恥辱の風習 捧げられた新妻

不意に背後から誰かに抱きすくめられた。

「っ……!?」

突然のことに瑞穂は反応できない。

太い二本の腕で上半身をギュッと抱きしめられた状態のまま立ち尽くす。

一体誰が?

どうして?

どこから入ったの?

無数の問いが脳内で交錯し、半ばパニック状態に陥る。それでも危機回避の本能が瑞穂の体をほとんど無意識に動かしていた。

「きゃあっ!?」

悲鳴混じりにその腕をはね除けると、前方に転がるようにして不審者から距離を取る。

大慌てで振り返ると、暗がりに真っ黒なシルエットが見えた。

がっしりした体格から察するに、どうやら男のようだ。

さっき感じた物音は錯覚などではなく、外の風の音でもなく──彼のものだったのだろう。

暗くてはっきりと見えないが、それでも男が笑みを浮かべたのが気配で分かる。まるで獲物を狙う肉食獣のような気配。

ふーふー、と荒い息を吐き出しながら、男がゆっくりと近づいてきた。

「だ、誰かっ……誰か来てぇぇっ……!」

恐怖のあまり、か細い悲鳴を出すのがやっとだった。

しかも両隣までは距離があるため、この程度の声量ではまったく届かないはずだ。

男が一息に間合いを詰め、瑞穂を抱きすくめた。あっという間に板敷きの床の上に組み伏せられてしまう。細身の夫とはまったく違う、筋肉質で重量感のある体がのしかかってきた。

両手を掴まれてバンザイのポーズに固定され、抵抗を封じられたまま熱い息を胸元に吹きかけられる。

瑞穂は恐怖にかられながら相手を見た。これだけの至近距離でも男の顔ははっきりと見えなかった。都会と違って周囲から明かりが入ってこず、月も雲に隠れているせいだ。

「や、やぁっ……」

「騒ぐなよ」

くぐもった声で告げた見知らぬ男がネグリジェの裾に手をかけると、乱暴な手つきで鎖骨辺りまでたくし上げた。

「あ……」

夜の空気が肌に当たり、ひやりとなる。

仰向けになってもほとんど潰れないお椀型の見事なバスト。Gカップを誇る乳房はまったく型崩れしておらず、二十五歳という女盛りの年齢もあって夜目にもその白さが眩しい。

乳首はまるで処女のように清楚な淡いパールピンクで、健康美と新妻の色香が同居した色遣いだ。

「い、嫌……!」

見知らぬ男に裸の乳房を見られている──羞恥と恐怖がない交ぜになった心地で瑞穂は必死に体をよじらせた。

下劣な視線から乳房を隠そうというせめてもの抵抗だった。

だが両腕を封じられている以上、その動きはほとんど意味を成さない。豊かな乳房が上下にバウンドし、左右に柔らかく揺れ動いては淫靡にフォルムを変えていくたび、男の双眸がいっそう強くぎらつく。

柔らかさと弾力を絶妙のバランスで兼ね備えた二十五歳の丸い乳房は、ぷるん、ぷるんと勢いよく震えながらひしゃげ、完璧な球形から縦長に、扁平に、絶えず形を変えていく。

その動きの一つ一つに熱い視線が注がれているのを感じた。これでは男の目を楽しませるだけだと悟った瑞穂は諦めて身動きを止める。

それにしても、この男は一体何者なのだろうか。

強姦魔という言葉が脳裏をよぎり、背筋がゾッとなる。唐突に訪れた貞操の危機に瑞穂はますます体をこわばらせた。

「いやらしいおっぱいしてるじゃねぇか。初めて会ったときから、いい体してると思ってたんだよ、へへ」

ハアハアと荒い息遣いが胸元に近づいてきた。

「……!」

初めて会ったとき、という台詞に、いつもの瑞穂なら相手が知人であることを疑ったはずだ。しかし緊張と混乱でパニック状態の今は、そこまで思考を巡らせる余裕がなかった。

柔らかいプリンのようにプルプルと震える双丘に男が顔を寄せた。

みちっ、みちっ、と豊かな乳肉が軋むほどの強さで揉みしだきながら、乳首に舌を這わせてきた。

「や、やめてぇっ……」

か細い悲鳴がほとんど無意識に漏れ出した。

ヌメヌメとしたおぞましい舌肉が乳首に巻きつき、ギュッと絡みついてくる。柔らかな乳首を強く絞られ、痛いと感じるギリギリのところで解かれると、今度は舌先で転がすようにしゃぶってくる。

唾液をたっぷりと塗りたくられ、ぴちゃ、ぴちゃ、と響く水音が見知らぬ男に乳首を思う存分舐められているのだという屈辱感をさらに煽った。

ただひたすらに、気持ちが悪かった。

(嫌よ……こんなの、駄目!)

意識の中が暗い気持ち一色に染まり、瑞穂は意識を正常に保とうと強く歯噛みして耐え忍ぶ。

不審者の舌が、夫以外に触れてはならないはずの乳房を好き勝手に舐めしゃぶっているのだ。

怒りと屈辱で全身に鳥肌が立った。

男は相変わらず思うさま瑞穂の乳丘を唇と舌で存分に味わっている。

そこに受けた舌の感触は、夫婦生活がご無沙汰だったこともあり、本当に久しぶりに味わうものだ。しかし、それをもたらした者が夫ではなく不気味な侵入者だという事実が悔しくてたまらなかった。

(ああ、どうして私、こんな目に遭っているの……!?)

これが夫による愛撫なら今とは正反対の気分だっただろう。全身が歓びに震え、愛する男性に身も心も委ねることができただろう。

男の口と舌が豊満なバストの丸みに沿って無遠慮に這い回った。

唾液と息遣いが乳肌を濡らし、くすぐり、さらに歯を立てられて甘噛みまでされてしまう。

まるで、この体は自分のものだとマーキングするかのような汚辱の刻印に、屈辱感がカッと燃え上がった。