彼女が制服を脱いだら 清楚な学級委員と快活巨乳同級生と女教師

「ん……だ、ダメ……」

大好きな少女を前にして、もう理性などなかった。情動に突き動かされるまま、ワンピースのボタンを摘んで外すと、まみが小さく抗議の声をあげた。

それでも激情に逆らえずにボタンの隙間から指を滑り込ませる。すべすべとした肌が指先に触れたその時──。

「山川くん、お願い。ねぇ……怖いから……ダメ……やめてっ……」

まみは声を震わせて、寿治の胸板を両手で押しのけた。

「あっ……ごめん……つい……」

衝動につられ、ピュアな優等生の許されない領域まで入り込んでしまったことに気がついて慌てて手を引っ込る。

「……わたし……キスするの、初めてだったのに……」

まみが赤らめた顔に、今にも泣き出しそうな表情を浮かべて言った。目線は床に落としたまま、寿治の顔を見ようともしてくれない。

「……その……本当にごめん。怖がらせるつもりはなかったんだ」

急に気まずい思いがこみ上げてくる。まみの気持ちを確かめることさえもせずに焦りのあまり先走りすぎてしまったようだ。

「謝らなくてもいいけど……ごめん、山川くんとふたりでいるの、今はちょっと怖い」

「本当に、本当にごめん、景井さん。あの……本当に悪気があったんじゃないんだ。許してくれとは言わないけど……本当にごめん、ぼく、帰るよ。勉強教えてくれて、ありがとう」

「うん……」

このまま居残って弁解したい気持ちもあったが、まみの態度を見るととても居座れる雰囲気ではなかった。後ろ髪を引かれる思いで立ち上がると、まみはようやく顔をあげて寿治のほうを見てくれた。

「それじゃあ、また、明日……本当にごめん」

「ん……」

そそくさとまみの部屋を後にすると、寿治の気配に気がついたまみの母がリビングから廊下に顔を出す。

「あら、山川くん、もう、帰っちゃうの? 後で食後のフルーツでも、って思ったんだけど……なに、あのコってば、お客様を玄関まで送りもせずに」

まみの母は、まみそっくりの黒目がちな眼を廊下の奥へ向けると眉を顰めた。

「いや、まみさん、ちょっと具合が悪いみたいなんで……」

「あら、そうなの? あのコってば仕方ないわね。風邪でも引いたのかしら……ね、山川くん、また、よかったらいつでもご飯、食べに来てね」

「はい、ありがとうございます」

まみの母に見送られてまみの家を後にすると、マンションの廊下をエレベーターホールに向かって歩き出す。

(ぼく、何をしちゃったんだろう……)

唇に残った淡雪のような儚い感覚に、苦い後悔がこみ上げてくる。

(キスよりも先に……ちゃんと告白すればよかった)

どんよりとした失意に駆られながら、とぼとぼと自分の部屋へと向かおうとしたその時、ハーフパンツの後ろポケットに入れてあった携帯電話が鳴った。

(あれ、父さん……かな?)

いつもよりも早く帰宅した父親が、家に寿治がいないのに気がついて鳴らしたのだろうかと、ポケットから取り出すと、そこに表示されていたのは見覚えのない番号だった。いったい誰だろう。受信ボタンを押すと聞き覚えのある声が流れてきた。

「もしもし。トシくん? あたし、わかる? ねぇ、いま、何してるの? ちょっとだけ会えないかな」

夜の十時を過ぎているというのに、駅前は驚くほど賑わっていた。

さすがに個人営業の商店は閉まっているが、それでもチェーンのドラッグストアは煌々と明かりがついているし、ファーストフードのハンバーガーショップの中では、寿治と同世代の少年たちがポテトをつつきながら、なにやら楽しそうに盛り上がっている様子がウインドウ越しに見て取れた。

居酒屋から出てくる酔っ払いのサラリーマンたちに、なにやら怪しげな黒服の客引きが近づき、スカートの裾をヒラヒラと揺らして季節外れのノースリーブワンピースを身につけた女が雑居ビルの中へと消えていく。

山梨の夜とはまるで違う。

寿治が住んでいた街は、十時ともなれば、ほとんどの店がシャッターを落としていた。明かりがついているのは居酒屋とスナックとコンビニくらいのもので、どうしても友達と室内でしゃべりたい時は、街道沿いのファミレスが常だった。

(都会だなぁ……)

いったいどこから集まってきているのか。昼間と変わらない人々の数に感心を覚えながら駅を通り越し、十五分ほど進むと、やがて両脇の建物は民家やマンションへと変わり、人通りも少なく、街灯の明かりが目立つようになってきた。

「この公園かな……」

こんもりとした木々に囲まれた公園の中へと足を踏み入れると、奥へと続く遊歩道を突き進む。

野球場やあずまやを通り抜け、鬱蒼と茂った森に囲まれる形で、ぽっかりと切り開かれた広場が現れたのは三分ほど歩いた頃だろうか。

(どこにいるのかな)

滑り台に砂場にジャングルジム。昼間は子供たちで賑わっているであろう遊具も、暗闇に沈み込んで溶け入りそうになっている。

(あ、いた!)

ほのかな月明かりと外灯しかない夜の闇の中でも、その華やかな存在感のせいか、亜季の姿はすぐに見つけることができた。

一度家に帰って着替えたのか、水色のオフショルダーのニットにショートパンツを履いた少女の姿が、外灯でぼんやりと浮かび上がっている。

「亜季ちゃん、お待たせ」

「遅いよ、トシくんってばぁ」