恥辱の風習 捧げられた新妻

ぬるりとした舌が瑞穂の口内に侵入すると、柔らかな肉塊を口に含んでいる甘い感触が、いけないとは思いつつも瑞穂の心を陶然とさせた。

「ちゅ、んんっ……ちゅぱ、れろぉ……」

あっという間に舌を搦め捕られ、お互いに舌を巻きつけ合うディープキスに逆戻りする。

粘り気のある唾液を口の中に注ぎこまれ、瑞穂は反射的にそれをえんした。

「んふぅ……」

塞がれた唇の隙間から悩ましげな息が漏れる。

夫の眼前で他の男と交わす口づけは苦みと甘みをブレンドした背徳の味がした。

これ以上はいけないと思いつつも、瑞穂の四肢からは力が抜け、抵抗の力が薄れていく。

郷田はこれ幸いとさらに強く唇を押しつけてきた。新妻の神聖な唇を卑劣な男の思うさまに吸われてしまう。

「んんんっ……」

これほど情熱的で濃厚な口づけは生まれて初めてだった。前回のキスよりもはるかに強烈に瑞穂の唇を貪ってくる。

夫のどこか遠慮がちなキスとは違い、唇も舌も貪り尽くそうという意志が伝わってくるような獰猛なディープキス。

たっぷり五分以上はそうして唇を奪われていただろうか、ようやく暴虐な口づけから解放されると、瑞穂は息も絶え絶えに郷田から身を離した。

「はあっ、はあっ、はあっ」

何度も荒い息を吐き出す。

口の周りにべっとりと付着した唾液や、唇に残る彼の肉厚な唇の感触が不快でたまらなかった。

一方の郷田は美しい人妻との接吻を堪能した喜びで満面の笑みを浮かべている。

「あんたのいやらしいキスで俺のほうもいきり立っちまったぜ、へへ」

ニヤニヤとした下品な顔で己の下腹部を指さした。

「なっ……!」

瑞穂は驚きの声を上げる。そこはズボンの前が雄々しく膨らんで立派なテントを張った状態となっていたのだ。

(嫌だ、もうあんなになって)

一度ならず目にしたことがある彼の逞しいペニスが脳裏に浮かび、瑞穂は両頬を羞恥の赤に染めた。

どくん、どくん、と我知らず心臓が早鐘を打つ。

口で、そして膣で受け入れた、人生で二人目の男の逸物──。

「ああ、たまんねぇな。また前みたいに口でしゃぶってくれよ」

「ち、ちょっと、夫に聞かれ──」

「酔い潰れてるんだから大丈夫だろ」

郷田は意に介さずにジッパーを下ろし、そこからはち切れんばかりに膨らんだ太い分身器官を引っ張り出した。

「ひっ……!?」

誰かが来たらどうするつもりなのだろう、と考え、背筋が寒くなる。

郷田のほうは恥知らずと言うべきか、肝が据わっていると言うべきか、平然と立ち上がり、彼女の眼前で赤銅色の男根を揺らしてみせた。鎌首をもたげる巨大な肉棒からは、プンと饐えた匂いが漂ってくる。

よこしまな欲望だけを抽出したかのような生臭いカウパー臭に、胃の底が重くなるような生理的な嫌悪を覚えた。

「ほら早く咥えてくれよ、へへ」

「そ、そんな! いくらなんでも、そんなことできません!」

郷田の破廉恥な提案に瑞穂は何度も首を左右に振った。こんなことを平然と言い出す彼の神経を疑ってしまう。

「よりによって夫の前で──」

「旦那の前でやるから燃えるんじゃねぇか。分かってないな、奥さん」

郷田は下品な笑みをいっそう色濃くした。

「早くしないと人が来るぜ。こんな場面を見られたら誤解されても仕方がないよな」

「ひ、卑怯よ!」

「だから早くしろって。口ですぐ終わらせれば穏便に済むじゃねェか」

「……くっ」

瑞穂は抗議の言葉をグッと呑みこんだ。

──冷静に考えれば、毅然と断るのがベストの選択だったのだろう。

性器を露出した場面を第三者に見られたら、郷田もただではすまない。むしろこの状況を目撃された場合、普通は彼が瑞穂に無理やり迫ったと判断されるはずだ。

そうなれば、糾弾される立場に追いやられるのは郷田のほうである。

にもかかわらず、瑞穂は逡巡した。

今の状況を第三者に見られた場合、もしかしたら瑞穂と郷田が合意の上でことに及ぼうとしたと思われる可能性はないだろうか。少ないとはいえ、その可能性はゼロではないように思えた。

宴の席で酒が入り、思考力が鈍っていたこともある。それに加え、冷静に考えればすぐに答えが出ることでも、切羽詰まった状況で的確な判断をするのは案外と難しいものだ。

(どうすればいいの、私……)

逡巡が深まるのと同時に、苦々しい思いで胸が重くなる。今の瑞穂は一刻も早く郷田の暴走を止めたいという思いで、理性が半ば以上曇った状態に陥っていた。胃がキュッと縮む。

(仕方ないわね……)

迷った末に、清楚な新妻は苦渋の決断を下した。

とにかく一度射精させてしまえばいいのだ。郷田だってすっきりと気持ちよくなれば、これ以上の無茶は言うまい。

「迷う必要なんてねぇだろ。口でしてくれれば、それ以上何も要求しないからよ。俺だって約束はちゃんと守るさ」

「わ、分かりました……口ですればいいんですね」

瑞穂は意を決して、眼前で揺れる肉塊に顔を寄せた。

そのとたん、郷田が腰を突き出して赤黒い先端部を口に押し当ててくる。そのままの勢いで上下の唇を割って、太い男根が口内に押し入ってきた。

郷田がいきなり腰を大きくしならせ、下半身の体重を丸ごと叩きつけてくる。強引でパワフルなフェラチオが始まった。

「んぐっ、む、ふぅ……んんんっ……!」