目を回しかけたところで、おねだりまでされて。正太郎も我慢しきれなくなった。
性器同士で結ばれながら、好きな女性に望まれて射精するのだ。気持ちいいに決まってる。
そもそも、自分はやれるだけのことをやろうと決めていたはずだ。止まったままなんて、望むところではない。
「はいっ! ま、眞由美先生っ!」
児童書の影響か、そんな呼び方をしてしまった。途端に甘えたい気持ちが膨らんで、コンドームを擦り切りそうなラストスパートへ取り掛かる。
進めば、一番痺れるのは亀頭だ。逆に引けば、カリ首と牝襞が睦み合う。竿の皮と裏筋も、往復のたびに伸び縮みした。
膨らむ。愛情も、極上の愉悦も、ひたすら膨張していく。
もはや正太郎は、身体と一緒に揺れるシャツの軽い感触まで、悩ましかった。額や背筋を垂れていく汗の一滴一滴も、粘りつくようにこそばゆい。
眞由美も髪やブラウスが羽ばたくように揺れているから、全身がざわついていることだろう。
彼女は青年の呼びかけに乗っかって、
「くぅうあっ! 正太郎君の頑張りの成果っ……眞由美先生がっ、ぁンっ、受け止めるっ……からぁあ! だひっ……だ、出しってぇええうっ! ぶちまけてぇええっ!」
「はいっ、イキます! 眞由美先生ぇっ!」
正太郎は腰どころか、全身をフルに使った。前屈みになるほどペニスを引いてから、背筋を弓なりにしての突貫だ。
「くひぁあ!?」「眞由美さんっ! 眞由美先生っ!」「ぃひぃい! ぃひぃいあっ!?」
「俺、もうっ!」「ぅあ! つああっ! ゴリゴリきてるぅう!」「出っ……るぅう!?」
最後はぶち破らんばかりに、鈴口を子宮口へ叩き込む。
刹那、最大の法悦が牡粘膜に食い込んだ。今度こそ動けなくなった彼の股間の奥からは、スペルマが鉄砲水さながらに打ち寄せる。
生で噴出していれば、確実に女探偵の子宮を満たしたに違いない量だった。
解放感も、マゾヒズムも、征服欲も、鈴口の拡張で同時に満たされる。
「お、ぐくっ……!? うぅあおおっ!」
正太郎は無様な姿勢のまま、極上の射精で恍惚となった。
しかも彼が達している間中、眞由美の膣壁は、牡肉を揉み続けてくる。ここに留まっていたら、ペニスが大変なことに──、
「眞由美さんっ……俺、もっと動きます!」
恐れよりも新たな欲の方が強く、正太郎はペニスを後退させた。最深部と距離を取った後は、カリ首の内外で荒れ狂う肉悦を制圧するべく、逞しい再突撃だ。
眞由美としては、事後の充足感に浸りたかったのかもしれない。だが脱力しかけたところで、杭さながらに肉棒を打ち込まれてしまう。
「ぃぎっ!? ぃひぃぁあ!? なにっ、何なのっ!? しょっ、しょうたろっ……くぅひぃいっ!?」
そして避けようにも、正面にあるのは硬い壁。
「や、やぁあっ!? 正太郎君っ……ちょっと休まないとっ、ひ、ひぃいんっ!? 駄目っ、待ってぇええっ!?」
パニックに陥りかけた眞由美の懇願は、正太郎の劣情へ油を注ぐことにしかならなかった。
「眞由美さんっ……続けさせてくださいっ! 俺っ、三度目のっ……つぁおっ! 今日も三回イキたいんですっ! 眞由美さんにもイッてほしいんですっ! くあっ、ま、眞由美さぁあんっ!」
真面目な青年がキレてしまうと、爆発力は凄まじい。
しばしの間、背徳の隠し部屋には、男女のよがり声が木霊し続けたのである。
──残念ながら正太郎は、眞由美をオルガスムスまで送れなかった。
そのくせ、自身は三度目の絶頂へ到達している。
コンドームから溢れ、玉袋までヌルヌルにするほどのスペルマを放った彼は、今度こそ体力が底をつき、床へ尻を落としてしまった。
眞由美も休みなしの猛攻に屈し、背中を向けたままで膝立ちだ。
「こ、これっ……やり過ぎ……ぃひ……っ」
額を壁に預け、肩で息をしつつ、ヒクッヒクッと痙攣する彼女。
しかし顔は見えないものの、青年を叱りたい訳ではないらしい。声音にはとりとめがなく、ここまで追いつめられてしまった己が信じられないようだ。
咄嗟に謝りかけた正太郎だが、今度こそ偽りない気持ちをしっかり伝えたかった。
「すみません。でも俺、眞由美さんが初めての人で……光栄ですっ」
どうにか噛まずに言えた。
眞由美は「んぅっ」と息を飲み──そこでどんな風に思ったのか、身体を支えきれなくなったように、床へ横倒しに転がってしまった。
さらに二十分近く休憩して。
身だしなみを整え、エアコンでの換気や簡単な掃除まで済むと、眞由美はほぼ普段通りの物腰に戻っていた。
「じゃあ、あっち側がどこと繋がっているか、調べてみましょうか」
さすがは世慣れた探偵だ。
対する青年の方は簡単には割り切れず、行為をしていた時以上にドギマギしてしまう。
その頭を、軽くコツン。眞由美に手の甲で叩かれた。
「出来る弁護士を目指すなら、気持ちへはメリハリを付けないとね?」
「そ、ですね……っ。ま、まゆ……いえ、所長っ」
正太郎はどもりながらも、入ってきたのとは反対のドアへ目を向けた。
二人で変態博物館を出れば、さっき眞由美が言った通り、上への階段がある。
そして昇った先は、一転して木造りの小部屋。左側に据えられていたのも、手動の木製扉だ。
「私から行くわ」
扉をずらし、慎重に辺りを確かめてから、眞由美が外へ踏み出す。すぐに問題なしと判断したようで、正太郎に手招きしてきた。