ぬるぬるの肉棒をゆっくりと抜き取る。
「祐美香さん、大丈夫……?」
「は、はい」
「身体、洗わないといけないよね……」
「うん……」
「お祖母ちゃんを起こさないように気をつければ、お風呂場は使えるから……ぼくも女湯の方に行っていい? いっしょに洗おうよ」
重量感たっぷりの乳房と尻の持ち主は目を丸くさせ、それから顔を真っ赤にさせた。
「もうっ……宏之くんってエッチだったのね」
(えっ?)
祐美香がこういう話し方をするのは初めてかもしれなかった。
(……やっぱりちょっとぐらいはよかったのかなあ)
きらわれてはいないようで。それだけはわかってホッとひと息。
「じゃあ行こうよ」
「待って」
立ち上がろうとした青年の腕を、上半身だけ水着をつけたままの祐美香が引いた。
「もう少しだけ……このまま、宏之くんに抱きしめていてほしい……ごめんね、わがまま言って。でも……お、終わったからって、すぐに離れるのはいや」
ああ、ごめん、と言って宏之はもう一度腰をおろし、大事なことに気づいた。
「あの、ぼく……中で出しちゃったんだけど……」
「宏之くんのこと信じてるから平気」
きっぱりとそう言って祐美香はもたれかかってきた。
「肩幅、広いよね。宏之くん」
「でも。え……? 初めて言われたなあ……そうかなあ?」
「わたし、なんか安心するな」
夏の月がふたりを照らしていた。
第五章 みだらなフォトセッション・禁断の海岸プレイ
いきなり加奈の右の拳が飛んできて、宏之は吹き飛ばされていた。
「いったいどういうことなの!」
女流カメラマンは、倒れこんだ青年の身体をまたいで仁王立ち。
編集者とグラビアアイドルは凍りついたように黙りこんでしまっていた。
朝。
宴会用の広間で加奈と結と祐美香の三人が食事をとる。宏之は朝食の膳を並べていたところだった。そこに加奈が入ってきた。挨拶をした祐美香の顔を見たとたん加奈は顔色を変え、数秒間黙っていたかと思うと拳を握りしめ、宏之にパンチを浴びせてきたのだった。
「ど、どういうことって……」
ジンジンする頬をおさえながら起き上がった宏之のTシャツの首根っこを摑んだ女流カメラマンは、そのことばをさえぎった。
「加奈の目を節穴だと思ってるの? 加奈はねえ、祐美香が中学生のときからずっと撮ってきているのよ。あの子が変わったことに気づかないとでも思ってるの? 今この旅館にいる男といったらきみしかいないじゃない!」
「………」
すごい眼力だった。
ひと目で見抜いたのか……。
女流カメラマンは怒りを隠そうともせずに怒鳴りまくる。
「今まで責任を持って親御さんから祐美香を預かってきたのに……祐美香のグラビア仕事に反対だった親御さんも加奈のことだけは信頼してくれて外泊ロケまでさせてもらえるようになったのに……ああ、もうなんてことを!」
「先生、わたしはもう子どもじゃありません!」
口を挟んだのは祐美香だった。
「人を好きになる権利は自由にあるはずです。わたしが宏之くんを選んだんです。わたし本気なんです。宏之くんが悪いんじゃありません!」
「な……っ」
加奈は振り返って祐美香を睨んだ。
「あなたは黙っていなさい」
「いいえ。黙りません!」
「祐美香!」
加奈も本気で怒っている。
そこに、先生、と口を挟んだのは編集者の結。
「ヒロくんは……佐橋くんはちゃんとした男の子です。ふたりとも真剣におつき合いしようとしています。信じてあげてください」
「菊池さん、あなたまでそんなことを……あなた、知ってて黙ってたの?」
「知ってました。すみません先生。でもふたりは本当に真剣なんです」
「そんなこと言われたって……」
くちびるの端をまだぴくぴくさせながらも祐美香と結の真剣な表情に少しは怒りを和らげたようで、女流カメラマンは握っていた宏之のTシャツの襟ぐりから手を離してくれた。
やっとまともに息ができるようになった宏之に、加奈は少しだけ落ち着いた口調になって話しかけてきた。
「佐橋くん、一応祐美香の保護者代わりとして訊いておきたいのだけれど」
「は……はい」
「コンドームはつけたんでしょうね?」
う……。
黙りこんだ宏之に年上カメラマンはたたみかけてくる。
「どうなの? つけたのよね、もちろん?」
「つけませんでした……」
答えた次の瞬間、ふたたび顔に右ストレートを見舞われた。悲鳴を上げる隙すらない。自力で起き上がるよりも前にまたTシャツを引っ張られた。才女のこわい顔が眼前に迫る。
「佐橋くん。これは大事なことだから訊くのよ。どこに出したの?」
祐美香が顔を真っ赤にさせたのが視界の隅に入ったけれど、激昂した加奈を前にしては真実を答えるしかなかった。
「……え、ええと、そのう……アソコの中へ」
もう一度殴られる、と確信した。
パンチではなかった。乱暴に足蹴りされ、次には怒声が降りかかってきた。
「佐橋! きみねえ! 祐美香のことぜんぜん真剣に考えてないでしょう! ちょっとでも祐美香のことを大事に思ってるんならそんなことできないはずだよ!」
「で、でも」
「でも、と、だって、はいちばんきらいなことばなの!」
そうだった。
宏之はもうなにも口答えできなかった。
「先生。宏之くんをそんなに叱らないでください。宏之くんはちゃんと、ひ……避妊のことに気を配ってくれました。でも、わたしが頼んだんです……初めてのときは、ありのままの宏之くんを感じたいって。だ、だ……出すときも、宏之くんは、な、中は絶対ダメって言ったんだけど、わたしが無理に頼んだんです。宏之くんのすべてが欲しいって」