幼馴染みと学園のアイドル 女子高生たちの恥じらいの放課後

二十七歳という年齢は、若さと成熟のちょうど境目の位置にあるのかもしれない。

芳彦はそう思いながらも、覗きが気づかれることを恐れ、すぐさま浴室の前を後にしたのである。

峻烈な君江のヌードは頭から離れず、激しい鼓動を打つ心臓は今にも口から飛び出てきそうだった。

(あの日は部屋に戻ってから、三回もオナニーしたんだっけ)

芳彦は、苦笑しながら浴室の扉を開けた。

年頃の少年が皆そうであるように、芳彦もご多分に漏れず、年上の女性相手に童貞を捧げたいという思いを抱いたことがある。

君江はまさしくうってつけの相手だったが、さすがに十歳も歳が離れているうえに、人妻では現実問題不可能に近かった。まして君江は非常勤とはいえ、芳彦の通う高校の保健師なのである。

(君江さんの旦那さんは普通のサラリーマンだけど、昔はラグビーをやってたとかで、豪傑な人だものな。もしバレたらぶっ飛ばされちゃうよ。それにこのアパートを追い出されたら、ホントに行く所がなくなっちゃうし)

そう思いながらパンツを脱いだ芳彦は、一瞬にして眉を顰めた。

矯正しておいた包皮が下着に擦れ、ペニスがまた皮を被っている。

「恥ずかしいなぁ。仮性包茎だけはちゃんと直しておかないと、女の子に見られたときに笑われちゃうぞ」

どうやら芳彦のペニスの包皮は長いのか、手で剥いておいても、すぐに元に戻ってしまうのだ。

タオルを手に風呂場へ向かいながら包皮を矯正するも、やはり性欲が溜まっているのか、自身の指で触れただけでペニスがムズムズしてくる。

「やっぱり、さっきの君江さんのエッチな身体つきを見たことも影響してるんだ」

芳彦はひとまず邪念を振り払い、桶で掬ったお湯を肩からかけると、湯船の中へゆっくりと入っていった。

温かいお湯に浸かっていると、心が和み、このひと月間の出来事が脳裏に甦ってくる。

(それにしても、踏んだり蹴ったりだったな。バイトでは、まったくおいしい体験なんかできなかったし)

思わず、口から大きな溜め息が出てしまう。

芳彦は今年の夏休み、童貞喪失の目標とバイトを兼ね、南のリゾート地で海の家のバイトをしていた。

期間は七月二十五日から八月二十日までの約一ヵ月。友人の紹介ですぐさま連絡を取り、即採用となった。

白い浜辺で知り合う、かわいい女の子たち、美しい年上のお姉さん。来年は大学受験を控えており、遊べるチャンスが今年しかないことを思えば、まだ見ぬ彼女たち相手に童貞喪失する甘い期待を抱くのも無理はなかった。

ところが海の家のバイトは、聞いていた話とはまったく違っていた。

友人の親戚が営む海の家は家族経営で、猫の手を借りたいほど忙しく、とても女性客と会話を交わす暇などない。

もちろん初体験どころか、淡い恋バナに発展するようなきっかけもなく、ただ月日が無情に流れていくだけだったのである。

今夏は真夏日が続き、海水浴客も多かった。

芳彦は自らバイト延長をオーナーに切り出し、夏休み終了間際まで頑張ったものの、結局夢叶わず、寂しく帰宅の途へといたのある。

(明後日からは学校が始まるし、下手をしたら、童貞のまま卒業ということにもなりかねないぞ)

藤美学園は私立校で、校舎もきれいだったが、優しい先生や仲のいい友人も多く、男女共学ということで、芳彦自身も気に入っている。

だが芳彦の生活環境は、一般の生徒たちとは少々変わっていた。

芳彦は十二歳のときに母親を亡くし、父親と二人で一軒家に住んでいたが、父は著名な考古学者で一年の大半を海外で過ごし、家にいることがほとんどなかった。

一人でいることには慣れており、炊事洗濯もひと通りこなせる。取り立てて不自由はしていなかったものの、芳彦が高校入学と同時に思わぬ出来事が待ち受けていた。

考古学の発掘調査には多大な費用がかかるということで、調査費捻出のため、父が自宅を処分したいと言い出したのである。

この申し出には、さすがの芳彦も面食らった。

もともとごうほうらいらくな性格の父親だったが、一度言い出したら聞かない頑固な一面もある。

結局、アパートに一人住まいということになり、芳彦は住み慣れた家を離れ、一人暮らしを始めたのである。

家賃と生活費は父親から毎月送金されてくるものの、ぎりぎりの最低限で、バイトをしないというわけにはいかない。

「バイトを兼ねたひと夏の体験は、大きなチャンスだったんだけど……。あぁ、童貞を捨てたかったなぁ」

芳彦が独り言を呟いた瞬間、浴室の外から君江の声が響き渡った。

「芳彦君、お風呂入った? 浴衣持ってきたんだけど」

「ひっ! あ、は、はい。もう入ってます!」

浴室の扉が開き、君江が脱衣場に入ってくる。

磨りガラスの向こうのシルエットは、ふくよかな身体の稜線をくっきりと映し出しており、芳彦は再び心臓の鼓動を昂らせていた。

汗を流すと、気分がすっきりとしてくる。

芳彦は新しい替えの下着を穿き、浴衣を羽織ると、その足でリビングへと向かった。

廊下を歩いているときから、いい匂いが漂ってくる。口の中に唾液が溜まり、芳彦はお腹をグゥ~ッと鳴らした。

「待ってたわよ。冷めないうちに食べちゃって」

「うわっ、おいしそう」

テーブルの上には、湯気の立つご飯とみそ汁、厚焼き卵、肉じゃがにぬか漬けが置かれている。