幼馴染みと学園のアイドル 女子高生たちの恥じらいの放課後

いまだ寝起きの表情を装っている芳彦を、君江はせっつくように促してくる。

芳彦はベッドから下り立つと、君江に頭を下げ、そのまま出口へと向かった。

莉奈の側にまだいたいという気持ちはあったのだが、もちろんそんなことはできるはずもない。

扉の前で立ち止まり、莉奈のいるベッドを心配そうに振り返ると、君江は腰に両手を当て、芳彦をまだじっと見つめていた。

「早く行きなさい」

「は、はい」

芳彦は腋の下からドッと汗を噴き出させると、後ろ髪を引かれる思いで保健室を後にしたのである。

その日の夜、芳彦は莉奈の裸体を思い出し、オナニーを三回も繰り返した。

夏美の家にやって来てから、初めての自慰行為である。

芳彦は下校したあと、いったん自宅アパートへと戻り、莉奈の写真を持ち出してきた。

マドンナのブロマイドは、写真部の連中が隠し撮りをし、男子生徒の中で出回っていたが、水着姿の写真などは一枚数千円で取引されていたようだ。

芳彦も友人の伝手を利用し、莉奈の写真を十枚ほど手に入れた。

このブロマイドを見ながら、これまで何度オナニーをしたことだろう。最近はさすがに新鮮さが薄れ、その回数も減っていたが、今日はまったく違う。

芳彦はアパートから持ってきた写真を、布団の上にずらっと並べた。

脳裏の中には、いまだ莉奈のヌード姿がはっきりと焼きついている。

(もし、あの裸の写真が撮れていたとしたら、ひょっとして数万、いや下手をしたら十万円以上の値がつくかも)

もちろん金をいくら積まれようが、自分だけのお宝写真を売るつもりなど毛頭ない。

そんなことを思いながら、芳彦は嬉々とした表情でしなる怒張をしごき上げていった。

後処理に使ったティッシュはビニール袋に入れ、夜中にこっそりと捨てにいく羽目になったが……。

翌日、芳彦は終始さっぱりとした表情で授業を受けていた。

莉奈の秘密を独り占めしたようで、どこか優越感を覚えてしまう。そんな芳彦に、夏美は訝しげな視線を浴びせるばかりだった。

「何よ。朝からずっとニヤニヤして気持ち悪いわね」

「夏美には関係ないよ」

「話してごらんなさいよ」

「やだよ」

そう答えながら、芳彦はあたりをチラチラと見渡した。

夏美の家にやっかいになっていることは、クラスメートたちには内緒にしていたのだが、どうやら夏美が吹聴したようで、どうにもやりにくい。

それでなくても、二人の関係は仲が良さそうに見えるらしく、新学期が始まってからは、からかいの言葉もずいぶんと受けるようになっていた。

「おっ、夫婦喧嘩か?」

「相変わらず、仲がいいわね」

放課後、クラブ活動へ向かうクラスメートたちからひやかされ、芳彦は顔を真っ赤にさせた。

「ぼ、僕もクラブに行くから!」

「あ、ちょっと、芳彦」

夏美の呼びかけを無視し、芳彦は逃げるように教室を後にした。

一つ屋根の下に住むようになってから、夏美は何かと芳彦に突っかかってくる。

(まったく、なんで夏美のやつ、いちいち僕に絡んでくるんだろう?)

そう考えながらも、芳彦は莉奈のことを思い出し、またもや口角を上げた。

(ひょっとして、莉奈先輩も来てないかな?)

美術部は週二回、火曜日と木曜日が活動日で、本来土曜日の今日は部活のない日だったのだが、夏休みの課題であった絵が来週までの提出ということで、それまでに仕上げなければならない。

莉奈が来ていることを期待した芳彦は、美術室の扉をそっと開けた。

教室内はし~んと静まり返り、人影はまったくない。芳彦は苦笑しながら、ゆっくりと室内へ歩を進めた。

(来ているわけないか。今日は土曜日だし。莉奈先輩なら、ちゃんと夏休み中に仕上げているはずだもんな)

夏休みに入ってからの五日間、芳彦は毎日学校へ来て、課題の絵を仕上げていた。その直後にバイトを始めたので、最後まで完成させてはいなかったのである。

(本当は夏休みの後半に仕上げるつもりだったんだけど、結局終了間際までバイトしちゃったもんな。でも残りはあとちょっとだけだし、きっと今日中に終わるはずだ。課題が抽象画で良かった。ある意味、楽といえば楽だもんな)

課題の絵は、準備室に置いてある。芳彦は美術室の奥にある扉へ歩み進むと、ドアノブを回したところで眉を顰めた。

(何だろう?)

準備室の中から、奇妙な音が聞こえてくる。まるで子猫のような、子供が啜り泣くような声だ。

怪訝な顔つきをした芳彦だったが、準備室に誰かがいるのは間違いない。

息を潜め、音を立てないように扉を開けた芳彦は、次の瞬間、全身を硬直させた。

準備室の中央には大きな机が設置され、窓際には講師用の長机と回転椅子が置かれている。

その回転椅子の上に一人の女生徒が腰掛け、スカートをたくし上げながら股間に手を潜り込ませていたのである。

油絵の具の匂いとともに、女生徒の身体から熱気が漂ってくる。

芳彦は驚愕すると同時に、慌てて扉を閉めようとしたが、その手が一瞬にして止まった。

少女は芳彦の位置からやや斜めの体勢をとっており、俯いているので、顔がよくわからなかったが、背中まで伸びた艶のある長い黒髪には見覚えがある。

(ま、まさか? 莉奈先輩!)

芳彦はドアを閉めることも忘れ、準備室の入り口に呆然と立ち尽くしていた。