恥辱の風習 捧げられた新妻

「あら、どうしたのかしら、瑞穂さん? 顔が赤いわよ」

対面に跨がっている彩香がするように尋ねた。

「な、なんでもありませ……ん、く」

「なんでもないっていう顔じゃ……な、ないわよ?」

(彩香さん……?)

よく見ると彼女の顔もうっすらと赤らんでいた。おそらく対面にも同じような突起があって、彩香のデリケートな部分を刺激しているのだろう。

が、恥じらう瑞穂とは裏腹に、彼女のほうはむしろ積極的に巨大な男根に股を擦りつけ、刺激による性悦を積極的に甘受していた。

「おお、巫女さん色っぽいねぇ!」

「いいぞ、いいぞぉ!」

道沿いに立っている見物客たちが一様にはやし立てる。大勢の男たちの好色な視線や子供たちの好奇の視線を嫌でも意識した。

「ね、ねえ、彩香さん、もう少し、その──きゃっ!?」

遠慮したほうが、と言いかけたそのとき、大量の冷水を浴びせられた。

神輿を取り囲む男たちの手にはいずれも手桶がある。どうやら彼らが一斉に瑞穂と彩香に水をかけたらしい。これは『浴びせ雨』という神事の一環で、農作物にとって生命線ともいえる雨に恵まれるよう祈願する意味があるという。

事前に説明を受けていたとはいえ、これほど大量の水を浴びるとは思っていなかった瑞穂は少なからず面食らってしまった。

「ああ……」

しかも、ただでさえ薄手の巫女衣装は濡れたことで下の肌が完全に透けてしまっていて、瑞穂は嘆声を漏らした。豊かな胸丘の膨らみに沿って布がぴったりと貼りつき、完璧な球形を誇るGカップの乳房の形を露わにしている。

いや、形だけではない、ブラジャーを着けていないため乳首の尖りや、淡いピンクの色合いまでもが透けて見えているのではないかという不安で、瑞穂は気が気ではなかった。

しかも下半身に目を移せば、くびれた腰や、引き締まっていながらも肉づきのよい美しい尻のラインまでもが浮き出しているのだ。

「おおっ、すげぇ!」

「若い巫女さんもエロいぞぉ!」

見物客たちからの歓声がさらに大きくなった。

これでは衣装をまとっているといっても、下着をつけていないこともあって、ほとんど裸を晒しているも同然だった。衆人環視の中で裸体を露わにしている感覚が清楚な人妻の羞恥に火をつける。

「み、見ないでください……!」

慌てて半裸身を隠そうとするが、手を離すと神輿から落ちてしまうためにそれもできない。結果、巨大なペニス型の神輿にしがみついたまま、裸同然の姿を晒し続ける羽目になってしまう。

「ち、ちょっと、こんなの……!?」

戸惑いを強める瑞穂だが、同様にずぶ濡れの彩香は体のラインが露わになるのも厭わず、男根神輿に全身を擦りつけ続けている。

瑞穂以上に豊かな胸丘は神輿に強く押しつけられて扁平にひしゃげ、パンケーキを連想させる。貼りついた生地越しに真っ白な乳肌が透け、神輿の動きに合わせて、たゆん、たゆん、と弾む。

さらに目を凝らせば、赤い袴もかなりの部分が透けていた。熟女らしい脂が乗ってむっちりとした太ももや、瑞穂よりもはるかに肉づきのよい双尻までもが、裸の状態を想像できるくらいに透けていた。

公共の場でオールヌードを晒しているのに等しい状態だというのに、彩香は恥じらいを見せず、体を隠そうとさえしない。むしろ素晴らしいプロポーションを見せつけるかのように、神輿の振動に合わせて体を小刻みにくねらせた。

男たちからこれまでで最大級の歓声が上がる。明らかに淫らな響きを持つ歓声だ。いくら祭りとはいえ、こんな盛り上がり方は異様だった。

(このお祭りは、一体……!)

瑞穂の中で不審が静かに募った。

昼過ぎから始まった祭りは神輿で村中を練り歩いた後、神社に戻ってきて奉納の舞いが行われ、日が沈むころにようやく一段落した。

瑞穂は濡れた巫女衣装から新しい巫女衣装へと着替え、今は境内にいる。

周囲に電灯の類がないため、日没とともに辺り一面が急に暗くなった。同時に、境内のあちこちに設置された篝火が点火され、薄暗い闇を赤く照らし出す。

少し前までは夜でも明るい都会の景色に慣れていた彼女にとって、篝火の中で浮かび上がった赤く点滅する風景は幻想的に映った。

「まあ……」

その風景に心を奪われ、思わず嘆声を漏らす。

祭りでいやらしい目に遭わされ、恥辱と屈辱を感じたりもしたが、そんな不快感も一気に洗い流されるほど見事な景色だった。

「彩香さん?」

ふと隣家の人妻の姿がないことに気づき、瑞穂は周囲を見回した。先ほどまで一緒にいたのだが、いつの間にかはぐれてしまったようだ。

「どこですか、彩香さん」

彩香を探して辺りを歩き出す。不意に異様な声が聞こえてきた。

「な、何、これ……?」

怪訝に思いながら赤く照らされた境内をさらに進む。

前方から聞こえる声はさらに大きくなった。妙な匂いまでして、瑞穂は鼻先をひくつかせる。むせ返るように青臭いその匂いは草木の香りに似ているが、しかし微妙にそれとも違っていた。

「これって、まさか」

その正体に思い当たり、心臓の鼓動が跳ね上がる。

「っ……あ……はぁ……ぁんっ……いい……」

さらに妖しげな声まで聞こえてきて、不安が一気に加速する。

瑞穂は足元がよく見えないのも構わず駆け出していた。途中、何度も地面の雑草に足を取られ、転びそうになる。