ううん、と年下女子大生は首を横に振った。
「どうして今夜呼び出したと思ってるんですか?」
「話をするため……とか」
「それだけでいいんですか?」
「………」
「わたし、経験するなら、もう宏之くんしかいないと思ってる……それに、今がいちばんそのときなんじゃないかなって思ってる……わたしをもらってほしい」
「ほ、ほんとに?」
「うん。でもわたし、どうしていいかはわからない……ぜんぜん経験ないし」
グラビアアイドルの手や腕が小さく震えているのがわかった。
膝も震えているのではないだろうか。
祐美香は声を絞り出すように訊いてきた。
「宏之くんは、経験ある? こういうこと、初めて?」
「え……」
ええと。ええと。
祐美香さんの言っている、こういうこと、がなにを指すかにもよるよなと宏之は思う。童貞なのは間違いないんだけれど、荒花先生からあんなこともされたし、結姉ちゃんの大事なところは見せてもらったし、あんなにいっぱい出しちゃったし……。
「あのう、ごめん。実は、初めてとは、いえるような、いえないような。微妙かも」
「じゃあ今日は、わたし、宏之くんに全部任せて、いいかなあ……?」
声も震えていた。
「う、うん」
返事も震えてしまった。
急に身体が熱くなり、でも同時に背すじはぞくぞくと寒けみたいなものを感じた。
(ぼ、ぼくだって、祐美香さんをリードできるほどの経験なんてぜんぜんないけど)
でもこうなった以上はやるしかなかった。
よく見ると祐美香の顔も不安そうだ。
「大丈夫。ぼくと祐美香さんで気持ちをひとつに合わせれば、きっとうまくいくよ」
もう一度その手を包みこむように握ると祐美香は小さく、
「はい」
と言ってうなずいた。
こうして向かい合って立っていると思うのはやはり、祐美香さんはひとりのふつうの女の子なんだということだった。
ととのった鼻筋。ふっくらとしたくちびる。その清楚な雰囲気とはそぐわないほどに煽情的ともいえるおっぱいとお尻。でもシンプルな衣服に身を包んでいる今の姿からは過剰な色気などは感じられない。
宏之はそっとブラウスを脱がせていった。アイドルは逆らわず、袖から腕を抜いた。
「あっ、祐美香さん……これって」
「宏之くんが好きかなって思って」
ブラジャーの代わりに年下女子大生が身につけていたのは、黒のビキニトップだった。恥ずかしそうにスカートを降ろすと、その下も同じ黒水着だ。
均整の取れた肢体。細い首と細い鎖骨。肩紐に支えられているGカップおっぱいが黒い布をまん丸く漲らせている。のっぺりとしたお腹の真ん中に縦長の小さなおへそ。くびれた腰と豊かな張りの腰骨。下腹部を覆っているビキニの布きれ。
「そんなに見ちゃいや……」
じっと見つめていると祐美香がその身をよじらせる。
「祐美香さん、すごい」
「ほんとはね、菊池さんに聞いたんだ。宏之くんはこういうのがきっと好きだって」
(うっ。確かに)
あれは確か前の前の写真集だ。日暮れ時の砂浜で今と同じような黒ビキニで誘うようなポーズを取っている写真があったっけ。開き癖のついているページのひとつだ。
(ははあ)
昼間のあのひそひそはこのことだったのかな……。
「わたし、どう?」
「すごく似合ってる」
「わたし、どうすればいいのかな?」
「う、うん、じゃあ、坐ってくれるかな……」
(あせっちゃダメだ……)
きのうの結とのことを思いだす。黒ビキニの祐美香を見たことですでに勃起しきってはいたが……。
(自分の欲望のことは、一回忘れて……)
砂の上に腰を下ろした水着アイドルの肩を手でそっと包みこみ、顔を寄せる。
祐美香は逃げなかった。宏之がなにを望んでいるのかすぐに察してくれた。
くちびるとくちびるを、ぬくちゅ……と触れ合わせた。
ふっくらとした乙女のくちびるを吸ってから、少しずつキスの場所をずらしていく。なめらかな頬に口を押し当て、あごに移り、次に首すじに這わせる。
胸元のきめ細かい肌がほんのりと朱に染まってこまかな汗の粒を浮かべているのが見えた。肌の上に舌を這わせ、くちびるでそっと汗を吸い上げる。
「はぁ、はぁ、宏之くん……」
そうすることでいっそう祐美香の身体は汗にまみれていくようだった。舌で触れている皮膚はみるみるうちにねばつきを増してくる。なんだかすごく火照っているようだ。まるで口に触れたところから溶けているんじゃないかと思ってしまうほどに。
そのまま少しずつ口を降ろしていくと。
黒ビキニに包まれた豊かなボリュームの乳房があった。
布地の表面はきれいに張りきっている。ふたつの胸の球を守る黒の布地は月の光を反射して淡く光っていた。そして深い谷間が宏之の顔のすぐ近くにある。
一回深く息を吸いこんでからビキニの谷間に向かって顔を寄せていった。
「あっ、宏之、く、ん」
むにっ……頬の両側に同時にやわらかい感触。
(ゆ、祐美香さんのビキニのおっぱいに、顔を埋めてるんだ、ぼく……)
夢がかなった……。
グラビアアイドルの肩も、細い鎖骨も、乳房のふくらみも、ゆっくりと波打つように動いていた。処女の身体の中の血管が脈打っている音が聞こえた。
(ぼく、こうやって窒息して死ぬならそれでもいいかも……)
むっちりとしたふくらみに頬をいっぱいに押しつけたまま、顔を少しずつ右に動かしたり左に動かしたりしてみる。するとそのたびにビキニ越しでもおっぱいは弾力の強さを見せてくれる。