最初の一センチかそこらの動きで、女探偵の限界は振り切れていた。だがペニスには、その十数倍の長さがあるのだ。
だから、尚もズルズルズルッ! ズルズルズズズゥウウッ!
「お、おっ、おほぉおおっ! 死っ……死ぬぅうぃいいひっ、あぁっああぉっおおっおっおっくぅうほぉおおぉぉおっ!? くひぃいぁあぁやぁはぁあんぁあぁぁあっ!」
快楽によって封じられた女探偵の絶叫は、さらなる法悦によって、強制的に再開させられた。
破らんばかりにシーツを握り、尻を浮かせる眞由美。青年と出会って以来、最もはしたなく、最も過激なイキっぷりによって、前の穴でも牝襞が収縮しきっていることだろう。それこそ、太いバイブを奥からヒリ出さんばかりに。
正太郎も眼前で、無数の火花が飛び散り続けていた。アナルセックスの法悦は、男も女も壊してしまう劇薬だ。
「イ……くぅうぁあおおぉおおっ!」
恋人の外へ抜け出た彼の鈴口は、爆ぜるように上を向きながら、多量の白濁をまき散らし始める。
何が何でも孕ませたいといいたげに、尻や背中へへばりつく無数の子種達。赤らんだ美肌は一瞬でドロドロだ。
こうして女探偵が休むための部屋には、愛液や我慢汁の水っぽい匂い、発情した二人分の体臭に加えて、ザーメンの生臭さまで染み付いてしまった。
もう簡単には清められない。まして匂いフェチの気がある眞由美のこと。一晩中、愛欲を燻らせ続ける可能性が大だった。
そしてモーター音も、未だにクレヴァスで垂れ流されている。
「は……ぁ、あ……ぉっ……これ……まだ動……いっ……ぅぁへ……ぇおぉ……っ」
熟れ襞を撹拌され続け、脱力し切れない眞由美。
これでは正太郎の方も、劣情が瞬時に復活してしまう。
「そ……そうやって感じてる眞由美さん……すごく素敵です……っ」
「ぅあ……ひ!? あ、あへへ……ぇ……えう……ぅ……っ……」
青年が頭を撫でれば、女体の痙攣が媚びるように激しくなって。そこでアヌスへ、指を挿入だ。
「んぐひぃいいっ!? ぃひおっ! つぁおぉおおぉおっ!?」
後は回転。律動。
大学の寮の門限までは大分余裕があるし──歳の差カップルの睦み合いは、まだまだ続きそうだった。
続く二週間は、あっという間にすぎた。そして、二度目の中間報告の日がやってくる。
緊張しながら学部長室の前へ立つ正太郎の隣には、スーツを着込んだ眞由美の姿もあった。
彼女の顔は青年以上に固い。しかし、二人で相談して決めたのだ。
──なぜ、実の娘を姪と紹介したのか。
──なぜ、娘の現況を知るのに、バイトを送り込むなんて回りくどい手を使ったのか。
それらを直接、源元英雄から教えてもらう。
眞由美は、探偵としての生き方を認めるつもりが、父にないためと解釈している。確かに英雄も、不祥事を起こされたら困ると発言していた。
だが正太郎には、学部長が娘を遠ざけたがっているとは思えない。むしろ、以前から気遣ってきたような──。
(自分のことじゃなければ、眞由美さんだって、俺みたいな見方をしたんじゃないか?)
今、彼女は決心がつきかねるように、深呼吸を繰り返している。
多感な時期から想い人がどれだけ悩んできたか。正太郎は改めて教えられるようだ。しかし、ずっと立ち尽くしている訳にはいかなかった。
「……開けますよ?」
確認すれば、眞由美も無言で頷く。
青年は一歩進み出し、コンコンとノックした。
すぐに中から「入りなさい」という返事。
唾で喉を湿らせ、ドアを引き開けると、源元英雄は戸口と向き合う格好で、机の向こうに座っていた。そしてわざとらしい笑みを作りかけ──途中で凍りつく。
「…………眞由美……?」
そんな彼に、眞由美はぎこちなく微笑んだ。
「久しぶりね。…………お父さん」
──ついに親子の対面は果たされたのだ。
「……眞由美を姪と紹介したことに、それほど深い意味はなかったんだ。強いて理由を挙げるなら、僕とのコネを期待されたくなかったことだね。娘へ安っぽいご機嫌取りなんてされては、本来の目的を果たせない」
それが正太郎の問いに対する、英雄の一つ目の答えだった。
彼も内心は冷静でないかもしれない。しかし表面上は、いつも通りの態度へ戻っていた。
その何もかも見透かしていると言いたげな口ぶりが、正太郎は不満だ。
(ずっと眞由美さんを寂しがらせていたのに……!)
娘を疎んでいる訳ではなさそうだが、青年の思い描いていた対応とも違う。
この人は裏で小細工をするのが好きなだけなのではないか──そんな風に見えてしまった。
「何だったんですか? 本当の目的って」
「損得抜きで協力してくれる味方を、娘へ送ることだよ。スパイは二の次。むしろ、僕へは反発するぐらいが都合良かった。君の正体もすぐバレると踏んでいたね」
そこで眞由美が口を開いた。
「でも……どうして今になって……? ずっと、私と距離を置いていたのに……」
問いかけるというより、低く独り言を漏らすかのようだ。
困惑する実の娘に対しては、英雄も物腰を改めた。正面から真摯に見つめる。
「半年ほど前、たまたま街でお前を見かけたんだよ。遠目にもひどく疲れていてね。……だから放っておけなくなった」
「…………」
眞由美は何も言い返さない。
それで正太郎も漠然とだが、当時の様子を察せられた。