恥辱の風習 捧げられた新妻

もはや、こちらを呆然と見つめる夫の姿すら眼中になく、瑞穂は自分を貫く男たちに愛おしげな視線を向ける。

さらにその後ろに控える郷田が、次は自分の番だとばかりにペニスを剥き出しにした。

終わりのない快楽の予感に、瑞穂は淫蕩な微笑みを浮かべたのだった──。

エピローグ 恥辱の風習

その日の夜、川崎家に一人の男が訪れた。

「俺、瑞穂さんにお相手してもらいたくて、その……」

「あら、新顔さんですね」

玄関口で遠慮がちに告げる彼に、瑞穂はにっこりと微笑む。

皆まで言わなくても用件は分かっていた。

あの日から二か月──村の男たちがこの家を訪れない日のほうが少ないくらいだ。

瑞穂はあらためて訪問者を見つめた。

年齢は三十前後だろうか、その割に初々しくあまり擦れていない雰囲気は好感が持てる。

村の男たちの『性の共有財産』になった今、彼女に拒否権は与えられていない。求められれば体調不良でもない限り、どんな男とも床を共にしなければならない。

だが、やはりセックスするのは好感が持てる相手に越したことはない。

とはいえ、憎い男であっても圧倒的な精力によってイカされることもあるし、その被虐感もまた捨てがたいのが女体の複雑なところだ。

「……奥の部屋を使うわね、あなた」

「あ、ああ、好きに使うといい。僕は向こうで寝るから」

告げる瑞穂も、うなずく正一の態度も、ともにぎこちない。

まだ村のシステムに組みこまれて日が浅いせいだ。

夫の居る前で他の男を寝室に招き入れ、セックスをするというのは、やはり心理的な抵抗が強いのだった。

これから先も、ずっとこういう気持ちを抱えて村で生きていくのか。

それとも──いずれは自分も夫も平然とこの『務め』を果たすようになるのだろうか。

瑞穂には分からない。

正一はこの村の風習に薄々気づいていたらしいが、すでにその風習は廃れたものだと思っていたそうだ。まさか自分の妻がその毒牙にかかるとは想像もしていなかった、とあとから瑞穂に詫びた。

だが、それもすでに過ぎ去ったこと。

ともかく、今は目の前の男のことだ。

せっかく来てくれたのだから、どうせなら満足して帰ってもらいたい。そんな奉仕の心が芽生えたのも、つい最近のことだ。少し前までは訪れる男に身を任せた後は、あんたんたる気分になったものだ。

「さあ、遠慮なく入ってください」

瑞穂は彼を連れて廊下を進んだ。

ふう、ふう、という荒い息遣いから、男の興奮が伝わってきて、胸が甘く疼いた。

やがて廊下の突き当たりにある奥の部屋に到着すると、瑞穂が先導して部屋の中に男を招き入れた。

お互いに無言だ。

そもそもこれから行うことに言葉など不要だった。

布団を敷き、手慣れた仕草でブラウスとスカートを脱ぎ去る。さらに下着も脱ぎ捨てると、男の前に均整のとれた裸身を晒した。

そろそろ初夏とはいえ、さすがに一糸まとわぬ姿になると少し肌寒い。それでいて体の内部はじっとりとした熱が籠もっていた。

これから起きることへの背徳的な期待感が、女体を内部から熱くしているのだ。

「おお……!」

男は服を脱ぐのも忘れ、呆けたような顔で彼女の裸身に熱い視線を注いだ。

むくむくとその股間がたちまちテントを張る。

ハアハアと荒い息が部屋の中に響く。

意に添わぬ役目とはいえ、ストレートな欲情をぶつけてくれるのは、自分を女として認めてもらっているようでやはり嬉しい。

「さあ、いらっしゃい。全部私の中に吐き出して」

瑞穂は淫蕩な笑みを浮かべて布団の上に仰臥すると、男を招き寄せた。

両足の付け根は早くもジュンと潤み、名も知らぬ男を迎え入れる準備が整いつつあった──。