女教師たちの童貞いじり 美尻挑発の甘い罠

自分を毛嫌いしている彼女が、いったい何を――。

今さら話すことはないはずだったが、緊張感に耐えられず、正平はついに自ら切り出した。

「な、なんの用?」

愛理はひと呼吸置くと、正平を睨みつけながら、ようやく口を開いた。

「あなたに重要な話があるの。時間を作ってもらえる?」

愛理は今でも、明らかに正平を軽蔑している。突き刺してくるような視線が痛々しく、できればあまり関わりになりたくない。

「別にいいけど。今じゃダメなの?」

正平がそう返答すると、愛理はさらに眉尻を吊り上げた。

「そんな簡単に済ませられる話じゃないの。放課後に時間作って」

やや命令調の言葉にはトゲがある。正平は、思わず苦虫を噛み潰すような顔を見せた。

「今日、私新体操部の練習があるから、それが終わる頃に来てくれる?」

「えっ? 何時頃?」

「今日は部活を早めに切りあげる予定だから。四時半ぐらいかな」

「そんな遅くまで待ってられないよ」

新体操部のおよその終了時間は盗撮目的で熟知していたが、気が乗らない正平は、すぐさま不満げな顔を見せた。

「とにかく来て。もし来なかったら……」

「わかりました。ぜひとも行かせていただきます」

愛理の次の言葉は、言われなくても予測できた。

中学時代の正平の行いを、暴露するというのだろう。こうなれば、嫌でも行くしかない。

「じゃ、放課後待ってるから」

それだけ言い残すと、愛理はLL教室からスタスタと出ていった。

(なんかおかしいな。様子が普通じゃない)

普段の愛理は明るい活発な女の子で、クラスメートと談笑している姿をよく見かける。

正平と相対するときだけは別人の表情を見せるが、今日は軽蔑とは次元の違う、特別厳しい顔つきをしていた。

心の片隅に生じた不安が、夏の黒雲のようにわきあがってくる。正平は怪訝な表情を浮かべたまま、しばらくその場に立ち尽くしていた。

放課後になると、正平は図書室で時間を潰し、約束の五分前に一階にある講堂へと向かった。

階段を降りていくと、聞き慣れたクラシック音楽が耳に響いてくる。どうやら新体操部は、まだ練習をしているようだ。

正平は開かれた鉄製の引き戸の陰から顔だけを出し、講堂の中をグルッと見渡した。

部員たちは音楽のテンポに合わせ、フープやクラブなどを手に演舞をしている。美帆の姿はなく、今日は部員たちだけで練習をしているようで、愛理は扉の真正面、およそ五メートル先でリボン演技をしていた。

(柏木さんは四時半に切りあげるって言ってたけど、そんな気配は全然ないな。いつ終わるんだろう?)

「柏木さん、柏木さん」

正平は小声で呼びかけてみたのだが、愛理は演舞に夢中になっているのか、こちらを見ようともしない。

この状況を見た限りでは、彼女は正平の存在ばかりか、約束の時間さえも忘れているようだ。

困惑した顔つきのまま、正平は愛理の姿をじっと見つめた。

思えば中学時代、まるでストーカーのごとく、彼女のあとばかりを追っていた。

今その思いは美帆や真奈へと移り、愛理への興味は片隅へと追いやられてしまったが、一度は恋焦がれた相手だけに、やはり目の前にいれば気にはなる。

正平は愛理のレオタード姿を見るにつけ、徐々に心臓の鼓動を高まらせていった。

愛理はいつの間にか、大きな成長を遂げていた。

愛くるしい容貌は変わらなかったが、中学時代の彼女は身体が小枝のように細く、女らしい曲線はまったく描いていなかった。

それが今ではどうだ。胸はぷっくりと膨らみ、腰や太股にも適度な肉がついている。

もちろん肉感的な美帆や真奈の肢体とは比べようもないが、愛理が着実に大人の女性への階段を昇っていることは、正平にもはっきりわかった。

胸のあたりが重苦しくなり、股間が徐々に突っ張ってくる。盗撮癖がムラムラと込みあげ、正平はポケットに手を突っ込むと、携帯をグッと握りしめた。

(ここじゃ、やっぱりまずいか。ちくしょう、せっかくのチャンスなのに)

正平が舌打ちをした瞬間、愛理のつぶらな瞳がようやく向けられた。他の部員たちのほうをチラ見しながら、小走りで駈け寄ってくる。

「ごめん! 今何時?」

「うん、四時半は過ぎてると思う」

「あと二十分ほどで終わるから、悪いんだけど視聴覚室で待っててくれる? 終わったらすぐに行くから」

なんのことはない。これでは普段の練習時間終了と変わらなかったが、正平は嫌な顔一つせずに答えた。

「わかった。じゃ、先に行って待ってるよ」

「ホントにごめんね」

愛理が両手で拝みのポーズを取ると、正平は小さく頷き、そのまま踵を返した。

後方で、ガラガラと引き戸が閉められる音が聞こえてくる。やはり練習している姿を他人に見られるのは嫌なのだろう。

視聴覚室は記念館の四階、LL教室のとなりにある。上への階段を昇りかけた正平は、チラッと後ろを振り返ったあと、そのまま足を止めた。

鉄製の扉を見るその目が、鷹のような鋭さを帯びていく。正平はあたりを見回し、人がいないことを確認すると、忍び足で再び扉に近づいた。

(引き戸が完全に閉め切る音は、聞こえてこなかったけど……)

案の定、講堂内の明かりが隙間から洩れている。

鉄製の扉は重く、目一杯力を入れて閉めると、ガチンという大きな音を響かせてしまう。練習中ということもあり、愛理は他の部員に気を使ったのだろう、ちょうど三センチほどの隙間が開いていた。