なまめく美人三姉妹 レオタードの誘惑

もし交際ということになれば、有意義で楽しい高校生活を送れるというものだ。

さっそく澪の住んでいる場所を聞きだそうとした卓郎は、真向かいのソファから伝わる殺気に背筋をゾクリとさせた。

友梨香は瞬きもせずに、ひたすら突き刺すような視線を向けている。

(そ、そうか。失恋したばかりだから、男と女が仲よさそうにしているところを見ただけでむかっ腹が立つのかも。は、話しづらいなぁ)

ひたすら肩を竦めるなか、杏奈がジュースとピザを手に戻ってくると、卓郎はホッと安堵の胸を撫で下ろした。

香ばしいチーズの匂いが鼻腔に忍びこみ、腹の虫がグーッと鳴り響く。

「どんどん食べて。お酒のつまみなら、たくさんあるし」

「い、いただきます!」

思わず舌なめずりをした卓郎は、手にした熱々のピザにかぶりついた。

あいだにポテトチップスやキスチョコを頬張り、ジュースで胃の中に流しこむ。

がっつく少年の様子を、杏奈や澪はびっくりした様子で見つめていた。

「あらら。よっぽど、お腹が空いていたのね」

「ひ、昼は抜きだったんで」

「ふふ。何だったら、泊まっていってもいいのよ」

「えっ!?」

「これから山を越えたら、ゆうに六時は過ぎちゃうでしょ? 部屋はあるんだから、泊まっていけばいいわ」

突然の申し出に、卓郎はピザを食べる手を止めた。

三人の美姉妹と、ひとつ屋根の下で寝食を共にする。

しかも彼女たちは、つい今しがた知り合ったばかりなのだ。

甘えてしまっていいのだろうかと思う一方、未知なる期待に胸がときめいた。

「澪、いいわよね。あなたが連れてきたお客様なんだし、これも何かの縁なんだから。友梨香も、かまわないでしょ?」

「私は、別にいいわよ」

澪がコクリと頷き、対照的に友梨香はヤケになっているのか、興味なさそうにそっぽを向く。

「この別荘ね、温泉を引いてるのよ」

「マ、マジですか!?」

「しかもお風呂だけは旅館並みに広いし、ゆったりできるわ」

長女がいいと言うなら、断る理由もない。

「すみません。それじゃ、よろしくお願いします」

改めてジュースとお酒で乾杯し、楽しい宴が始まる……はずだった。

友梨香は悪酔いしたのか、卓郎が澪と話をしようとすると、横から口を挟んでくる。

しまいには澪とのあいだに割って入り、くだを巻きはじめた。

「他に好きな子ができたって、どういうこと? ちゃんと答えなさいよ!」

「い、いや……僕は、友梨香さんと交際した覚えはないので」

「何ですって! あんたのほうから、つき合ってほしいって言ってきたんでしょ!? 何よ、その言いぐさは!!」

杏奈に助けを求めようとしても、彼女も酔いが回りはじめたのか、事の成り行きを楽しそうに見守るばかりだった。

(ひょ、ひょっとして、友梨香さんの相手をさせるために、俺を泊まらせようとしたんじゃ?)

かわいそうなのは澪で、ソファの端にちょこんと腰掛け、今にも泣きだしそうな顔をしている。

どうやら彼女は、姉二人のやることにはまったく逆らえないようだ。

宴会開始から一時間が過ぎた頃、杏奈がようやく友梨香をたしなめた。

「友梨香、いい加減にしなさい」

「だって……」

「だってじゃないでしょ。卓郎君だって、困ってるじゃない」

「私、寂しいんだもん。あぁン」

友梨香がギュッと抱きついてきた瞬間、胸の膨らみを押しつけられ、卓郎は心臓の鼓動を跳ねあがらせた。

彼女は三姉妹の中で一番スリムだったが、それでもパンケーキのようなふっくらとした弾力を感じる。

全身の血液が一瞬にして沸騰し、股間の逸物がズキンと疼いた。

「しょうがないわね、もう。卓郎君、先にお風呂に入っちゃって。澪、案内してあげなさい」

これ幸いとばかり、卓郎は脇に置いてあったデイパックを手に取り、澪とともにリビングをあとにした。

「卓郎君、ホントにごめんね。友梨香お姉ちゃん、いつもはあんなんじゃないんだけど……」

「あはは。全然大丈夫だから、そんなに気にしないで」

よほど責任を感じているのか、美少女の顔色は冴えず、それ以降は浴室に到着するまで口を開くことはなかった。

(まあ、いいさ。明日の朝になれば、杏奈さんも友梨香さんも酔いは醒めているだろうし、ゆっくり話す時間はあるはずだ)

卓郎が納得した直後、木造の引き戸が開かれ、畳三畳ほどの脱衣場が目の前に現れた。

「卓郎君、タオルは持ってる?」

「うん、持ってるよ。バッグの中に替えの下着もあるし」

「そう……ホントにごめんなさい」

「だから大丈夫だって。そんなに謝られたら困っちゃうよ」

最後まで笑顔を見せず、澪は頭をペコンと下げたあと、引き戸をゆっくりと閉めた。

(澪ちゃんは、姉妹の中で一番性格がよさそうだな。末っ子のせいか、おっとりしていて控えめだし)

何にしても、美少女との運命的な出逢いを無駄にしたくない。

(明日は、絶対に連絡先を聞くぞ!)

卓郎は固い決意を秘め、ほくそ笑みながら服を脱ぎ捨てていった。

湯煙がもうもうと立ちこめる湯船の中で、卓郎は悦に浸っていた。

「ああ、大きなお風呂で、本当に気持ちがいいや」

浴室内は総ひのき造りで、壁から突きでた木の筒から、源泉からの温泉が湯船に注ぎこまれている。大きな窓の向こうには、夜空にちりばめられた星が慎ましく瞬き、まるで心が洗われるかのような光景を見せつけていた。