彼女が制服を脱いだら 清楚な学級委員と快活巨乳同級生と女教師

「なんだか……喧嘩してない?」

まみの言う通り、遠目にも、ふたりは何か言い合っているように見えた。

「うん、喧嘩してるっぽい」

生徒たちに目撃されているとはまさか想像もしていないであろう女教師は、男性の胸ぐらに激しくこぶしを叩きつけている。男性がその手首を掴むと、身体を捻らせて乱暴に払いあげ、そのまま広場から走り去って行ってしまった。

(うわぁ、なんか大変な感じだけど、先生、大丈夫かな……)

絵里子の携帯を鳴らして呼び戻すつもりか、後に残された男性は、やれやれといった様子で首を左右に振ると、尻のポケットから携帯電話を取り出して耳へと当てた。

「先生、彼氏と喧嘩かな」

まみが残された男性を見つめたまま、抑えた声でつぶやいた。

「そうだね……あっ、でも、先生、前に、あの男の人は恋人じゃないって、言ってたけど……」

「……そっか。あの人、先生の彼氏じゃないんだ。じゃあ……わたしと山川くんみたいな感じなのかな……。ねぇ、山川くん、もしも、もしもだよ。あの日、わたしに……もう少しだけ勇気があれば、わたしたちも、今頃、違ってたのかな」

女教師の発言を思い出して答えると、まみはポケットの中の手をぎゅっと握り返しながら、ゆっくりと顔を寿治へと向けた。その顔には、今にも泣き出しそうな表情が浮かんでいる。

(勇気があればって……そんな……勇気がないのはぼくなのに!)

はっきりとしない自分の情けなさに、胸がきゅうっと絞られた。悪いのはまみではない。自分だと伝えたい。けど、どうすれば──。

「あっ……」

気がついたらまみを胸の中できつく抱きしめていた。

久しぶりに触れる柔らかな身体。ずっと待ち望んでいた、何よりも得たかった感触を胸の内にし、興奮が歓喜するように身体中を駆け巡る。

「まみ……まみちゃんっ!」

堪えきれずにいとおしい少女の名前を舌に乗せると、そのまま唇を寄せた。

血液がまるでマグマのように沸き立って、身体が熱い。

長らく欲していた少女が腕の中にいるという喜び。そして、我慢できない衝動に突き動かされながら、夢中で少女の唇を貪る。

「んっ……はぁ……んんっ……」

漏れる吐息でさえ愛おしい。ほんのりと上気した桃色の頬、ぎゅっと閉じられた瞼を彩る長い睫、ふにふにと柔らかい清らかな唇! 今この瞬間にわかった。何を失ってもいい、まみが欲しい!!

「ま、まみちゃんっ、ぼく、君のことが……本当は君のことが世界で一番好きだ! いや、二番なんてない。まみちゃんのことだけが、好きなんだっ」

「や、やだ……は、恥ずかしいよぉ……こんなところで……でも……でもっ……すごく嬉しい」

激情に駆られるまま思いの丈のすべてをぶつけると、まみは困ったように下を向いてしまった。その顔はまるで熟したトマトみたいに真っ赤で、そのうぶな様子にまたも愛おしさが募る。

「まみちゃん、ぼく、ふたりになれる場所に行きたいんだ! もちろん、まみちゃんの嫌がることはしないって約束する。ただ、ふたりっきりで過ごしたい」

「ん……」

まみは顔を真っ赤に染めたままこくりと頷いてくれた。

「なんだかドキドキしちゃうね。わたし、門なんて乗り越えたの、初めて」

息を潜ませ、足音を立てないようにゆっくりと廊下を渡り、教室に忍び込み終えると、ようやくひと心地ついたようにまみは息を大きく吐いた。

「いや、なかなか様になってたよ。まみちゃんは運動神経いいもんね。バレー部でも、すごく目立ってるし」

「やだぁ、恥ずかしい、見てたんだ」

「うん、見てた。ぼく、ずっとまみちゃんのことを見てたんだ」

窓辺に近づいて閉まっていたカーテンを開くと、ガラス窓の外から月明かりがぼんやりと差し込んできた。

誰にも邪魔されずにふたりきりになれる場所と考えたあげく、思い浮かんだのは学校だった。夜の学校にこっそりと忍び込むなんて、普段はとても考えられない。けれども、思いが通じた興奮になんだってできる気がした。

学校に着き、玄関の鍵が掛かっていることに気がついた時は、ひやっとしたが、バレー部の部室の窓の鍵が壊れていることをまみが思い出して、無事に侵入を果たせたのだった。

冬休みを迎えたばかりの教室は、しんと静まり返って寒かった。教室の後ろの床に座って、温もりを分けあうように寄り添いあうと、肩に手を回して抱き寄せる。

「ねぇ、夜の学校って、知らない場所みたいだね」

「怖い?」

「ううん、寿治くんがいるから怖くない……って言いたいところだけど、本当はちょっとだけ怖いかな。それにちょっとだけ寒いね」

まみが暗い廊下に視線を送ってぶるっと身体を震わせた。少しでも体温を伝えようと肩に回した手に力を込めると、まみが頭を横に傾けてもたれかかってきた。

ぷんと甘いクリームのような匂いが香る。

なぜ女のコはいい匂いがするのだろうと不思議に思いながら、まみの顔を覗き込むと、少女はふっと瞼を落とした。さっきしたばかりだというのに、もう恋しい唇に、ごくごく自然の流れで唇を寄せると少し顎をあげて受け止めてくれた。

まみの唇はすっかり冷えきっていたものの、その感触はふにふにと蕩けそうに柔らかだった。最初はさらりとしていたが、唇を重ねているうちに、やがてしっとりと湿ってきて、唇同士がより密着していく。