「私のは見たくせに。死ぬほど恥ずかしかったんだから」
莉奈がしくしく泣き出すと、芳彦は途方に暮れた。
(僕を家まで呼んだのは、それが目的だったのか。僕は美術部の後輩だし、恥ずかしいシーンを見られたということで、きっと頼みやすかったのかもしれないな)
莉奈の漫画に対する情熱は、それほど強いという見方もできる。
(仕方がないか)
高校入学時からずっと憧れてきた相手だけに、やはり無下には断れない。芳彦は小さな溜め息をついたあと、決心を固めた。
「わかりました。だから、もう泣かないでください。服は……全部脱いだほうがいいですよね?」
莉奈は手の甲で涙を拭い、コクリと頷く。
芳彦はなるべく窓の外から見えない場所へ移動すると、後ろを向き、服をゆっくりと脱ぎはじめた。
(あぁ。まさか莉奈先輩の前でヌードを晒すことになるなんて。なんてシチュエーションなんだよ。やっぱり抵抗あるなぁ)
シャツとハーフパンツを脱ぎ捨て、残るはあとブリーフ一枚。
後ろをチラリと振り返ると、莉奈はすっかり平静さを取り戻し、いつの間にか椅子に座り、スケッチブックを手にしながら真剣な眼差しを送っていた。
(ええい。ままよ!)
パンツの縁に手をかけ、一気に引き下ろす。そして股間を両手で隠したまま、その場で棒立ちになった。
すでにこの時点で顔は真っ赤、凄まじい羞恥心が込み上げてくる。
「あ、あの……ぬ、脱ぎましたけど」
「前を向いて」
先ほどまで感情の起伏を見せていた莉奈の声は、すっかり抑揚がなくなり、事務的な口調になっている。
漫画家としての、探究心モードに切り替わっているのかもしれない。
芳彦が身体を反転させると、莉奈はやや怒気を含んだ口調で言い放った。
「手をどけて」
いざとなると、さすがに躊躇してしまう。芳彦は唇を噛み締めると、そろりそろりと股間から両手を外していった。
(は、恥ずかしいよぉ!)
身を八つ裂きにされそうな羞恥を覚えながら、莉奈にチラリと視線を走らせると、彼女はペニスを凝視しながら、長い睫毛をピクッと震わせた。
(あぁ、見られてる。稲垣先輩に、僕のおチンチンを見られてる!)
男の証は萎靡したままだったが、この状況だけで、胸がモヤモヤしてくる。
莉奈は芳彦の股間に目線を留めたまま、か細い声で問いかけた。
「これって……ひょっとして、包茎なの?」
「あ、あの……一応仮性包茎なんです」
ペニスの包皮は、亀頭を半分程度まで包み込んでいる。まだしっかりと矯正されていないのか、下着の中で包皮は元に戻っていたようだ。
顔を紅潮させながら答えると、莉奈は感嘆の溜め息を放った。
「すごいわ。こんなものを見られるなんて。包茎っていったいどうなってるのか、ずっと知りたかったの。これで面白い漫画が描けそうだわ」
莉奈はまるで独り言のように呟き、ガタゴトと椅子を引きながらさらに近づいてくる。
マドンナとの距離は、わずか三十センチ。ぱっちりとした目が、芳彦の股間に注がれる。
(あぁ、嘘っ!)
神社から莉奈の家まで走ってきただけに、ペニスから汗臭い匂いが漂っているのではないか、芳彦は思わずギクリとした。
それでも莉奈に逸物を注視されていると、淫らな妄想を思い浮かべてしまう。
(僕が腰を突き出せば、おチンチンが唇に触れちゃう。あの口でしゃぶってもらったら、やっぱり気持ちがいいんだろうな)
人気絶頂のアイドルさえ霞んでしまうような顔立ち、黒目がちの瞳、形のいいツヤツヤした唇。
その容貌を眼下に見下ろしたとたん、芳彦のペニスには硬い芯がゆっくりと注入されていった。
2
莉奈は真剣な表情でペニスを観察し、スケッチブックにデッサンをしていった。
(ホントに莉奈先輩に見られちゃってるんだ。しかもこんな間近で。僕、夢でも見ているんじゃないだろうか?)
莉奈は時々鉛筆の手を止め、前屈みになりながら、ペニスを穴が空くのではないかと思えるほど注視している。
芳しい息が陰茎にまとわりつき、芳彦はそのたびに瞼をギュッと閉じ、懸命に気を逸らした。
「ねえ、芳彦君」
「は、はい」
「変なこと……聞いてもいい?」
「ど、どうぞ」
「あの……その。これって……剥けるんだよね」
莉奈は頬を林檎のように真っ赤にしながら、恥ずかしそうに問いかける。芳彦は、その表情に胸をときめかせながら答えた。
「え、ええ。仮性包茎ですから」
「む、剥いてくれる?」
「え?」
「そっちのほうも……デッサンしておきたいの」
莉奈は、肩をもじもじさせながら懇願してくる。敏感になっている逸物は、自身の手で触れても勃起しそうな状態だけに、芳彦は躊躇った。
(そっと触れば大丈夫だとは思うけど、でもさっきから、どうにもあそこがムズムズしてるんだよな)
うだうだ考えていても仕方がない。芳彦はなるべく刺激を与えないように、慎重に包皮を剥いていった。
だが亀頭を覆っていた包皮が反転すると、雁首に甘美な微電流が走ってしまう。慌てた芳彦が顔を上げると、その視線の先には好奇心に満ちた表情を見せる、莉奈の愛くるしい顔が迫っていた。
(あ、あ。だめだ)
自分の意思とは無関係に、ペニスがグングンと鎌首を擡げていく。必死に気を逸らそうと試みるも、一度タガの外れた性欲を自制することはできなかった。