いけない誘惑水着 グラビアアイドルの撮影日記

いけない誘惑水着
グラビアアイドルの撮影日記

小説:草飼晃

挿絵:大柴宗平

リアルドリーム文庫

いけない誘惑水着 グラビアアイドルの撮影日記

登場人物

さくら

「あんしん三次元女子」のニックネームで知られるGカップグラビアアイドル。大学では西洋史を専攻しており、清楚で知的さを感じさせる容貌と、むちむちと豊満なバストをあわせもつ照れ屋な少女。

あらはな

フリーの女流カメラマン、祐美香のデビュー時からずっと彼女の写真を撮り続けている。“荒花・ザ・ワールド”のあだ名の通り勝ち気でワンマンな才女。

きくゆい

加奈の推薦で祐美香の撮影に同行することになった、英彩出版勤務の女性編集者。実は宏之の幼馴染みでお姉さん的な存在。

はしひろゆき

関西の大学に通う大学生。中肉中背の平凡な青年。一ファンとして祐美香に憧れていた。

第一章 あぶない下着スタイル・女流カメラマンの襲撃

夏も本番だった。隣家の屋根瓦の照り返しがまぶしく、庭に並べた鉢のあさがおは揃ってぐったりとしおれている。窓は全開にしてあった。

ひろゆきが鳥取市の外れにある実家に帰ってきてもう一週間が過ぎていた。日照りはつづき、部屋の中でじっとしているだけでも汗ばんでくる。

(抱きしめてみたいなあ……)

ビキニ姿が印刷されたつやつやの紙面に宏之は見入っていた。

水着が果実のようなふたつのふくらみにぴったりと密着している。Gカップ乳の谷間は吸いこまれそうな深い影をつくり出している。

グラマラスな肢体とはつり合わないほどの知性的な美顔が、開いた写真集の中からジッとこちらを見つめている。

(添い寝してみたいなあ……)

上品なダークブラウンに染められたセミロングの髪は胸元のあたりで自然にカールしていた。

瞳は聡明そうな光を宿し、ととのった鼻筋とこころもちふっくらとしたくちびるは落ち着きをたたえていた。

「ふはーっ……」

鼻息がかからないように顔を横に向け、いったん鼓動を鎮め、また顔を戻してゆっくりとページをめくる。

「おおっ!」

何回見てもすてきだ。

両腕は細くしなやかで乱暴に扱ったら折れてしまいそう。でもよく見ればそこにも女らしい曲線がある。

ふくらはぎから太ももを通りお尻につづくラインはむっちりと実っていてすごく女らしい。

(ああ、さんのこの胸。このお尻。なんていいかたちなんだろう……さわったらどんな感じなんだろう……)

布地一枚だけに守られた臀部もたっぷりと女子の成熟を見せている。

腰がきれいにくびれていて足首も細くキュッと締まっているのでよけいに、お尻や太ももの脂の乗った実りぶりは健康的な色気を放っていた。

(こんな人がぼくのそばにいてくれたらなあ……)

やかましすぎる蝉の声はもう耳には届いていない。

宏之は大阪の大学に通っていた。三回生だ。就職のことも考えなければいけない。

でもこう暑くては面倒くさいことをしようという気は起こらなかった。

ぺろり……。

さらにページをめくると、今度は見開きいっぱいに九十センチの胸が写っていた。

(うああ……このおっぱい、すごいよなあ……)

あんしん三次元女子。

それがさくら祐美香の愛称だった。

ファースト写真集が『あんしん三次元女子・祐美香十四歳』という題で、帯コピーの『なにがそんなに安心なの?』との相乗効果もあったのか、そのままニックネームとして定着した。

プロフィールによると宏之よりもひとつ年下だから今年二十歳。今見ているのは去年出た写真集だ。そろそろ次の写真集の発売が予告されてもいいころ。

「すごいよなあ……ぼくより年下なのに、こうなんだもんなあ……」

もちろん宏之も健康な若い男だからいわゆる実用に写真集を使うことだってある。

今だって股間がもりもりと熱くなってきている。

でも。

(一回でいい。一回でいいから……このおっぱいに頬を押しつけてみたいなあ……)

それだけが夢だった。

それ以上のことをしたいなんて言わない。

(でも……ムニュだけだって無理に決まってるよなあ)

はあとため息をつく。

帰省しても特にすることもなかった。彼女はいない。実は経験もまだだった。グラビアファンなのがいけないのか。微妙にそれは悩みの種だった。

「ちょっと、宏之」

「うわ」

いきなり呼ばれてびっくりした。

写真集をあわてて棚に戻す。

「あんた、夏中そうやってゴロゴロしてるつもりじゃないだろうね?」

「悪いのかよ」

盆を持って入ってきた母親から麦茶のグラスを受け取りながら、宏之はくちびるを尖らせた。Tシャツの裾は出しているから股間のふくらみは隠れていた。

「宏之、あんた、暇ならアルバイトでもしたらどう」

それを言いたかったのか。なるほど。でなければうちの母親がわざわざ自分の息子に冷たいものを出してくれるわけがない。

春先まで大学近くのコンビニでさんざん働いたので今年の夏は少しのんびりしようと宏之は思っていた。

「こんな田舎に、いいバイトなんかないだろ」

「実はあんたを見こんで、頼みたい仕事があるんだけどね」

「はあっ?」

思わず母親の顔を見つめ返していた。

和風旅館の玄関をくぐると古い木の香りといっしょに祖母が出迎えてくれた。

「よく来てくれたねえ、ヒロちゃん」