女探偵眞由美の誘惑事件簿

とはいえ、正太郎は自分から望んでエクスタシーまでの時を縮めたのだ。もうこれ以上続けるのは難しい。今や眞由美が突っ込んでくるたび、膝がカクンと折れかける。

「眞由美……さんっ、俺っ、今日も眞由美さんにイカせてほしいですっ!」

怒鳴りながら下半身に力を集めれば、男根は美女の上顎を釣るように反っくり返った。

「ひぶぅうふっ!?」

土壇場で体勢を崩しかける女探偵。それでもがむしゃらに肉棒をしゃぶり続け、青年をオルガスムスへ導こうとする。

「んぅ、く、むっ、ひぅううっ! んぶっ、じゅっ、くふっ、っぅううんっ!」

もはや考えるのではなく、身体が覚えている動きを反射的に継続しているらしい。

正太郎の性感はとことんまで炙られ、精液も肉幹の中を雄々しく昇ってきた。

グツグツ、グツグツと、頭の中まで煮え立つようだし、いつの間にやら全身汗みずく。

「イクッ! もうイキますっ! 眞由美さんっ! 俺、で、出るぅううっ!?」

もはや一回の行き来が限度だった。それ以上、絶対に持たない。

正太郎が確信した刹那、眞由美は一際苛烈な吸引と共に身を引いた。

「んぶっ、ぢゅぶひゅぅうううっ!」

それは一種の助走だったのかもしれない。

片道で勢いを付けた美人探偵は、間髪容れず、顔を突き出してくる。唇で竿の皮を伸ばしきり、亀頭は喉の端まで飲み込んで。

口腔のさらなる奥に宿る体温と湿気で、牡粘膜をめいっぱい蒸してきた。

最後はピストンも放棄して、痙攣じみた動きで肉竿へ振動を注ぎ込む。

やばいと思ったところで、回避不能のディープスロートだ。気迫だけが頼りの正太郎に、抗えるはずもなかった。

「く、ぉ、出ますぅうおおっ!?」

格好悪い声を上げながら、考えなしに剛直を眞由美へ捧げてしまう彼。生成されたザーメンも、脆い尿道を押しのけた。

そこからの射精は、獰猛だった。体内粘膜を貫き、肉悦を炸裂させながら、美女の食道へ我先に飛び込んでいく。

「ぅぶぇっ、ぐ、ぅ、ぅうっ……ぅうえぇほおぉおっ……!?」

眞由美は咽せるのを堪えるように四肢も舌も硬くして、その反応がまた、青年の下半身のあちこちを圧す。

まるでスイッチを入れられたように、追加のスペルマまで迸った。

「く、うううおっ!?」

正太郎は一度の射精で、ありったけの体力を失ってしまいそう。女探偵の口が、生気を搾り取るための器官にさえ思えてくる。

しかし、それでも彼女と離れたくならない。ヌメヌメした粘膜が魅力的すぎる。

青年が悶絶しながら涙目を前方へ浮かせれば、またも石膏像達が目に入った。

跪いて窒息寸前に陥っている女探偵と、彼女の喉まで剛直を突き立てている自分。

今や、アブノーマルな工芸品以上の痴態を、二人でピンクの光の下に晒していた──。

やがて眞由美が離れると、正太郎は転ぶようにへたり込んでしまった。そのまま後ろ手をついて、荒い呼吸で身体の前面を浮き沈みさせる。

こんなに色々してもらったのだ。何か言わずにはいられない。ここは一つ、思いの丈を籠めて、気の利いたことを──。

「あの……あ、ありがとうございました……」

ありきたりのセリフしか吐けなかった。

その不器用な彼が、首だけを動かして雇い主を見れば、優秀なる女探偵も、尻をペタンと無防備に落としていた。曲げた膝を揃えて床に置き、まるで歩き疲れた少女さながら。そのポーズが、淫らに紅潮した顔と不釣り合いで、背徳的だ。

「……今日は正太郎君……ずいぶん乗り気だったわね……。この部屋の雰囲気に流されちゃった……かしら?」

声色をトロンとさせていても、洞察力は相変わらずらしい。

青年が気まずさで返事へ詰まると、彼女は誘うように目を細めた。

「ふふっ。いいのよ、正太郎君。私も君と同じなの。まだおかしな気分で……喉の奥へやられたみたいに、別の場所も貫いてほしい、なんて思っているのよ……?」

「っ……べっ、別のって……つまりっ……」

口をパクつかせる正太郎の前で、眞由美は静かに微笑んだ。

間を開けるのは、気を持たせようという悪戯心かもしれないし、青年の口から言ってほしいのかもしれない。

確かめる方法は一つだけ。

正太郎は姿勢を正して、下腹を引き締めた。

「眞由美さん……。俺、眞由美さんを抱きたいです……今日、この部屋で!」

ストレートな言葉を想い人へぶつける。

「ええ……」

と、眞由美もすんなり頷いてくれた。

「井上さんのお父さんが帰ってくるまで、まだ時間がありそうだものね。実は私、こういう物を持ってきているのよ」

スーツのポケットから、小さくて平たい四角形のものが取り出される。正太郎が実物を見るのは初めてだが、即座にコンドームの袋と分かった。

「…………用意がいいですね」

「さすがに緊急連絡用の伝書鳩までは、連れてきていないけれどね?」

それはそうだろう。だがピッキング用の針金ぐらいなら、当たり前のように出してきそうだ。

「ねえ、おちんちんをこっちへ向けて……。私が着けてあげる……」

言いながら、にじり寄ってくる眞由美。さっきまでの気だるさは薄れ、乗り気になった様子は、まるで餌を見つけた牝豹だ。

それを迎え撃つように──正太郎も上体を起こした。

「来て……正太郎君……」

準備万端整って、眞由美が誘い文句と共にヒップを突き出す。