(あぁ。ちょっと待って。こんな所で!?)
なんとか鎮めようと試みても、一度火のついた性欲は収まらない。
むっくりとマストを張っていく股間を恨めしそうに見下ろしながら、芳彦が顔を真っ赤にさせていると、夏美はすぐにその異変を感じ取った。
「芳彦、どうしたの?」
「い、いや。別に」
夏美が下から顔を覗き込んでくる。その視線が腰をやや引いた芳彦の下腹部に移ると、夏美は含み笑いを洩らした。
「やだ、芳彦ったら。またエッチなこと考えてるの?」
「ち、違うよ。こ、これは男の生理だよ」
「ふうん。また男の生理。いったいどんな生理なのよ」
意地悪い口ぶりで、夏美はちょんちょんとバストで腕を突いてくる。芳彦が下唇を軽く噛み締めると、夏美は耳元で甘く囁いた。
「ねえ、ひょっとして私に何かしてほしいのかな?」
「え?」
浴室で受けた手コキがすぐさま脳裏に甦り、ペニスがズキンと脈打つ。
(し、してほしい。必死に頼み込めば、今ならしてくれるんじゃ)
そう思いながらも、男の意地なのか、相手が幼馴染みであるという見栄からなのか、芳彦は心とは裏腹の言葉を放っていた。
「べ、別に何もしてほしくないよ」
それまでニコニコしていた夏美が、ピンク色の唇をツンと尖らせる。
「ふん。冗談よ。私だって、そんな気は毛頭ないんだから」
(機嫌がいいかと思うと、すぐにつむじを曲げるんだから。まるで山の天気みたいだ。このままだと面倒だし、すぐにフォローしとかないと)
「そうだ。お腹空かない? 何か食べようよ」
芳彦は屋台の出店で焼きそばを二つ買い、そのうちの一つを手渡すと、夏美は仕方なさそうに箸をつけた。
「どう? おいしい?」
「あれも買って」
夏美は、あんず飴の売っている屋台を指差している。
(夏美のほうが誘ったのに。なんで僕が金を払わなきゃいけないんだ?)
「早く」
「はいはい」
言われるがまま、あんず飴を買って戻ってくると、夏美はご機嫌になったのか、ようやく笑顔を見せる。
芳彦はホッとしながら、夏美とともに縁日デートを過ごした。
おみくじを引き、風鈴を買い、神社の隅で催されている植木市を見て回る。
やはり夏美の容姿は人目を引くようで、通り過ぎる男たちは女の子を連れているカップルも含め、みんなが羨望の眼差しで振り返った。
こうなると、自然と優越感を覚えてしまう。芳彦はいつの間にか、心をウキウキと弾ませていた。
(なんだか楽しいぞ。まさか、夏美相手にこんな気持ちになるなんて。そういえば、夏休みはバイトばかりで女の子とも知り合えなかったし、デートはおろか、何一つ面白いことがなかったもんなぁ)
遅れてやって来た夏休みのイベントを満喫するかのように、芳彦は夏美と過ごす時間を楽しんでいたが、ふと莉奈との約束を思い出した。
(あっ。今、何時だ)
ズボンのポケットから携帯を取り出すと、すでに午後二時を五分ほど回っている。
「夏美……あの」
「ん? どうしたの?」
夏美の満足そうな顔を見ていると、何とも切り出しづらかったが、芳彦は苦渋の顔つきで言い放った。
「や、約束の時間なんだ」
夏美の顔から、徐々に笑みが消えていく。
「行くの?」
てっきり憤怒の情をぶつけてくるだろうと思われた夏美が、眉根を寄せ、寂しそうに問いかけてくる。
(あぁぁ。なんでこんな時に限って、そんな顔するんだよぉ)
後ろ髪を引かれる思いはあったが、約束を破るわけにはいかない。
「ごめん!」
芳彦は頭をペコリと下げると、その場から逃げるように走り去った。
夏美は無言のまま、その場に立ち尽くしているようだ。芳彦の胸が、なぜかチクリと痛んだ。
第五章 美少女の恥肉と包茎いじり
1
莉奈の家は藤美神社からそう離れておらず、およそ五分ほどで到着した。
敷地面積はゆうに百坪はあるだろうか、白いモルタル調の二階建ての御殿のような家に、庭の隅にも三角形の白い屋根が付いた小さな建物が建っている。
額に汗粒を浮かばせた芳彦は、インターホンを押し、そのまま息を整えた。
『はい』
鈴を転がしたような声は、間違いなく莉奈だ。芳彦は大きな息を吐いたあと、落ち着いた口調で答えた。
「あ、三上です。ごめんなさい。ちょっと遅れちゃって」
インターホンは何も答えず、代わりに玄関の扉を開ける音が聞こえてくる。
芳彦が身構えると、お嬢様らしい白いワンピースに身を包んだ莉奈が姿を見せた。
風になびく黒髪、揺れる瞳、可憐な唇は、やはり絶世の美少女だと認識せざるを得ない。
莉奈が近づいてくると、芳彦は緊張から全身を強ばらせた。
「来ないのかと思ったわ」
「そんな。約束は絶対に破らないです。遅れたのは悪かったですけど」
莉奈は儚そうな微笑を浮かべ、ヨーロピアンスタイルの門扉を開け放つ。そして中へと芳彦を導いた。
(やっぱり広いなぁ)
庭には様々な種類の庭木が植えられ、手入れの行き届いた美しいガーデニングが広がっており、芳彦はただ目をぱちくりとさせるばかりだった。
こんな裕福な家庭で生まれ育ったら、きっと人生観も変わるに違いない。
そう思いながら豪邸を見上げていると、莉奈が手招きをしながら声をかけてくる。
「三上君、こっちに来て」
莉奈は玄関には向かわず、敷地内の角にある白い屋根の建物へと歩み進み、芳彦は眉を顰めながらその後に続いた。