彼女が制服を脱いだら 清楚な学級委員と快活巨乳同級生と女教師

(毎度毎度のコレばかりはなんとかならないかな……恥ずかしくて仕方がないんだけど……)

周りの視線を気にして身体を小さくしている寿治の傍に、亜季は軽やかな足取りで駆け寄ってくると、ピンク色のバンダナに包まれた弁当箱を差し出した。

「今日のおかずはねぇ、トシくんの大好きなオムライスだよ。あとえびフライも作っちゃった。ねっ、せっかくだから、中庭で食べない? 天気いいし!」

「うっ、うん、そうしようか」

集中する皆の視線に居たたまれなさを感じて席を立つ。

気になってまみのほうをちらりと窺うと、まみは寿治たちのことなど、まるで気に掛けてもいない様子でクラスメイトと笑いあっていた。

あれからもうひと月が経つが、あれ以来、まみとはロクに口を聞けていない──。

(やっぱり……怒ってるのかな……)

まみの部屋で拒まれたその翌日、マンションのエントランスで待ち伏せをして、謝った。

その時は、多少気まずくはあったものの、決して仲直りできないというほどに冷たい雰囲気だったわけではなく「……また、お母さんがいつでもご飯、食べに来てって」とも言ってくれたから、そのまま時間が経てば元のように仲直りできるのではないかとの期待も少しあった。

まみの態度が硬くなったのは、亜季と寿治が付き合っているということがクラス中に知れ渡った辺りからだ。

(考えてみれば、当たり前だよな……)

まみにあんなことをしたというのに、拒まれたら、すぐに別の少女に気を移した形になってしまったのだから、自業自得だ。

(せめて友達に戻れたらいいんだけど……)

亜季という彼女がいながら、厚かましい考えかもしれないが、今の状態では寂しく思ってしまう。

「ちょっとぉ、トシくんったらぁ、なんでため息とかついてるの? さっ、行こうっ」

別の少女のことを考えて、はぁとため息を漏らしている寿治の腕に亜季が腕を絡めてぶらさがるようにしがみつく。

「ちょっ、亜季ちゃん、学校でそういうのはダメだってば」

「なんで? いいじゃん。だって、わたしたちが、彼氏と彼女だってこと、みんな知ってるんだし」

慌てて振り払おうとするも、亜季はまるで見せびらかすかのように、さらに身体を寄せた。

「わぁっ、熱いなー。お前ら、いちゃつきすぎ!」

「あ、亜季ちゃん、わかったよ、外行こう、外!」

さっきまで冷やかしていたクラスメイトたちもさすがに呆れた様子だ。居たたまれなさに亜季と腕を絡めたまま、慌てて教室から退散する。

(はぁ……参ったな)

教室のドアを出る瞬間、まみはどう思ったかが気にかかり、亜季にバレないようにまみを盗み見る。

(あ……れ……!?)

ほんの一瞬だけ、まみと目が合った気がした。

「亜季ちゃん、あのさ、クラスの中でさ、イチャつくのは、やめてくれないかな」

亜季を人影のない裏林へと連れていったのは、ちゃんと話をしたかったからだ。

亜季の処女を貰った行きがかりで、付き合うことになったとはいうものの、亜季のことは好きだし、それなりに大切にしているつもりだ。

だから、亜季が行きたいところがあれば、時間とお金の許す限り付き合いたいと思っているし、見たいという映画があったら、興味がなくても付き合うようにしている。

ただひとつ、亜季のテンションの高さというか、周りを顧みないイチャつきだけは無理だ。冷たい、寂しいというのならば、せめて学校内ではやめて欲しいというのが正直なところ。

けれど、今までも再三、やめてくれと頼んでいるにもかかわらず、亜季の態度はまるで改善される様子はない。そこで、今度こそ、じっくりと説得しようと、ひと気のない裏林へと連れてきたのだった。

「なんで、学校でイチャつきたくないの?」

「だって、恥ずかしいし……」

「ふーん……本当にそれだけ?」

「それに、人がイチャついてる姿とか、見たくない人だっているだろうし」

「例えば?」

「え……失恋したばっかりの人とか……恋人がいても、上手くいってない人とか……あとは学校は恋愛しに来る場所じゃないって考えてる人だっているだろうし……」

ぶっきらぼうな口調で突っかかってくる亜季にたじろぎながらも、なんとか説得を繰り返していると、亜季はふと思いつめた表情を浮かべて寿治を見上げて言った。

「トシくん、本当はさ、見られたくないだけじゃないの? 特定の誰かに」

「えっ!? ……それ、どういう意味?」

「そのままだよ。ねぇ、亜季とイチャイチャしてるところ、見られたくない人がクラスの中にいるんじゃないの?」

本心を推し量るように、亜季は寿治の目の中をじっと覗き込んだ。真剣なその面持ちに心の中を見透かされたようで、胸がざわりと騒ぐ。

「そんな人、いないよ」

「だったら証拠、見せて」

「えっ、証拠って……」

言い終わらないうちに亜季は一歩前に踏み出すと、背伸びして寿治に抱きついた。ローファーに踏まれた落ち葉がかさりと足元で鳴る。

「ねぇ……キスして」

「えっ、だって、ここじゃまずいよ」

いくらひと気のない裏林といっても、誰かが来ないとは限らない。もしも、目撃され、学校の敷地内でキスなどしているところを教師にでもバレようものなら、大目玉を食らうどころか、停学の可能性だってある。

「大丈夫だよ、ほら、こうすれば、向こうからは見えないから」