恥辱の風習 捧げられた新妻

腰から背筋にまで甘い電流が走り抜けるような陶酔感に喘ぎ声が大きくなった。腰全体がぼうっと痺れ、意識が桃色に霞む。

(ああ、気持ちいい──)

夫が、こんな性の技巧を備えていたとは新鮮な発見だった。これまでの夫婦生活では猫をかぶっていたのだろうか。あるいは瑞穂を喜ばせたい一心で頑張ってくれているのか。

どちらにせよ、愛する夫から与えられる至福の肉悦に瑞穂はうっとりと浸った。

やはり、全然違う。

郷田のような下卑た男に無理やり口内を蹂躙された昨日の悪夢と、こうして正一に秘所を口唇愛撫してもらっている今では。

「そろそろ、いいだろう? れても──」

正一が濡れそぼった股間から顔を上げ、息も荒く尋ねた。

一瞬、聞き間違いかと思った。

瑞穂は慌てて目を開け、夫の顔をまじまじと見つめた。瑞穂の位置からは鼻から下が見えず、表情はよく分からない。だが薄闇の中でも爛々と光る目は明らかな欲情の輝きを宿していた。

決して冗談などではない。間違いなく、夫は自分にペニスの挿入許可を求めているのだ。

「えっ、でも──」

さすがに他人の家で本番セックスまでしてしまうことには抵抗感があった。

が、これだけ高ぶっている夫を見ると理性的な判断が揺らいでしまう。

夫が喜んでくれるなら肌を許してもいいのかもしれない。

声を殺せばまずバレることはないだろう、という計算も頭の片隅にあった。

(それに──正一さんがこんなに積極的になってくれてるんだし……)

応えたい、という気持ちが理性を上回った。

こくん、と静かにうなずくと、瑞穂は恥ずかしさでふたたび目を閉じてしまう。夫が服を脱ぐ気配を、目をつぶったまま感じ取っていた。やがて夫は服をすべて脱ぎ去ったのか、逞しい全裸の体が覆いかぶさってきた。

「んっ……」

重量感のある胸板が、ブラウス越しに瑞穂の豊満な胸を押し潰して圧迫する。

夫はこんなにも体重が重かっただろうか……と、さっき感じた以上の違和感が走り抜けた。

が、次の瞬間、上体を起こした正一がパンティのクロッチ部を横にずらし直し、硬く尖った亀頭部をM字に開いた瑞穂の両足の付け根に押し当てると、そんな違和感は霧消した。

久しぶりに夫を受け入れるのだという喜びが腰の奥を甘ったるく蕩かす。胸がすくような期待感で全身の肌が粟立った。

「ん、く」

夫がグッと腰を前に進めるのと同時に、秘唇を押し広げられる圧迫感に瑞穂は声を上げた。ずぶりっ、と音がしそうなほどの勢いで粘膜を軋ませながら、猛々しいものが押しこまれていく。

すでに十分潤っていた秘孔の内部は、ぐちゅぅぅっ、と愛蜜をかくはんされる音をいやらしく鳴らし、襞肉すべてを歓迎するようにうねらせながら、愛する男性の分身器官を奥へ奥へと誘っていく。

新妻の引き締まった下腹部が歓喜にうねった。ずぶっ、ずぶっ、と勢いよく潜りこんでくる実感が心地よかった。

「ああ……」

狭苦しい肉孔を内側からグイグイと拡張されるようなセックス独特の挿入感を味わいながら、瑞穂は深いため息をついた。

なおも太い肉根は蕩ける膣壁を内へ内へと巻きこむようにして止まることなく進んでいく。

こつん、と熱く火照った肉の先端部が子宮を押し上げる。

その圧迫が、根元まで貫かれたのだという実感を伴って瑞穂の女体を甘く燃え上がらせた。

(嬉しい──)

単純な肉の快感とは異なる精神的な充足感。

根元まで差しこんだ状態で、逞しい体が覆いかぶさってきた。

全体重をぶつけるような腰遣いが瑞穂の中心部を震わせる。

がつっ、がつっ、がつっ、と硬い亀頭で膣奥を圧迫される、いつもとは違うパワフルな交合だ。

「ああ……」

瑞穂はグラマラスな肢体を喜悦にわななかせた。

久々に味わうせいか、夫のペニスが常よりも硬く、長く、太く感じ、膣が内側から弾けそうなほどだ。それだけ自分の体が愛する男を欲していたのだと思うと、あらためて多幸感が腰の芯を甘く満たした。

(もっと……もっと来て、あなた……)

口に出すにはいささか気恥ずかしいリクエストを心の中で叫ぶ瑞穂。

肉壺は潤みを増してこなれ始め、太い肉塊を蕩かすように包みこむ。

「ぐうっ、こんなに……具合がいいとは……! うううっ」

正一が気持ちよさそうに叫び、腰を大きくグラインドさせた。

どすっ、どすんっ、と下腹部をパワフルに叩きつけてくる抽送が瑞穂の体に強い衝撃を与える。胎内が軽く悲鳴を上げた。

「やぁぁっ……!? き、きついわ、あなた……!」

確かに気持ちいいのだが少し性急すぎる。

久々のセックスなのだし、最初は膣に負担をかけないようにもう少し優しく動いてほしかった。

が、そんな瑞穂の願いとは裏腹に、彼の動きはますます激しくなる。

一撃一撃が子宮の底にまで響き、痛みと快楽の入り混じった感覚が体の芯を揺さぶった。

「ま、待って、ちょっと強すぎ……んっ、あふぅ」

「これくらいのほうが気持ちいいんだよ、そらっ、そらっ」

瑞穂の制止の声にも耳を貸さず、正一は珍しく荒っぽい言葉遣いでスラストを浴びせてくる。

(おかしいわ、いつもと様子が違う……!?)

さすがに瑞穂も不審を覚えた。

いつも壊れ物を扱うようにしてセックスする正一とは、性の作法に差異がありすぎるのだ。

まるで別人のようだった。彼のほうも久しぶりのセックスに興奮し、我を忘れているのだろうか。