「卓郎君、練習中に何度もその子たちの身体を見てたから」
「……嘘っ」
澪はやや目を伏せ、泣きそうな顔をしている。
それは違うと言いたかったが、身に覚えがあるだけに、卓郎は冷や汗を掻きながらだんまりを決めこむしかなかった。
「だからね、友梨香と相談して決めたの」
「……何を?」
「卓郎君が浮気しないように、私たちがちゃんと教育してあげようって」
杏奈の言葉に、卓郎は背筋をゾクリとさせた。
(な、なんか……おかしな雰囲気になってきたぞ)
この場から逃げだしたい心境に駆られたものの、蛇に睨まれた蛙のように、身が竦んで動けない。
「教育って……どういうこと? ま、まさか……エッチなこと?」
「あら、わかってるじゃない。澪、清瀬君を満足させてあげられる?」
「ううん、全然……自信ない」
「でしょ? それだと、この子が他の女の子に走る可能性は十分あるわ」
「そんなの……やだ。私、どうしたらいいの?」
「だから、私たちがレクチャーしてあげるの。かわいい妹のためだもの。仕方がないわ」
「女の怖さも、卓郎君にはたっぷりと教えてあげないとね」
絶対に間違っていると、卓郎は声を大にして叫びたかった。
確かに自分はスケベな人間だったが、杏奈や友梨香には自ら迫っていない。
彼女たちのほうから、誘いをかけてきたのである。
色気たっぷりの豊満女教師と、積極的な小悪魔美少女を前にして、心動かされない男はいないだろう。
好きな女の子を大切にしたいという気持ちとは、根本的に違うのだ。
もちろん純粋で人生経験未熟な澪に、男の心理などわかろうはずもない。
今ではすっかり丸めこまれてしまったようで、姉たちに縋りつくような視線を向けていた。
「とりあえず、澪はとなりの部屋で、これに着替えてきなさい」
「うんっ」
杏奈が、茶色の紙袋を澪に手渡す。
(何だ? あの中には何が入ってるんだ?)
不安を募らせた卓郎は、早くも脇の下に汗をじっとりと滲ませていた。
美少女は言われるがまま、すっくと立ちあがり、和室を足早に出ていく。
妹の後ろ姿を見送った姉二人が、顔を見合わせてクスリと笑う光景を、卓郎ははっきりと目にした。
杏奈と友梨香はすぐさま畳から腰を上げ、服を脱ぎ捨てていく。
(おいおい、いったい何をするつもりなんだよぉ)
細目で事の成り行きを見守っていた卓郎は、徐々に唇の端を震わせていった。
(あ、ああぁぁっ!?)
彼女たちは下着を着けておらず、代わりに白いレオタードを身にまとっていた。
大きく抉れた胸元、ウエストまで切れこんだ超ハイレグ仕様。
しかも布地はスケスケで、ピンク色の乳首や乳暈が透けて見えている。
明らかに既製品のレオタードではなく、アダルトグッズのコスチュームに間違いなかった。
いやが上にも、バストの谷間や恥丘の膨らみに視線が向いてしまう。
「杏奈お姉ちゃん。相変わらず、お尻がおっきいね」
「ふふっ。久しぶりに、顔面騎乗をしようかしら」
杏奈がくるりと後ろを向き、たわわに実ったヒップがぶるるんと揺れる。
タオルの下で、すっかり萎えていた愚息がピクンと反応した。
(あ、Tバックだ! お尻が丸見えじゃないか!?)
形のいい、まろやかな白臀が瞳を射抜く。
レオタードは背中のほうも大きく抉れ、シミの一点もない美しい肌を存分に見せつけていた。
「このレオタード、股布のところがホックで着脱できるようになってるの」
「卓郎君、レオタードが好きだから、鼻血を出しちゃうかもね」
言われなくても、目をぱっちりと開け、心ゆくまで眼福にあずかりたかった。
(ああっ、間近でもっとちゃんと見たいよ。ま、待てよ……)
焦れったい思いに駆られながらも、卓郎は心臓をドキリとさせた。
澪に手渡された紙袋の中にも、ひょっとして淫らなコスチュームが入っているのではないか。
(い、いや……たとえそうだとしても、真面目で大人しい彼女が、あんなものを着るはずがないよ)
とにもかくにも、ここは逃げだしたほうがよさそうだ。
杏奈と友梨香が着こなし具合をチェックしている合間に、卓郎は音を立てないように身体を反転させ、四つん這いの体勢で部屋の出入り口に這っていった。
タオルがはだけ落ち、下腹部は丸出しだったが、もはや格好は気にしていられない。
「ちょっと、どこに行くつもり?」
「はひっ!」
襖まであと数センチのところで、尻の下から杏奈に肉棒を握りこまれ、卓郎は首を絞められたニワトリのような声を放った。
「寝たフリして、私たちの話を聞いていたのね?」
「は、離してください」
「そうはいかないわ」
前進を試みた卓郎の肩を、今度は友梨香ががっちりと押さえこむ。
「お、おかしいですよ。こんなの!」
「大きな声を出さないの。澪に聞こえちゃうでしょ?」
「な、何を企んでるんですか?」
「ふふっ。私もお姉ちゃんも、卓郎君のおチンチンが忘れられないの。新しい彼氏ができるまで、ちょっとのあいだ、相手をしてくれればいいんだから」
「そ、それが目的だったんですか?」
杏奈が背後から覆い被さるように顔を近づけ、耳元に甘い吐息を吹きかける。
卓郎はあまりのくすぐったさに、背中をゾクリとさせた。
「もちろん、澪のためでもあるわ。あの子、ものすごく純情でしょ? かわいい妹が傷つくところは見たくないもの」