスンは終了します。是非、ご家庭でも作ってみてください。今日は手軽にイカを使いましたが、もちろんエビでもOKですから。エビの場合は、背わたを取って、ちゃんと下処理してくださいね。それでは、お疲れさまでした」

午後四時少し前、並木千佳子は講師用の調理台の後ろに立ち、この日集まった二十三人の生徒に向かってにこやかに挨拶をした。

この日のメニューは、「イカのマヨネーズソース和え」と「青椒肉絲」。マヨネーズソース和えは、ふっくらサクサクに揚げたイカに、特製のマヨネーズソースを絡めたもので、手がこんでいそうに見えて、その実、簡単に作れるお手軽メニューだ。

「あぁ、それと、秋山拓実くんは居残りレッスンで~す」

最後に、拓実に対して居残りを指示すると、生徒たちの間に笑いが広がった。

高校生の拓実が料理をする姿は、どこか危なっかしく、見ている側がハラハラものなのだ。そのため、補習のための居残りを指示しても、誰も不審に思わなかった。

(高校生の秋山くんと四十すぎの私が、変な関係になるなんて、誰も思わないものね)

料理教室前の秘戯も、いち早くやってきた生徒に怪しまれることはなかった。拓実がいたことには驚いた様子であったが、特別レッスンをしていたと言うと、簡単に納得してくれたのである。

「お疲れさまでした。ありがとうございました」

「お疲れさま、また来週待ってるわ」

生徒である主婦たちが挨拶をし、帰途についていくのを、にこやかに見送りながら、千佳子の下腹部がキュンッとしてきた。

(あぁん、口止め料に秋山くんのを抜いてあげるだけじゃない。それ以上のことは、なにもないはずなのに、なにを期待しているの私は)

教室がはじまる前に見た、拓実のペニスが脳裏に甦ってくる。色こそ初々しいピンク色をしていたが、成人男性顔負けの逞しさで屹立していた強張り。その漲り具合と熱さは、千佳子が経験したことのないレベルであった。

(もし、あれが私の膣中に入ってきたら……)

高校生の少年のペニスを、熟れた肉洞に迎え入れる背徳の場面を想像し、ゾワッと背筋を震わせてしまった。

「千佳子先生、お疲れさまでした。来週は来れないと思うので、また再来週に」

最後に実習室を出たのは、料理教室をはじめた当初からの生徒、坂下晴恵であった。

「そうなの、残念だわ。あっ、もしかして、旦那さんが一時帰国かしら?」

秘唇の疼きをおくびにも出さず、千佳子は晴恵に問いかけた。三十路妻の夫が、上海に長期出張していることは、以前、聞いていたのだ。

「そうなんですよ。それで、向こうの実家に行かないといけなくなっちゃって。私はできれば、チャッチャと済ませて帰って来たいんですけど」

「あまり楽しめないかもしれないけど、これも嫁の務めと諦めるしかないわね。それじゃあ、再来週に待ってるわ。お疲れさま」

どことなく妖艶な雰囲気を漂わせる人妻は、気乗りのしないふうであった。夫の実家に行くのが楽しみという嫁も少ないであろうし、その気持ちは千佳子も充分すぎるほどに共感できた。

「はい、それじゃあ、また。──拓実、再来週までには、少しは包丁の使い方、上手くなっててちょうだいよね」

「わ、分かってますよ。僕だって、一生懸命やってるんですから」

千佳子に挨拶をしたあと、晴恵は実習室に残る拓実にからかい半分の言葉を投げかけた。少年は唇を尖らせ、反論している。二人はこの日も同じ調理台についており、その心許ない手つきを間近で見せつけられた人妻としては、口にせずにはいられなかったのだろう。

(いま晴恵さん、秋山くんを、拓実、って呼び捨てにした? まっ、彼女の性格なら、もたつく秋山くんに業を煮やして、というのも、分からなくはないけど)

「それでは千佳子先生、本当にまた」

「ええ、またね」

最後に再び千佳子に挨拶をし、頭をさげてから晴恵は調理実習室をあとにした。これで残っているのは、高校生の少年と四十路妻だけである。

「せ、先生、本当にさっきのつづきを……」

廊下へと通じる扉が閉まる音が聞こえた直後、拓実が期待と不安、双方を内包した顔で声をかけてきた。

「つづきはなしで、包丁の持ち方の復習だけでもいいけど」

「そ、そんな……」

冗談めかしたセリフに、少年はガックリと肩を落とした。その素直すぎる反応が、男性との戯れから遠ざかっていた熟妻の性感と母性を、妖しくくすぐる。

「うふっ、嘘よ。ちゃんと口止め料代わりのご奉仕はしてあげる。大丈夫だと思うけど、誰かが戻ってくるといけないし、またパントリーへ移動しましょうか」

「はい」

(あぁん、こんなに嬉しそうな顔をされたら、過剰なサービスまでしちゃいそうだわ)