青年は容易く酔わされて、最後の歯止めも消しとんだ。
「い、ク……ぅうぅっ!」
こみ上げるエクスタシーに、意識まで押しつぶされる。
そこで急に、女探偵が空いていた左手を亀頭へかぶせた。
「う、ぃぎっ!?」
「正太郎君っ、服に飛ばしたらまずいでしょ……っ? ほら、ここに出してっ」
精子を受け止めることが、彼女の目的らしい。しかし、右手の動きもそのままなのだ。
律動によって開閉させられる鈴口は、自然と掌で撫でくり回された。
上乗せされる喜悦。牡粘膜へ焼きつく疼き。
「眞由美さんっ、それっ、それはぁおぉうっ!?」
達しかけたところで、さらなる凄まじさのエクスタシーへ叩き上げる一押しだ。
白濁も残った距離を瞬時に突っ走り、尿道を擦りながら、ビュクンッ、ビュクンッ、ビュクンッ! 砲弾さながら打ちだされて、美女の左掌へ絡まった。さらに勢い余って、指と指の隙間へも。
粘度も、栗の花に喩えられる匂いも、とことん濃密だ。もう、ちょっとやそっとでは、眞由美から離れそうにない。
だが、女探偵も肌を汚されながら、うっとり喉を鳴らしていた。
「あん……正太郎君、こんなにいっぱい出すのね……っ。んふっ、熱い……ぃ」
彼女は左手を滑らせ続ける。右手は残った液を搾りだすように、下から上へ最後の一扱き。
「ぐ、う、ぅううあ……!?」
感度が振りきれたところへ追い討ちをかけられて、正太郎はつぶったままの目尻に、涙が浮くのを感じた。
手コキだけなのに気を失いそうで。そのくせ刺激の強さに、意識は繋ぎ止められる。
正太郎は悦楽の奔流に苛まれながら、あっという間にイカされたのを嘆くことさえ、許されなかった。
そして三分後。
「どうだったかしら。……私、悪乗りしすぎちゃった?」
眞由美が自身の両手をティッシュで拭きつつ、聞いてくる。
正太郎は即答できず、閉じたままだった瞼を上げた。
視界に入ってくるのは、白っぽい天井だ。年季の入った色合いが、目くるめく愉悦と対照的で、夢から覚めたような心地になってくる。
とはいえ、身体を動かす気にはなれない。憧れの女性を前に、ボロ負けの気分だった。
四肢を投げ出し、呼吸に胸を上下させて──。
ただし、ぼんやりと目を下半身にやったところで、気持ちが動いた。
若い肉竿は、今も屹立したままだ。先走りとザーメンで濡れ光りつつ、あっけなくイカされたことへのリベンジをしたがっているみたい。
(我ながら……無節操だよな……)
惨めさが薄れ、何だかおかしくなってくる。
考えてみれば高校時代も、柔道の試合で負けることが多かった。醜態を晒すのには慣れているはずだ。
「……いいえ」
「え?」
短く答えると、質問から間が空きすぎていたらしく、眞由美に聞き返された。
だから、身を起こして彼女に宣言する。
「俺……次の指導があれば、もっと粘るつもりです……っ」
「ふふ、男の子ね……」
眞由美が口元を緩めた。
「じゃあ、今から二戦目もやってみる?」
その提案に、正太郎も深く座り直した。
「ええ、お願いします!」
──二回目は最初と比べて、十秒ほど長続きした。
「はぁっ、はぁっ、はぁっ……ふぅうぅ……っ!」
またも正太郎は、エクスタシーの余熱に浸りながら、天井を見る羽目になった。
やっぱりやる気だけでは、経験の差を乗り切れない。
とはいえ、ペニスは二度達してもまだ、ギンギンの力強さを残している。
それに心の準備が出来ていたためだろう。さっきのような無力感はなく、目だけを動かして、眞由美の反応を見ることが出来た。
「うぁ……」
間抜けた声が漏れてしまった。
女探偵は隣に座って、男汁にまみれた自分の両手を見下ろしている。
目線はトロンと潤み、思った以上に淫猥だ。唇も半開きで、さっきまで乳首嬲りに使っていたからか、端がヌラリと唾液で濡れていた。
彼女は青年の視線に気付いていないらしい。あやとりでもするように指を動かして、ニチャニチャ糸を引くザーメンの感触を確かめている。
「ぁあ……正太郎君の……」
何かを求めるような、上ずり声までまろび出た。まるで続けざまに精液の匂いを嗅いで、女芯へ火が点いてしまったみたいだ。
「眞由美さん……?」
思わず声を掛けると、彼女はビクッと飛び跳ねるように顔を上げる。
「あ、え、ええと……」
ソワソワ視線を彷徨わせて。それでも青年が見つめ続けると、小声で尋ねてきた。
「君のも全然小さくならないし……締めにもう一回、抜いておく? こ、今度はアフターフォローよ。もっと甘めの雰囲気でいくから……安心して?」
「……はいっ」
口調がごまかし気味なのは気になったが、正太郎に異論がある筈もなかった。
即座に頷かれて、眞由美は再び手を拭う。そうして粘り気の取れた指先で、スーツのボタンを外し始めた。
衣服が開けば、バストの大きさも一層際立つ。白いブラウスを押しのけんばかりに丸みを描き、見るからに重たそう。
しかも眞由美はスーツの袖から腕を抜くと、ブラウスまで脱いでいった。ボタンを外す順番は上から下へ。
「正太郎君……見られていたら恥ずかしいわ」
ずっと青年をリードしてきたくせに、視線に気付くと、服の合わせ目を重ねてしまう。もしかしたら、これも『甘めの雰囲気』作りの一環なのかもしれないが、
「は、はいっ」