夏美と芳彦は、今までに経験したことのない未知の世界へ飛び立とうとしていた。
上半身を起こし、子宮に届かんとばかりに肉茎を撃ち込む。全身の筋肉が蕩けるような恍惚感に包み込まれる。
「イク! イクぅぅぅぅぅぅぅう!」
「私もイ……クぅぅぅぅう」
二人の嬌声が響き渡り、一瞬動きが止まったかと思うと、二つの影は再びゆっくりと重なり合っていった。
しーんと静まり返った部屋で、芳彦と夏美はいつまでも抱き合っていた。
夏美はこれまでとは打って変わり、芳彦の胸に顔を埋めながら、まるで別人のような恥じらいを見せている。
シーツに赤いシミが付着しているところを見ると、やはり夏美は処女だったのだろう。
「初めてでイッちゃったの?」
意地悪く問いかけると、夏美は腕を軽く抓り上げた。
その仕草も素直にかわいいなと思う芳彦だったが、夏美はすかさず小さな溜め息をつく。
「悔しい」
「え?」
「芳彦が童貞のままで結ばれたかったのに」
「ご、ごめん。僕がもっと早く、夏美の気持ちに気づいていればよかったんだけど」
「あんたって、ホントに鈍感なんだもン」
「夏美だって……あまりにもひねくれてるから、気がつかなかったんだよ」
「私はちゃんと反省したもの。君江叔母さんに相談したら、もっと素直にならなきゃダメだって、アドバイスを受けたんだから」
「あ」
芳彦は昨日、夏美が保健室から出てくる光景を思い出した。おそらくそのとき、悩み事のすべてを君江に話していたのだろう。
(それで君江さんは、もう二度と誘わないって言ってたのか。相手が姪っ子じゃ、確かに手は出せないよな)
今度は芳彦が小さな溜め息をついた。
本音を言えば、成熟した君江の肉体も、まだ初々しさを残す莉奈の女体にも未練がある。
(うまく立ち回ることができれば、酒池肉林の毎日を送ることも可能なんじゃないか?)
その光景を思い浮かべると、ペニスがズキッと疼いてくる。だが芳彦のいかがわしい思考は、夏美の次の言葉によって中断された。
「でも……昨日今日童貞を喪失したにしちゃ、やけにうますぎるよね」
「へ?」
「だって、おかしいじゃない。一回しか経験のない人が、こんなに手際よくバージンの女の子をリードできるなんて」
「い、いや。それは……」
芳彦が視線を逸らしたことで、夏美は何かしらの確信を得たようだ。すぐさま頭を起こし、柳眉を逆立てながらキッと睨みつけた。
「誰に童貞を捧げたの? 何人としたの? ちゃんと全部白状しなさいよ!」
まさか夏美の叔母相手に童貞を捨て、女の身体を一から教わり、そのあともエッチしていたとは、口が裂けても言えない。
芳彦がそっぽを向くと、夏美は上半身をガバッと起こした。
「いいわ。白状するまで、何度でも搾り取っちゃうんだから」
「そ、そんな」
「当たり前でしょ。芳彦は、もう私だけのものなんだから。浮気は絶対に許さないからね」
(だめだ。この調子じゃ、酒池肉林の世界なんて夢のまた夢だぞ)
夏美は萎靡状態のペニスを鷲掴み、芳彦をベッドから強引に立たせる。
「ちょ、ちょっと。夏美、何するの?」
「シャワーを浴びてから、白状させるの」
「で、でも、時間ももう遅いし、早く帰らないと百合子さんが心配しちゃうよ」
「いいの。明日は創立記念日で休みだし、君江叔母さんの家に泊まっていくって、さっき電話しといたもの。叔母さんもがんばれって、応援してくれたんだから」
「えぇぇぇぇ? き、君江さんは、僕たちがこの部屋に二人でいることを知ってるの? で、でも……もし僕が声をかけなかったら?」
「そしたら、無理やり押しかけてたわよ。当然でしょ!」
夏美はふだんどおりのキャラを、すっかりと取り戻している。
芳彦は愕然とした表情のままペニスを引っ張られ、無理やり浴室へと連れていかれた。
「やだ。おチンチンが血で真っ赤。たっぷりと洗ってあげる。でも、この前みたいに出さないでよ」
夏美は浴室での出来事を思い出したのか、手のひらにボディシャンプーを泡立てさせながらほくそ笑む。
(あ~あ。もし夏美と結婚したら、きっとこの調子で尻に敷かれることになるんだろうな)
芳彦はそう思いながらも、ペニスに指を伸ばしてくる夏美に苦笑混じりの笑みを浮かべるのだった。