(やっぱり……祐美香さんの肌ってやわらかい)
ほのかな月光の下で見るのとは違って昼間の光の中で見る水着アイドルのうつくしさといったら格別だった。
ココナッツのようなクリームの香りに対抗するように、塗り広げていく宏之の手のひらの動きに合わせて祐美香の肉体の芯から、なにか女の匂いみたいなものが漂ってきた。汗とも違う。でも汗と同じように髪の根元や腋の下から甘い牝の匂いみたいなものが立ちこめてくる。
「肩紐を外してあげて、佐橋くん。クリームを塗りながら祐美香を少しずつ脱がせていってあげて」
(ええっ?)
そのことばにびっくりしたのは水着アイドルと青年だけではなかった。
結がさすがに口出ししてくれた。
「せ、先生、それはまずいんじゃあ……祐美香ちゃんまで脱がせちゃうのは、ちょっと……ヒロくんは懲らしめのためにそうさせてるんでしょうけど」
「あら、菊池さん。それは違うわよ。佐橋くんに裸になってもらっているのは、別に懲らしめなんかじゃないわ。加奈はねえ、前から一回、男と女のからみを撮ってみたかったのよ」
これには宏之も祐美香も結も絶句した。
(か、か、からみって……! 撮ってみたかったって……!)
ことばが出ない。
「もちろん今度の写真集に掲載するわけじゃあないわ。でもね、佐橋くんも写っていなくて、祐美香も写ってちゃいけないところは写っていなくても、いいのが撮れそうな気がするのよ。すごくするのよ。なんか加奈はねえ、ワクワクしてきたんだわ!」
そう語ったかと思うとまた指示を飛ばしてくる。もはや完全に仕事モード。というか自分の世界モード。
「ほら、佐橋くん。休んでないで! ちゃんとクリームをきれいに塗り広げてあげないと、祐美香が変な焼け方をしちゃうわよ。得意なんでしょ、女の子を脱がせるの? 肩紐から少しずつ脱がせてあげて」
「……は、はいっ」
いや別に得意じゃないけど。
祐美香さんごめんねと謝りながらそっと肩紐を外し、丸い肩にクリームを塗っていく。さらに指を胸元へ伸ばす。知性的な瞳の女子大生のなめらかな白肌がカーッと火照りを帯びてきた。
「ぃや……っ」
ぺろりと水着の上半身がめくれておっぱいが露出する。
(すっ、すごいっ……部屋で見せてもらったとき以上だ!)
真昼の浜辺で見る九十センチ胸果実の見事さといったらなかった。まん丸い双乳の表面はパラソル越しの夏の光を反射させて白く輝いている。乳輪はふっくらと盛り上がり、桃色の乳首が潮風を受けて恥ずかしそうにたたずんでいた。
「早く胸にもクリームを塗ってあげて」
「は、はい……じゃ、じゃあ塗るね、祐美香さん」
砂浜に咲いた優美な一輪の花は顔を赤くさせてこっくりとうなずく。
返事もできなくなっている様子。
いくら夕べ処女を捧げた相手とはいえ今は真っ昼間だし、加奈や結に見られている。
当然だろう。
加奈もそう考えたようだった。
「祐美香。加奈や菊池さんのことは少し忘れて。目を閉じていいから、佐橋くんと無人島でふたりっきりになっているとでも考えなさい」
「は……はい……」
女子大生グラビアアイドルは素直にまぶたを降ろした。
その顔を見ているだけでも宏之はしあわせな気持ちでいっぱいになってしまう。しかしただ見蕩れているわけにもいかなかった。あこがれのアイドルの首から二の腕にかけて、どろどろに溶けたホワイトチョコレートそっくりのクリームを塗り広げる。
「はぁ……ん」
それだけでも祐美香は目は閉じたまま、くちびるからせつなげな声を洩らした。
(やっぱり、祐美香さんて……敏感)
今度はいよいよ胸元から胸のふくらみに指を伸ばしていく。美麗なバストのカーブに触れただけで水着アイドルは、なにか目に見えないものがぶつかったみたいにびくんっと全身を震わせた。ビーチマットから腰が数センチ浮き上がり、そのままぶるんぶるんと短く左右にくねる。
優美でなめらかな頬がいっそう紅潮していった。それを見て宏之の萎れていたペニスは一気に硬くなっていた。角度もグングンついて、砂浜を向いていたのが夏の青空を向いていく。祐美香が目を閉じてくれていてよかったと思った。
(でも……荒花先生と結姉ちゃんには見られてるよなあ……)
しかし。
「ほら見て、菊池さん。祐美香の顔。悩ましいじゃない? 今まであんな顔見たことあった?」
「いいえ……ほんとだ、祐美香ちゃん、きれい……」
宏之のことはどうでもいいようだ。
「ほら佐橋くん。もっとつづけてあげて。祐美香がいい顔になってきたから。もっともっといちゃいちゃしていいから」
加奈はカメラを構えながらそんなことを言う。今朝の殴ったり蹴ったりはもう完全に脳裏から去っているようだ。
(ようし、それなら)
もう一度胸から首すじに塗り広げていきながら、後ろから覆いかぶさるようにして顔を寄せ、頬にくちびるを這わせる。そのままくちびるにくちびるを重ねた。
「くぁはん……」
祐美香の熱を帯びた声と湿った息が顔にかかる。手に触れただけで平手打ちをするほど強い拒否反応を示したのが嘘のような、やわらかい反応ぶりだった。平手打ちどころか、くちづけだけで腕からも足からも力が抜けていくようだ。くにゃりとしていく身体を宏之が支えてあげなければいけないほど。気をよくして宏之は開きかけた年下アイドルの口に舌先と唾液を同時に流し入れてみた。