女探偵眞由美の誘惑事件簿

「んぶっ、ずずぅうっ! じゅずずずぅううっ!」

空気を響かせながら、思い切り吸い上げてきた。

「んぎ、ぃぉおおぉおっ!?」

荒れ狂う愉悦と混乱に、正太郎は脳天を揺すられる。

吸い付く粘膜は、手とも乳房とも違う、第三の感触だ。

何より、眞由美が麗しい唇を、ここまで卑猥に使うのが驚きで。

過度の喜悦によって、白い濁流も肉竿を一気に遡った。三回目とは思えない勢いで体内粘膜をなぞったら、狭められていた眞由美の口へ突進していく。

「んっ、ぷぶっ!? ひうぅうっ!?」

あまりの量に、眞由美でさえ驚いたらしい。肢体をビクッとわななかせ、強張る両手でバストへ急激な圧迫をかける。

それに煽られ、巨根も最後の一打ち。逃げるように浮きかけていた眞由美の唇へ、グチャッとスペルマをへばりつかせた。

「はっ……はっ……はぁぁっ……」

「ん、ふ……は、はぁぁ……っ、ぅ、ぇ……ぁぁあ……」

今や、探偵事務所内には生臭さが立ち込めて、響くのは荒い息遣いのみだ。

眞由美もかなりの気力を使ったようで、床へへたり込んでしまう。

だが、弛緩した空気の中で尚──ペニスだけは頑丈な柱の如く、隆々とそそり立ち続けていた。

成り行きによっては、第四ラウンドも余裕でイケそうだった。

面接を受けたのが月曜日。手コキとパイズリは水曜日。

正太郎の三度目の出勤は、金曜日だった。

この二日間、青年はずっとソワソワし通しで、友人からも不審がられてしまった。今までストイックだった分、反動は大きい。ことあるごとに眞由美の顔が目の前でチラつく。

講義が終わるのも待ち遠しくて、午後はわき目もふらずに、大学から雑居ビルへ直行した。階段を上がる時になると、ほとんど駆け足だ。

しかし、正太郎だって分かっていた。眞由美には雇われているだけで、手コキもパイズリも、学部長への変則的な口止めに過ぎない。

だから事務所前に着くと、敢えてドアノブを握らず、大きく深呼吸をする。鼓動が普段の調子に戻るまで、一分近く待った。

「…………」

──そろそろいいだろう。正太郎はごく普通のバイト青年の顔を作って、ドアを押し開ける。

「おはようございますっ」

「はい、おはよ。今日も元気ね、吉尾君」

眞由美が所長の机の向こうから、余裕ある笑みを返してくる。呼び方も『吉尾君』に戻っていた。

極めて常識的な態度。正太郎も自分の判断が正しかったのだと確信する。

そこで眞由美は席を立ち、一歩一歩近づいてきた。

(え? お、落ち着け、落ち着け……!)

念じる青年に、女探偵は一枚のメモを差し出して、

「君の携帯の番号を教えてほしいって、井上さんから電話があったの。これはあの子の番号ね?」

「は、はあ」

「本当に良かったわ。恨まれたままで終わらなくて」

確かにその危険は高かっただろう。しかし正太郎は安心する以上に、眞由美との近い距離でドギマギしてしまう。

そこへにこやかに次の言葉。

「今日はストーカー対策の依頼が入っているのよ。気を引き締めていきましょうね、吉尾君」

「っ……はいっ!」

内心の浮つきを見抜かれたようで恥ずかしく、正太郎は直立不動の姿勢を取った。

そんな彼だから──。

眞由美が一回だけ切なげに息を吐きかけたことにも、椅子へ戻る寸前、頬がほんのり赤らんでいたことにも──全く気付けなかったのである。

第二章 幽霊事件と童貞卒業

正太郎が眞由美の下で働くようになって、さらに一週間が過ぎた。

これだけ時間を重ねれば、所長の色香で狼狽える頻度は減ってくる。仕事を手伝っている間も、胸にこみ上げるものが『先輩への憧れ』だと、自身で納得できるまでになる。

何せ眞由美は、明らかに身勝手と分かる客──たとえば自分が先に不倫しておきながら、離婚を有利に進めたくて配偶者の粗探しをするような──はやんわり帰してしまう。

一方、心から助けを求める人は、決して見捨てない。

エッチな『勉強』は一回きりで終わっていたが、それで良いのだろう。

(ああいうのは、俺にはまだ早すぎたんだ。せめて、もっと立派になってからじゃないとな……)

まあ、正太郎も若い男子だ。生真面目な心根と裏腹に、オナニーは頻繁にやってしまうのだが。

そして二度目の金曜日。青年が事務所のドアを開ければ、女探偵はデスクトップタイプのパソコンを使っている最中だった。

「あら早いのね、吉尾君。今日は少しの間、私が法律の勉強を見ましょうか? 恥ずかしながら、まとまった依頼が入ってきていないのよ」

最後の付け足しは、ちょっとおどけた口調だ。

「え、いいんですか?」

「遠慮しないで。元々そういう約束だったじゃない」

依頼が一つもない日は、正太郎の目にも珍しかった。眞由美が積み上げてきた信用は、男女問わずに広がり続け、知り合いから紹介され、あるいは口コミで相談に来る客も、結構多いのである。

ともあれ、惑いが薄れてきた今なら、眞由美を近くに感じられることは、純粋に嬉しかった。成長の意欲へも、弾みを付けられるに違いない。

「じゃあお願いします。俺、お茶を淹れてきますよ」

バッグを肩から降ろし、正太郎は軽い足取りで給湯室へ向かう。

だが、この数分後。

惑いが減ったなんて、単なる自惚れだったことを、思い知る羽目になった。

何しろ勉強となると、二人で一つのテキストを覗き込まねばならない。必然的に、スーツで包まれた女探偵の豊満な肢体は、頬が接する間際まで寄せられる。時には肩と肩、腕と腕もぶつかる。