真奈相手に一度は射精していたが、彼女自身が「誰にも秘密よ」と言っていただけに、彼女の口からバレる恐れはないはずである。
しかも運のいいことに、真奈は月曜日から教員研修のため、三日ほど学園を留守にするということで、彼女から再び淫靡な要求を受けることは、今週はまずあり得ないだろう。
水泳部入部の話も、真奈が帰ってきてから改めて話し合いをもつということになった。
真奈との関係がこのまま続くのなら、新聞部を退部し、水泳部に入りなおしてもいい。
正平はそう考えていたが、まずは美帆との次の体験に全神経を注ぎたかった。うまくいけば、二人の美人教師との酒池肉林の学園生活を送れる可能性もあるのだ。
美帆との約束の日まで、あと四日。
正平は、それまで自ら禁欲生活を強いるつもりでいた。
オナニーを覚えてから、ほぼ毎日のように射精し、ひどいときには日に三回放出してもし足りないと思うことさえある。
これほどの長い期間を空けることは初めてだったが、我慢に我慢を重ねたあとの射精が、強い快楽を与えてくれることを、正平は過去の体験から学んでいた。
二回目、三回目よりも、やはり一日置いたあとの一回目のほうが、圧倒的に気持ちがいい。
一週間の禁欲は、いったいどれだけの快感を与えてくれるのだろう。考えただけで、正平の股間には熱い血流が漲った。
学校に通うことがこんなに楽しいと、これほど感じたことは一度もない。
満員電車の窮屈さも、スクールバス内の息苦しさも、すべてが美帆との体験への試練とさえ思えてくる。
バスが学園の前へ停車すると、正平はスキップするような足取りで、乗降口から真っ先に降りていった。
その日は朝から鉛色の雲がたれ込め、四時間目の授業から外はどしゃぶりの雨が降り出していた。
LL教室で英会話の授業を受けていた正平は、美帆の顔をじっと見つめていた。
テキストを読む彼女の表情は、どこから見ても教育熱心な女教師そのものだった。
先日見せた淫蕩さは微塵もない。
(本当に、あのときの先生と同一人物なのだろうか? ひょっとして、エッチな悪魔でも取りついていたんじゃ?)
涼しげな目元、口元の優美な微笑はいつもと変わらず、正平はやはりきれいだなと、改めて認識した。
彼女は親の仕事の都合で、小学生までアメリカに住んでいたらしい。
当然のことだが英語はペラペラ、流暢な発音でしゃべる唇を見ていると、ついうっとり見とれてしまう。それは正平ばかりでなく、周りの女生徒たちも同様であった。
まるで天使の囁きに耳を傾けているような、はたまた子供が母親の子守唄にまどろんでいるかのような顔つきをしている。
もちろんそれは性別を問わずに、人を惹きつける美帆の清廉な美しさがあってのこと。
ややぽてっとした上品なピンク色の唇が、まるで正平を誘うように開かれる。彼女の口をついて出てくるすべての言葉が、甘い溜め息に聞こえてくるようだ。
(美帆先生にフェラチオしてほしいなぁ)
真奈から受けた口唇奉仕は、この世のものとは思えない、峻烈な快楽を与えてくれた。次は美帆と、とつい期待してしまうのも当然である。そしてあわよくば、彼女相手に童貞も捨てたかった。
(そういえば、この前はとなりの部屋で美帆先生と会ってたんだよな)
自然と、教卓の左方向にあるドアに視線が向けられる。
そこは英語講師室に繋がる扉だったが、その向こう側には美帆と二人だけの甘いひと時を過ごした部屋があるのだ。
美人教師から受けたパンティー手コキは強烈な体験だった。思い出しても、股間がムズムズしてくる。
今度はどんなエッチな手ほどきをしてくれるのか。正平はそれらの行為を夢想し、にやにやと口角をあげた。
「江本君」
まるで上の空、美帆の呼びかけがまったく耳に入らない。
「江本君!」
「え? は、はい」
慌てて椅子から立ちあがろうとした正平は、勃起したペニスを机の角に当て、そのまま前屈みに突っ伏してしまった。
(痛ぅ~っ)
「何やってるの? さっきからボケッとして。お腹が空いたのかしら? もう少しで終わりだから我慢してね」
クスクスと、女生徒たちの笑い声が聞こえ、両脇の女子がからかいの言葉をかけてくる。
「正平君、さっきの休憩時間にパン食べてたじゃない。それじゃ足りなかったの?」
「育ち盛りだもんね」
教室内がドッと笑いに包まれ、正平は顔を真っ赤にさせて俯くばかり。そんな正平を、愛理だけは憎しみの目で睨みつけていた。
授業終了のベルが鳴り響き、美帆とともに、生徒たちがLL教室からぞろぞろと出ていく。
正平もテキストを片手に出口へ向かいかけたのだが、突然背後から声をかけられ、後ろを振り返った。
神妙な面持ちをした愛理が、一人佇んでいる。
「江本君、ちょっといい?」
「え? う、うん」
何かただならぬ気配を感じた正平は、真摯な表情で愛理に相対した。
何人かの女生徒たちが何事かと、視線をチラリと向けたが、そのまま教室を後にし、室内には正平と愛理の二人だけが取り残される。
正平は愛理からの問いかけを待ったが、彼女はなかなか口を開こうとしない。よほど話しにくいことなのだろうか。
正平は思わず身構えた。
先週の金曜日に話し合ったとき、愛理は取りつく島もないほど冷たい対応を見せていた。