そういう結の顔もなんだか上気している。「女」というよりは「牝」を思わせるような匂いと雰囲気を振り撒いていた。
「い、いやでも、もうやめましょうよ、こんなこと」
「こんなこと? こんなこととはなによ、こんなこととは! ヒロくんのためを思ってしてあげてるのに!」
「いや、そ、それは、ありがたいですけど」
「逃がさないんだから」
色っぽく言われても。
「ヒロくんだけなんだからね。あたしがこんなことするの」
いや、そんな風に言われても。
「言うこと聞きなさい。ヒロくんにお風呂場で襲われそうになったって悲鳴上げるわよ。おかみさんには絶対誤解されるし、祐美香ちゃんも悲しむよ。いいの?」
「そんなあ……」
これじゃあこの前と同じ展開じゃないか。この人も絶対荒花先生の影響を受けてるんだ。あの人周りに悪い影響与えすぎだ!
(でも、と、だって、はいちばんきらいなことばだとか、そのうち言い出しそう)
結姉ちゃんのことは好きだから、はっきり言って、あの人にそこまで似てほしくはないんだけれど……。
「さあ、見てごらん。女がさあどうぞなんて、なかなかするものじゃあないんだぞ」
「う、うん……」
生唾をごくりと胃に流しこんでから顔を上げる。
黒々と密生している自分と比べると結の陰毛はずいぶん淡く、数も少なそうだった。一本一本も細く頼りなさげに見える。女の人がみんなそうなのか結がたまたまそうなのかは経験のない宏之にはわからないことだったけれど。
(こ、これが……おま○こ……ち、小さい)
想像以上に亀裂は短かった。ふだん衣服に隠れているからか下腹部の肌は真っ白。恥丘のふくらみも亀裂の左右の皮膚もほとんど色は変わっていない。そしてその中央にたてにほんの少しだけ色のついた二枚の肉びらがあった。
「じゃあ、中ね。見たいんでしょ?」
「なんでわかるの……?」
「そりゃあわかるわよ。顔に書いてある」
結の細い指が左右からそのぷにっとした肉びらの横をおさえ、ぱっくりと拡げる。
控え目な小陰唇の上の付け根あたりに粘膜と同じような淡い桃色の包皮があって、拡げられたことで小さな肉粒が顔をはっきりとのぞかせていた。クリトリスだろう。宏之の小指の先よりなお小さい。
そして肉びらの中身は新鮮な牡蠣を思わせるような白みの強いぷにぷにの肉粘膜だった。微細なへこみがあって真ん中に尿口らしいものが、その下に膣口らしいものがあり、その辺だけは少し桃色に色づいている。薄くまんべんなく粘液に濡れているようだった。それが汗なのかなにかの汁なのかも宏之にはわからない。
「舐めてみる?」
「え……?」
「免疫をつけるには、身体で覚えた方がいいと思うんだわ。それともヒロくんは女の子のアソコなんて舐められない? あたしのココはそんなにきたなく見える?」
「そ、そんなことは……ないです」
本音だった。本能を刺激してやまない光景が目の前にある。動物みたいだとは思ったけれど不潔には思えなかった。
「じゃあ、できるよね。いきなりじゃあヒロくんには刺激が強いかもしれないけど、こんなことそう何回もあたしもしてあげられないから」
小柄な年上女性が一歩足を前に出した。
宏之の方ももう抵抗はあきらめ、逆に顔を寄せていった。
(ぅむっ……)
むん、と生々しい匂いが鼻を刺す。くちびるに結の性器の粘膜が触れていた。牡の本能を刺激するようなほのかな潮の味。苦くはないけれど甘くもない、なんだかねばつく味。そっと舌で舐め上げると、しっとりと、まるで粘膜の方から青年の舌に吸いついてくるような反応があった。
少し強めに舌を這わせてみる。ちょん、と舌先で膣口を撫でると、
「あッ」
とまどったような短いうめきを洩らしておさななじみの腰が少しだけ逃げるように動いた。でもすぐにまた宏之の顔に向かって下腹部がぎゅっと押しつけられる。
「はン、ヒロくん、そう、そこ」
お姉さんも興奮しているのだろうか。牝臭がほのかに強くなり、舌に触れるねっとりとした湿りが増してきた。なんだか弾力も豊かになったような気がする。ひと舐めするごとに左右の小さな肉びらがぴくっぴくっと睫毛が震えるみたいに動いた。
「ヒロくん、アソコの味、少しは馴れた……?」
声も、はあ、はあ、という息に埋もれている。
「う、うん。でも結姉ちゃん、ぼく、ぼく、どうしよう。そろそろ無理かも……」
すぐ目の前に生々しい女陰。どこか魚介類を思わせるようなツンとした匂いが強くなってきている。初めて舌で触れてみたそのぷにぷにしたやわらかさもたまらない。
「我慢できないの?」
それだけでも気が遠くなってくるぐらいなのに、見上げたときの結の肢体のうつくしさといったらなかった。背もそんなに高くないし、足もモデルみたいに長いというわけではないけれど、上半身は汗に濡れたタンクトップ一枚をつけ下半身は生まれたままという二十代後半の女性の姿は、童貞の若者には刺激が強すぎた。
「挿れたい? いいんだよ。あたしの中で出してみる?」
「ゆ……祐美香さんを……裏切りたくない……」
意地でそう言った。
「けっこう強情なんだね。じゃあま、ヒロくんの童貞を奪うのはカンベンしてあげよう。でも、出したいのは確かだよね? 我慢できないんだよね?」