幼馴染みと学園のアイドル 女子高生たちの恥じらいの放課後

その日の夜、芳彦は夕食を済ませると玄関口へと向かった。

明後日の授業で使う、日本史の教科書を持ってきていないことに気づいたのだ。

夏美が後を追うように、すぐさまリビングから出てくる。

「芳彦、どこへ行くの?」

「うん、アパート。教科書を忘れてきちゃったみたいで」

「もう遅いし、一人で大丈夫? 私がついていってあげようか?」

夏美がそう言いながら口元に笑みを浮かべ、またからかわれていると思った芳彦はプクッと頬を膨らませた。

「別に遅くないでしょ! 七時過ぎなんだから」

まだ何か言いたそうな夏美を残し、芳彦は玄関の扉を開けた。

(まったく、夏美のやつ! まるで僕を子供扱いなんだから)

憤然とした表情で夜道を歩いていた芳彦だったが、脳裏には放課後の出来事が甦ってくる。

憧れのマドンナのふしだらな行為、熱い溜め息、快美に歪む顔。あのときの光景を思い出すと、胸が締めつけられるように苦しくなってくる。

(それにしても莉奈先輩、なんであんな場所でオナニーなんかしてたんだろう?)

莉奈が準備室を出ていったあと、芳彦はしばらく呆然としていた。

下腹部は依然とモヤモヤし、完全勃起していたペニスがズキズキと熱い脈動を打っていたのは紛れもない事実である。

芳彦はオナニーしたい衝動を自制したが、それは莉奈が最後に放った言葉が大いに関係していた。

明日の日曜、午後二時に私の家に来て。絶対よ──。

芳彦は莉奈の家を一度も訪問したことはなかったが、もちろんその場所は知っている。藤美町の、高級住宅街の中でも一番大きな家だ。

(莉奈先輩、家に僕を招いてどうするつもりなんだ?)

あのときの莉奈の表情からは、その真意をまったく窺い知ることができなかった。

(もしかすると、おいしい展開が待っているんじゃ? 人にしゃべらないことを交換条件に、もっとエッチな姿を見せてくれるのかも)

そう考えながらも、芳彦はかぶりを振った。

おっとりタイプの清純可憐な乙女が、そんな行動をとるとはとても思えない。

それでも準備室で一人オナニーに耽る姿を思い出せば、微かな期待を抱いてしまうのは仕方のないことだと言えた。

もしものことを想定し、性欲はなるべく溜めていったほうがいい。そう考えた芳彦は疼く股間を拳で押さえつけながら、自ら禁欲を強いたのである。

おかげで夏休みの課題には集中できなかったが、芳彦はなんとか抽象画を完成させると、軽い足取りで学園を後にしたのだった。

(それにしても信じられないよ。保健室で裸を見れただけでもすごいことなのに、次の日にはオナニーしている姿まで目撃しちゃうなんて。今夜は昂奮して眠れないかもしれないな)

美少女との淫らな行為を妄想し、にやつきながら歩いていた芳彦だったが、いつの間にかアパートの前まで来ていることに気づいた。

門扉を開けて、自分の部屋へと向かう。外壁はいまだブルーシートが張られていたが、修繕は予定よりかなり早く進んでいるようで、壁のひび割れはすべて塞がっているようだった。

(窓ガラスはまだ嵌められてないようだけど、これならアパートに戻れる日も近いかもしれないな)

芳彦はそう思いながら部屋の鍵を開け、照明をつけたあと、室内へと足を踏み入れた。

本棚だけは立てたものの、床にはまだ本が散らばっている。芳彦はあたりを見渡すと、目的である日本史の教科書を手に取った。

「あった、あった。まさか本棚に入れていたなんて、気づかなかったよ」

教科書をデイバッグに入れ、踵を返した瞬間、部屋の扉がノックされる。

「は、はい」

「君江です」

「君江さん?」

芳彦がすぐさまドアを開けると、満面の笑みを浮かべた君江が書類を片手に立っていた。

「門の開ける音が聞こえてきたから、芳彦君だと思ったの。ちょっといいかしら?」

「あ、どうぞ、どうぞ。まだ散らかってますけど」

部屋に招き入れると、君江は壁際のほうをグルッと見渡す。

「あら。修理はだいぶ進んでいるみたいね。今日もずいぶんとたくさんの職人さんが来てたみたいだけど、このぶんなら早く帰れるんじゃない?」

「僕もそう思っていたところです」

「どう? 百合子姉さんの所は? 居心地はいい?」

「ええ、まあ」

どう答えていいものやら、芳彦が照れ笑いで返すと、君江は用事を思い出したのか、手にしていた書類を差し出した。

「これ、今日運送会社から渡されたの。ほら、最初の日に言ったでしょ? 壊れたものがあったら、弁償するって」

「ああ、あの話ですか」

「このリストに品名と、それから値段を書き込んでほしいって」

「わかりました」

「迷惑料のことも考えて、好きなように書いちゃいなさい。それと……」

君江はいったん言葉を区切ると、スカートのポケットから茶封筒を取り出す。

「これは宿泊代だって。とりあえず十万円は入れといたらしいわ。足りないぶんは、後からまた払うって」

「あ、そうですか。助かります!」

バイトで稼いだお金があるので、当座の生活費には困らないが、思わぬ収入に、芳彦はホクホク顔を見せた。

(でも、やっぱり百合子さんには、きちんと食費ぐらい渡さないとな)

封筒を折り畳んでズボンのポケットに入れた芳彦だったが、君江はまだ何か言いたそうな顔をしている。

「あの、他に何か?」