「もしかして、わたしにこれ以上の恥ずかしいことを、言わせようと思ってる? それとも、恥ずかしいことを言わせておいて、なにもしないって、ちょっとひど……」
「ち、違いますっ」
宏之は、もうなるようになれ、と思った。
「見たい。祐美香さんの身体、ぼく、見たいです。ぼ、ぼくだって、男だよ! 好きな女の子のことをもっとよく知りたいに決まってるじゃないかっ!」
早口で口走ったとたん、それまで以上にカーッと自分の身体が熱くなるのがわかった。自分でも相手を好きだと打ち明けてしまったのだ、つい。
祐美香はまたうつむくと、一歩下がって宏之の腕から抜け出した。
薄地の半袖カーディガンをゆっくりと脱いだ。
(うわあ……)
下半身は白デニムパンツのままで上半身は肌色のビキニをつけたグラビアアイドルの姿が、宏之のすぐ目の前にあった。
魅惑的な胸のふくらみが、中身に水がいっぱいにつまった風船のようにビキニの布地を内側からぷりんと張りつめさせていた。
「身体……見たいんですよね?」
「祐美香さん、む、無理しなくていいからっ。ぼ、ぼくは、無理強いとか、したくないから。いやなら、しなくても」
「宏之くん、女の子にここまで言わせておいて、今さら、恥をかかせようっていうんですか?」
「いや、だから」
言わせておいてって。ぼくのせい?
祐美香さんってちょっとだけ荒花先生に似てる? 影響受けてる?
正直になるしかないようだった。
「わ……わかったよ。祐美香さん、頼む。見せて。ぼく、すごく見たい」
「うん」
ごくり……と生唾を飲む宏之の目の前で、祐美香は背中のホックを外し、首の後ろに回っている肩紐を頭から抜く。
清らかな気品とまろやかな肉体を持った処女は恥ずかしそうに少し前かがみになったままで、自分の乳房を守るみたいに布地ごと手で自分の胸を覆ってしまった。
顔は真っ赤になっている。
見るとその細い指がぶる、ぶる、と心細そうに震えていた。
いや、心細いというよりこわがっているかのように。
「祐美香さん、やっぱり、恥ずかしいんだよね……無理してるんだよね、ねえだから」
「そ、そんなこと、ない、ことも、ない。宏之くんだから、かも。だからわたし」
なにを言っているのかよくわからない。
ぼくが後押ししてあげなくちゃと思った。
もう欲望を取りつくろってもしょうがない。口を開いた。思っていた以上に口の中はべっとりとしていて、かすれたような声になってしまったが。
「祐美香さん、ぼくのためにおっぱい見せて」
すると女子大生は突然、宏之にとっては思いもよらないようなことを言い出した。
「……宏之くん。約束してくれる?」
「約束?」
「今度、わたしの両親に会ってくれる? 宏之くんのことを紹介したいから」
え。え……?
「いや、そんなこと、急に言われても、ぼくは」
突拍子もなさすぎて、そこまでの覚悟なんかしてないととまどう。でも。
なんとなくわかった。
(そ、そうだ。祐美香さんは、まじめに、真剣に、ぼくに胸を見せてくれようとしているんだ……だから約束が欲しいんだ)
「だめ?」
「そ、そんなことないよっ。わ、わかったよ。今度紹介してください。え、ええと、うちの両親にも会ってもらうからっ」
「わかりました」
次の瞬間、祐美香は思いつめたような顔になって手のひらを広げた。
ぱさり……と静かな音をたててビキニトップが落ちた。
(祐美香さん……っ!)
二十歳の豊かなメロン乳が目の前に現れた。
祐美香はまだ恥ずかしそうに目を伏せたままだった。かーっと首のあたりから耳までそれまで以上に朱に染まっていく。いや、胸元から見事な胸のふくらみにかけてもまた赤くなっていく。
(い、い、今まで誰も見たことのなかった、桜祐美香さんの生おっぱいなんだ!)
あんしん三次元女子の写真集を全部持っている宏之は知っていた。水着なしのバスタオル一枚とか手ブラとかそういう、現場のスタッフには全部見えてるんじゃ? 的ショットは皆無なことを。だからこの素肌を見るのは自分が絶対初めてだ。
「じ、じっと見つめないでください……」
無理です。
そう思う。
布で守られていたときの見かけとまったく同じに、たっぷりとしていて漲りきったおっぱいだった。見事な球体をしたふたつのたわわな乳果実からは見ているだけでもその量感がつたわってくる。
(す、すごい……)
日焼け対策は念入りだったはずだけれどやはり紫外線が強かったのか、ちょうどビキニのかたちに沿ってうっすらと焼けた跡ができていた。それがますます無防備な感じを増して見せている。
(さ、さわってみたい……重さを確かめてみたい。おっぱいの)
ゆっくりと手を近づけていく。
もし祐美香がさわられたくないのなら避けられるくらいにゆっくりと。
いきなり胸にさわるのはきらわれるかもと思い、まず両肩を手で抱いた。ビクンと身体を震わせたけれど、処女グラビアアイドルはそれ以上は抗わなかった。
(裸の祐美香さん、すごくきれいだ……)
そう思っているのに。そう口にしたいのに。なぜかそのことばは口から出てはくれなかった。
黙ったままで顔に顔を近づける。
くちびるとくちびるが触れ合う前に額と額が触れ合った。
「わ、わたし、やっぱり、へん? 胸とか、大きいから、みっともないのかな?」