恥辱の風習 捧げられた新妻

下手をすれば一糸まとわぬ全裸よりも扇情的な格好だ。

おまけに力の入らない両足はしどけなく左右に開き、ぱっくりと口を開けたままの秘孔からは大量に注ぎこまれたスペルマがあふれ出して、地面にまで白濁色の液だまりを作り出している。

「見ては駄目っ」

瑞穂は慌ててはだけた千早の前を合わせたが、郷田に袴を放り捨てられてしまったため下半身が剥き出しだ。せめて秘所だけでも隠そうと、両手のひらで股座を覆う。

太一とその同級生たちはいずれも緊張気味の顔で瑞穂を見ていた。

「郷田さん、どういうつもりですか!」

さすがに怒る。こんな場所に子供を連れてくるなど正気の沙汰ではない。

「どういうつもりもこういうつもりもねぇよ。これが祭りのメインイベントなんだからよ、へへへ」

郷田は全裸に近い姿を晒すことも厭わず、息子やその同級生たちの前で仁王立ちしていた。

「メインイベント……?」

「筆おろしだよ。ここにいるほとんどの連中は祭りの巫女に女を教わったんだぜ。俺もそうだ」

「な、何を言ってるんですかっ……!?」

それでは今回は巫女役の瑞穂と彩香がここにいる少年たちにセックスを教えなければいけないということだろうか。乱交だけでなくそんなイベントまで行うとは──あまりにも馬鹿げている。

「すげぇ、どっちもおっぱい大きい」

「彩香さんの体、めちゃくちゃエロい……」

「うう、俺は瑞穂さんのが見たいよ……」

興味津々といった様相で、口々にざわめく少年たち。彼らは誰もが期待に満ちた顔で瑞穂と彩香を見つめている。

これから起こることはすべて納得ずく、ということなのか。

「太一くん、嫌なら嫌って言っていいのよ? こんなことを無理強いされるなんておかしいわ」

震える声で尋ねたが、太一は瑞穂を見つめるだけだ。

緊張しているのか、華奢な体が小刻みに震えていた。

(可哀想に。きっと無理やり連れて来られたのね)

いたいけな少年への同情心で胸が痛む。瑞穂は硬い表情の太一の気持ちを少しでも解そうと、にこやかな微笑を浮かべて語りかけた。

「大丈夫、大切な初体験なんだから本当に好きな女の子とすればいいの。私なんかを相手にすることはないのよ」

「へっ、何か勘違いしてねぇか?」

郷田が背後から嘲笑を浴びせた。

「筆おろしはな、事前に希望の相手を聞くことになってるんだよ。決して無理強いじゃないってわけだ。で、太一が選んだ相手は誰だと思う?」

「だ、誰って……」

太一は相変わらず体を小刻みに震わせている。

だが、それは緊張のためではなく──。

(興奮、しているの? 私を相手に)

瑞穂は信じられない思いで愕然と全身をこわばらせた。

「分かったか? 太一は童貞喪失の相手にあんたを希望したってわけだ。見ろよ、もうすっかりその気だぜ、あっちは」

見れば、太一の股間のモノは褌からはみ出さんばかりに盛り上がっていた。

自分に熱い視線を注ぎ続ける太一を見ていると、それに応えなければという気持ちが湧き上がってしまう。

反射的にその股間に手を伸ばしかけたところで、相手は自分より十歳も年下の少年なのだと思い直し、その手を引っこめた。罪悪感で体が震える。やはりこんなことはおかしい。あってはならない、と思う。

「で、できないわ」

瑞穂は首を何度も左右に振った。

「あら、ここまできてやめてしまうの?」

横から口を出したのは彩香だった。

千早を完全にはだけ、袴もずり下ろした姿は生半可な全裸姿よりもはるかにいやらしい。しかも全身に浴びた白濁の精液が濃密な性臭を放っており、その牡臭い香りに瑞穂まで妖しい気分を高められてしまいそうだ。

いや彩香だけではない。彼女と一戦交えた男たちはいずれも露出したペニスから強烈なザーメン臭を漂わせており、今やこの場のすべてが淫靡な空気に包まれ、支配されていた。

(おかしいわ。全員、おかしい)

祭りの異様な空気に理性を呑みこまれないよう、瑞穂は自分自身を奮い立たせる。

強い意志を込めて隣家の人妻をキッと睨みつけた。

「当たり前です! 相手は中学生ですよ」

「せっかくの初体験を嫌な思い出にする気?」

彩香が挑発するように顎をしゃくると、瑞穂は表情をこわばらせた。

意味が分からなかった。

むしろ、このまま祭りの異様な雰囲気の中で、しかも十歳も年上の自分を相手に初体験するほうが、太一にとってよほど嫌な思い出になるのではないだろうか。

「ふうっ、分かってないわね、瑞穂さん」

彩香が馬鹿にするようにため息をついた。

「これくらいの年ごろの男の子にとってはね、瑞穂さんくらいの年齢の女性って憧れなのよ」

思わぬ言葉に瑞穂が目を瞬かせると、恥ずかしそうにうつむいた太一がか細い声でつぶやく。

「ぼ、僕、前から瑞穂さんの……こと……」

「その憧れの女性に童貞喪失を優しく手ほどきしてもらう──きっと素敵な思い出になると思うわ。でもあなたが拒絶するなら、太一くんはきっと傷つくでしょうね」

言葉少なげな太一を引き継いで、彩香が告げる。

太一にもう一度視線をやると、純朴な中学生は紅顔をさらに火照らせ、潤んだ瞳で瑞穂を見つめていた。言われてみれば、それは憧憬そのものの視線のように思えた。

「太一くん、本当に私のこと……」

「は、はい」

体を震わせてうなずく太一。やはり、これは彼が望んでいることなのだ。