いけない誘惑水着 グラビアアイドルの撮影日記

「やっぱり地方の日中シンクロはいいわねえ。空の抜け具合も違うし」

女流カメラマンの機嫌も天気同様よさそうだった。

「じゃあ、今度はすわってみようか」

「はあい」

カメラマンの指示に素直に応える桜祐美香。

それだけの動作でも豊かな胸果肉がぷるんと揺れる。ビキニに守られたお尻が砂浜の上にぺたりと密着した。アイドルのすべすべの肌は水や砂粒ばかりか太陽の光も跳ね返してきらきらと輝いている。

(水着姿の祐美香さんがいる。やっぱり本物なんだ……)

宏之は気温のことも忘れてあこがれの桜祐美香に惹きつけられていた。

「ワン、ツー、はいっ! ワンツー、はいっ!」

荒花加奈の凛とした声が砂浜の上を流れていく。

物静かな美顔と雄弁な肢体の水着アイドルが両腕を前につき、前かがみになったポーズを取っている。

二十歳の実りすぎの乳房の間にできた谷間がトロピカルな柄ビキニによってこれでもかというくらいに強調されていた。女流カメラマンの構えたカメラはその谷間に向けられていた。

宏之はなぜか自分がカメラのレンズ越しに突き刺すような視線を浴びている錯覚におちいり、思わず身体をぶるっと震わせた。

(ビキニしか着てないところにカメラを向けられるって、緊張するんだろうなあ……)

いつも見ている写真集にはカメラもカメラマンも写っていない。だから撮影風景を見るのは不思議な感じがする。

「じゃあ今度はサンダル脱いで、裸足になってみて」

「はい」

前かがみになり、すらりと伸びた足の先から履き物を外すアイドル。

(た、たまんないなあ……女の子の裸足)

特になんてことのないポーズのはずなのに、むちむちのグラビアアイドルが面積の少ない布きれをつけただけの姿にはどぎまぎしないではいられない。

「ワン、ツー、はいっ」

はいっ、のところで加奈はシャッターを切る。

「どう? 本物の撮影の感想は?」

昔なじみのお姉さんがいつの間にか横に立っていた。

「すごい……」

それくらいしか言えなかった。

写真集で見る祐美香さんとは立体感がまるで違う。どれだけ印刷が鮮明でもやっぱり肉眼で本人を見るのにはかなわないということがよくわかった。

たぷんと実ったおっぱいの丸み。肩から胴体につづくしなやかなカーブ。ほどよく熟れた太ももが弾力のありそうなお尻につながっていく健康的な悩殺美。

今日はもう何回唾を飲みこんだことだろう。

「はい、その顔っ。いいよ、ツー、スリー、はい! もうひとつ、スリー、フォー、はいっ!」

どんどんテンポが上がっていく感じ。

それにしても。

(ジーパンでもヤバいかも……)

今日はこうなることを見越していちばん厚地のジーンズを穿いてきた。だから勃起してもまずバレないだろうと思っていた。でもそうとも言えなくなってきた。

海を見たり空を見たりして気を逸らせばペニスの勃起は鎮まってくるけれど、海から上がってきたばかりの人魚のようなグラビア美女に目を向けるだけでまたむくむくと大きくなってしまう。

(別にぼくは、祐美香さんの身体しか見てないような、卑しい男なんかじゃない……はずなのに)

「じゃ、次はねえ……うん、そうそう」

加奈の指示でミディアムヘアの女子大生グラビアアイドルは砂浜の上に横たわった。

手は身体の前で揃えた両膝に添えられ、そこにカメラマンが寄ってストロボを灯すのと同時にシャッターを切っていく。

(うう。そのポーズ……)

またゴクッと生唾を飲みこむ。

つまり体育坐りのままで寝ころんだようなポーズだ。豊かなおっぱいは膝に隠れてしまって見えないが、色柄ビキニに守られた股間部分がはっきりと見えていた。

水着がぴっちりと食いこんでいる。そこはこんもりとくちびるをたてにしたようなかたちに盛り上がっていた。その真ん中にかすかにすじまでうかがえる。

(あ、あのビキニの中ってどうなってるんだろう……)

いやらしい目で祐美香さんを見てはいけない、と思いつつも童貞青年はそう考えずにはいられない。

(だ、だめだ)

目をつぶりいかんいかんと首を左右に振る。

なんとか気を逸らさないと。

話をしていればまぎれるかもしれない。

「ゆ、結さん。撮影ってこうやってやるんですね。もっとなんていうかこう、大勢でするものかと思ってましたけど」

「うん。ふつうは事務所のマネージャーさんとかADさんとかいろいろでたいへんなんだけど、祐美香ちゃんは事務所に所属してないし、まあ今回は少数精鋭というか」

自分で言っちゃダメか、とおさななじみのお姉さんは笑った。

きのうと同じように頭の後ろでさっぱりと黒髪をまとめている。

さほど起伏のなさそうな胸は黒いタンクトップとポケットのいっぱいついた作業服みたいなパーカーに隠されてよけい目立たなくなっている。ジーパンの裾はくるくると巻き上げられて、グラビアアイドルにも負けないくらいの細くてきれいなくるぶしが剥き出しだった。

「ADさんって……アシスタント・ディレクター?」

「アート・ディレクター。まあデザインだね。荒花先生はそういうのも全部自分でやるから」

東京の大学を卒業しアイドル写真集最大手の『えいさい出版』に就職した結は、カメラマンの加奈になぜか気に入られ、桜祐美香の写真集をもう何冊も担当しているそうだ。ちなみに独身と判明。