増山が皺だらけの口元にいやらしい笑みを浮かべる。
「ひひひ、ここか? それともこっちが気持ちええのか?」
微妙に腰のひねりを加えた抽送が膣内の浅瀬をグリッと擦り上げた。老人が上体を倒すと恥骨が擦れ合い、敏感な肉芽まで刺激されてしまう。
「あんっ……!」
快感の宿る場所をピンポイントに摩擦され、瑞穂はこらえきれずに嬌声を漏らす。
ぐちゅうぅっ、と断続的な水音を立てながら、少しずつ押しこんでくるようなピストンが瑞穂の下半身をスローな快感で浸す。
じわじわと込み上げる肉悦で肌が粟立った。
「だめ、このままじゃ……」
少しずつ快感のボルテージが高まっていくのを感じる。しかしその流れを押し止める術はなかった。
もっと早く──理性とは無関係に、生理的な反応としてじれったい思いが込み上げてくる。瑞穂は首を激しく左右に振ってその思いを懸命に打ち消した。
それでも膣孔いっぱいにジワジワ込み上げる甘痒い刺激を殺すことなど不可能だった。郷田に体を奪われて以来、何人もの男と肌を重ねてきたが、ここまで焦らされるセックスは初めてだ。
「ううっ……んぐっ」
ハアハアと息を乱していたところで、上から増山の顔が近づいてきて、そのまま唇が重なった。
ナメクジのような気色の悪い感触が唇一面に貼りついている。
「んんんっ……」
もちろん平常時ならば、力を込めて非力な老人をはね除けることはできるだろう。だが、徐々に高ぶる愉悦が四肢の力を奪い、半ば麻痺状態になっている。
押しのけることができず、瑞穂は濃密なキスを強要されたまま小鼻を膨らませて喘いだ。
抵抗不能の状態でいやらしい老人に唇を貪られ続ける。
一方でスローペースの抽送も間断なく続いている。キスの快感と膣交の快感、二つの肉悦が重なり、溶けあって女体を甘く疼かす。
(駄目、もうイク……! イッてしまうわ……!)
びく、びく、と下半身を痙攣させながら、瑞穂は軽いアクメに達した。
「あらあら、正一さんの前でイッちゃったのかしら? 瑞穂さんたら、清純な顔してエッチなんだから」
くすくす、と揶揄するような声に顔を上げると、いつの間に現れたのか、彩香がルージュの塗られた唇を笑みの形に釣り上げ、瑞穂を見下ろしていた。
「ち、違うわ、私は──」
正一の眼前で他の男を相手に軽い絶頂を極めてしまったことは事実だが、せめて夫に申し開きがしたかった。
心はいつでもあなただけのもの、と伝えたかった。
「う……あ……はぁ……」
しかしエクスタシーの余韻がまだ残っていて、その言葉を発する気力さえ湧いてこなかった。
こちらを見つめる夫の瞳は焦点が合っていなかった。
夫婦の間で決定的な何かが崩れ去ったような予感がした。もう二度と後戻りはできない。暗い諦念が少しずつ心を侵食していく。
(ダメ、しっかりしなきゃ……)
崩れそうになる心を立て直そうと、瑞穂は懸命に自分自身を叱咤した。
と、
「奥さんが他の男とよろしくやっているんだもの、私たちも楽しまない?」
彩香が正一に背後から抱きつき、しなやかな指先をズボンの股間に這わせていた。
「な、何をするの、彩香さん!」
オルガスムスの余韻も忘れ、瑞穂は怒りの声を上げた。
彩香は嘲笑を浮かべ、なおも正一の股間をまさぐる。
「い、いや、僕は──ああっ!?」
首を横に振る彼にはおかまいなしに、隣家の人妻は流れるような手つきでベルトを外し、ジッパーを下ろして、ズボンを脱がせてしまった。
そのまま正面に回ると、彩香は正一の足元に跪いた。
真っ赤なルージュを塗った唇をOの字に開き、正一の細身のペニスを根元まで一息に呑みこむ。
ダイナミックに首を上下させつつ、じゅぽ、じゅぽ、と濁った唾液の淫音とともに口内で抽送を加速させ、夫の肉茎に快楽刺激を送りこんでいく。
瑞穂よりもはるかに熟練したフェラチオを目にして、敗北感にも似た疼きが胸の中を駆け抜けた。
「んっ……サイズはそれほど……でも、硬くて……んちゅ、ふふ、中々……れろぉ……美味しそ……」
唾液の飛沫を飛ばしてペニスを頬張りながら、彩香は嬉しそうにほくそ笑んだ。
正一のほうはほとんど立ち尽くしたまま、熟練した口唇奉仕を受けている。
「や、やめてくれ、僕は──」
「目の前で妻を寝取られているのだから、あなたが同じことをしたって罰は当たらないわよ。ふふ、瑞穂さんに見せつけてあげましょ?」
立ち上がった彩香は正一に軽くキスをすると、床の上に彼の体を横たえ、腰のところに跨がった。
正一のほうは驚きの連続でもはや思考能力すら薄れているのか、完全に隣家の人妻の為すがままだ。
「入るわよ──」
手早くスカートとパンティを脱ぎ去った彩香が裸の下半身を晒すと、男たちの間から、おおっ、と一斉にどよめきが起きた。
旺盛な性欲を反映してか、瑞穂よりもずっと濃く性器の周辺に生えそろった陰毛がそよいでいた。艶々と色鮮やかな赤い肉唇はすでに愛蜜のぬめりを宿し、妖しい光沢を放つ。
すらりと伸びる二本の脚はモデル顔負けの美しいレッグラインを誇り、三十六歳という熟れた年齢相応に脂が乗った太ももは、男ならば誰もが垂涎するだけのムンムンとした色香を振りまいている。
さらにむっちりと盛り上がった尻の双丘はサイズも大きく、牝としてのセックスアピールに満ちあふれていた。