女教師たちの童貞いじり 美尻挑発の甘い罠

そこまで言いかけて、愛理は困惑した表情とともに言葉を詰まらせる。

「おかげで一時間目の授業はさぼってしまったわ」

「……あっ」

正平は、講師室の隅にあった扉のことを思い出していた。

あのときは完全に閉められていると思っていたが、まさかそこから愛理が覗いていたとは。

いったい、いつから見ていたのだろう。

美帆の仕掛けてきた淫靡な誘いに、随分とみっともない姿を晒してしまったような気がする。それらの光景が頭に甦り、正平は恥ずかしさで顔を真っ赤にさせた。

それにしても、愛理はどういうつもりで糾弾してくるのか。教師と生徒の淫行を、学園側に告発しようというのか。

退学という二文字が脳裏を過り、正平は無意識のうちに自己弁護していた。

「でもあの場面を見たんだったら、僕のほうから変なことをしたんじゃないってことはわかるでしょ?」

そう答えると、愛理は悔しそうに唇を噛み締め、独り言のように呟く。

「きっと……何か考えがあってのことなのよ」

「え?」

「だって美帆先生、優しいもん」

「あ、あの。柏木さん?」

どうにもわけがわからず、正平がいぶかしげに問いかけると、愛理は再び言葉の洪水を浴びせかけた。

「だってあなた、女子トイレに忍びこんで、覗きをしてたんでしょ!? 普通だったら退学じゃない! きっと美帆先生はあなたをそうさせたくなくて、あんな行為に出たんだわ!!」

(あちゃぁ、そこまで聞かれていたのか)

正平は、バツが悪そうに顔をしかめた。

確かに教員用の女子トイレにいたことは事実なのだから、その点においての申し開きはできない。だが、最初から覗き目的で入ったわけではないのである。

正平は、慌てて愛理の言葉を否定した。

「でも、僕が女子トイレを使用した理由は、柏木さんだってちゃんと聞いていたでしょ?」

「知らない、そんなの! どんなわけがあったとしても、あなたが女子トイレに入って、覗きをしたことは事実でしょ!」

正平は、思わず苦々しい表情を浮かべた。

どうやら愛理は、最初の正平と美帆の会話までは聞いていないようだ。美帆の個室を覗き見したことは間違いないだけに、これではいくら説明したところで、愛理は納得しないだろう。

それにしても、愛理はなぜこんなに激高しているのだろう。

冷静に考えれば、たとえ教え子を守るためだとしても、一教師がとる行動でないことは、誰にでもわかるはずである。

正平は、素朴な疑問を投げかけてみた。

「あのさ、どうしてそんなに怒ってるの? 直接柏木さんに迷惑かけたわけじゃないし、あとは僕と美帆先生の問題だと思うんだけど」

「私がいやなの!」

「ど、どうして?」

そう尋ねると、愛理はポッと頬を染め、初めて狼狽の色を浮かべた。

まるで恋焦がれた乙女が、好きな人を目の前にしたときのように。その表情を見たとたん、正平はピンときた。

(そうか! 柏木さんは、美帆先生に憧れ以上の好意を抱いているんだ!)

年頃の女の子の複雑な心の内まではわからなかったが、彼女たちが同性を好きになるケースが多々あるという話は聞いたことがある。

中学時代にも、バスケット部の一人の女生徒が下級生の女子からの人気を集めたことがあったが、実際にラブレターを送ったというクラスメートがいた。

女子校に近い盟朋ではなおさら顕著で、美帆や真奈はもちろん、背の高いボーイッシュ系の先輩たちに女生徒たちが群がっている光景を何度も目にしている。

おそらく愛理もそのパターンなのだろう。

それにしても、思い込みとは怖いものだ。愛理のような優等生でも、恋に目が眩むと冷静な判断力を失ってしまう。

中学時代の正平も愛理に対し、半ば神格化したイメージを勝手に押しつけ、排泄行為さえしないと考えていた。

今の愛理もそのときの正平と同じ状態であり、美帆の淫らな行為はすべて正平に端を発した、やむを得ない対応だったと考えているに違いない。

最初は愛理の呼び出しの目的が不透明だったが、それが激しい嫉妬からくるものであったことを、鈍感な正平でもようやく把握することができた。

「二度と美帆先生に近づかないで! あなたが入りこむ余地なんて、いっさいないんだから!!」

正平自身も入学以来、美帆に憧れ続けてきたのである。

もし淫らな関係を結んだ相手が他の男子生徒だったら、やはりジェラシーに苛まれたことだろう。愛理の気持ちはわからないでもないが、さすがにここまで言われるとカチンとくる。

「でも……恋愛は自由だと思うし」

正平が唇を尖らし、不満たらたらに言い放つと、愛理は般若のように目を吊り上げていった。

「恋愛? 笑わせないで。あなたが美帆先生のことを、ホントに好きだとは思えないわ」

「好きだよ。入学したときからずっと!」

「じゃ、美帆先生との約束を破って、なんで真奈先生と変なことしてたの? 私、あなたのことを見張っていたのよ。そしたら放課後に屋内プールへ行って……」

淫らな光景を思い出したのか、愛理は再び肝心なところで言葉を濁す。正平はビックリ眼で問いかけた。

「ええっ? どっから見てたの?」

「プ、プールの裏側にある小さな窓よ」

「えっ! あそこから!?」

「あなたのようなコウモリ男なんて、美帆先生にはふさわしくないんだから!」