(いよいよ……澪ちゃんと二人きりになれるんだ)
股間に血液が集まりだし、肉槍は七分勃ちの状態。歩きにくいこと、このうえなかった。
「ここが私の部屋よ。となりが友梨香お姉ちゃん、真向かいが杏奈お姉ちゃんの部屋なの」
澪の部屋は十畳ほどの広さがあり、整理整頓された室内には塵ひとつ落ちていなかった。
薄桃色のカーテンにカーペット。ベッドにはクマのぬいぐるみ、チェストの上にはガーリーな小物類がいくつも置かれていた。
いかにも女の子らしい部屋には、甘酸っぱい匂いが充満している。
胸の奥をモヤモヤさせた卓郎は、気持ちを落ち着かせようと、小さな咳払いをした。
「何か飲む?」
「え? う、うん」
部屋の端、ベッドの横に丸テーブルと二脚の椅子が置かれている。
テーブルには紅茶とジュース、そしてティーカップやグラスが用意されていた。
「じゃ、ジュースがいいかな」
「ちょっと待ってて」
澪はペットボトルを手に取り、グラスにジュースを注いでいく。
卓郎は、その姿を突っ立ったまま見つめていた。
「どうしたの? 座って」
「あ、いや……その……ベ、ベッドの上に……座ってもいいかな?」
椅子に腰掛け、真向かいの体勢で話すのも味気ない。
上目遣いで懇願すると、澪は目元を紅潮させながら目を伏せた。
「……いいけど、ちょっと恥ずかしいな」
「あ、無理にとは言わないけど……」
「ううん、いいの。座って」
スプリングのきいた、ふかふかのベッドに腰を下ろしたとたん、淫らな妄想が脳裏を駆け巡る。
(澪ちゃん、毎日このベッドで寝てるんだよな)
果たして、今日は愛を確かめ合う場所となるのだろうか。
「はい、ジュース」
「あ……ありがとう。澪ちゃんは?」
「私はさっき紅茶を飲んだし、喉は渇いてないから」
澪はそう言いながら、となりに腰掛けてくる。
胸をキュンと締めつけられた卓郎は、ジュースをひと口飲んだだけで、グラスをテーブルへと戻した。
沈黙の時間が流れ、緊張感に押しつぶされそうになる。
もう一度、愛の告白をするべきか。
それとも肩を抱き寄せ、キスをするべきか。
目をキョトキョトと泳がせた卓郎は、勉強机の上に置かれた写真立てに視線をとめた。
中学時代のものだろうか、レオタード姿でトロフィーを手にした澪が満面の笑みをたたえている。
「あの写真は?」
「え? ああ、あれ。ジュニアの大会に出て、優勝したときの写真なの」
「あ、そうか、澪ちゃんは体操クラブに入っていたんだっけ」
「本当は体操の選手になりたかったんだけど、私には才能がなかったみたい。それで、高校に入ってから新体操のほうに転向したの。お姉ちゃんたちもやってたしね」
美少女は心の底から体操競技が好きなようで、目をキラキラさせている。
澪に近づきたい、交際したいという思いだけで入部を決めた自分が恥ずかしい。
しかもこのときの卓郎は、写真の中のレオタードに興味津々の視線を向けていた。
(中学一年ぐらいかな? この頃は、身体の線がほっそりしていたんだな。ふっくらしたボディもいいけど、これはこれで初々しくていいかも)
知らず知らずのうちに、いやらしい笑みを浮かべていたのかもしれない。
澪はじっと見据えたあと、甘く睨みつけてきた。
「卓郎君、目がエッチ」
「え?」
「そんなにレオタードが好きなの?」
「き、嫌いな男はいないと思うよ。ひょっとして、レオタード姿で迎えてくれるんじゃないかと期待しちゃったりして」
おどけたとたん、少女はやや眉を顰め、侮蔑の眼差しを向けてくる。
「ホントにエッチなんだから」
一瞬にして和やかな雰囲気に変わり、どちらからともなく笑いが洩れた。
ここぞとばかりに肩をすり寄せ、甘えた声で反論する。
「澪ちゃんだってエッチでしょ? 俺のあそこを触ったりして」
倉庫室での出来事を思いだしたのか、澪の顔がみるみる紅潮していく。
「今日は……見せてくれるんだよね?」
「だ、誰も……そんなこと言ってないもん」
「好きだから、愛しているから。ねっ?」
「恥ずかしいよ……あ、ンうっ」
唇をサッと奪い、胸の膨らみをやんわりと揉みしだく。
腕に込められた力が抜け落ち、少女はゆっくりと瞼を閉じていった。
(ああ、やっぱりキスって最高かも)
甘いキッスは、女の心と身体を蕩けさせる効果があるのかもしれない。
卓郎はさくらんぼのような唇を貪りながら、空いている手で背中のファスナーを下ろしていった。
「あ……ふうっ」
ワンピースを肩から脱がしていくと、熱風のような吐息が口中に吹きこまれる。
視界になめらかな白い肌が入った瞬間、卓郎は心の中で歓喜の雄叫びをあげた。
(ああ、きれい! まるで淡雪みたいにさらさらだ)
杏奈の肌も美しかったが、間近で目にすると、やはりきめの細かさが違う。
艶やかな肌質はあまりにも神々しく、見る者をうっとりとさせる輝きを放っていた。
小鳥が餌をついばむようなキスを繰り返し、徐々に薄い水色の布地を下ろしていく。
「だ……だめっ」
唇を離した澪は、子供をメッとしかる母親のような眼差しを向けてきた。
それでも瞳はしっとりと濡れ、顔は首筋まで赤みが差している。
「澪ちゃん……好きだよ」
今度は真剣な表情で告げると、美少女も真顔になり、やや困惑げに俯いた。
「脱がすからね。お尻を上げて」