彼女が制服を脱いだら 清楚な学級委員と快活巨乳同級生と女教師

「うん、本当にいきなり……ごめんね」

「ううん、クラス委員の仕事なんだから仕方がないよ。そっか、じゃあ、まみちゃんの用事が終わったらぼくに電話……」

最後まで言い終わる前に、電話のベルが鳴った。まみに少し待っていてもらうように断って電話へと出る。

「もしもし……トシくん?」

受話器の向こうの相手は、亜季だった。

亜季との電話を切ると、玄関へと再び戻る。

なんとなく不安そうな佇まいで玄関に立っているまみに、亜季からの電話だったことを伝えると、いったいどう反応していいのかわからないといったふうな複雑な表情を浮かべた。

「それで亜季ちゃん、なんだって?」

「いや、あの……会って話したいことがあるって、それだけ」

「今日?」

「うん、これから会いに行ってこようかなって……年内にいろいろすっきりさせたいし」

「そっか……」

寿治から視線を逸らしてうつむくとまみの顔に、髪の毛がさらりと頬に落ちて陰を作る。その姿に、寿治の胸がちくんと痛んだ。言葉には出さないけれど、まみは寿治の優柔不断さに心を悩ませているに違いない。

(そうだ、ぼくはもう、まみちゃんと付き合うって決めたんだ……)

決意を固め直す思いでまみを見つめると、大きく深呼吸して言う。

「あの……まみちゃん、ぼく、用事が終わったら、学校に迎えに行くよ。だから、待ってて」

「……うん、わかった。待ってるから……絶対に来てね」

「うん、絶対に行く」

「じゃあ……行くね」

まみは不安に泣き出しそうな顔で、それでも気丈に微笑みを浮かべると、学校へと行ってしまった。

(よし、じゃあ、ぼくも出かけるかな……)

一旦部屋へと戻るとテレビを消して戸締まりと火の元を確認した。時計を見ると十八時を回ったところだ。今年ももう後六時間しか残っていない。

年が変わる瞬間は、きっとまみと一緒にいられるはずだ。

待ち合わせた場所は、亜季と付き合うきっかけになった公園だった。

年の瀬を迎えて混みあう街中を急いで自転車を走らせていると、駅から続く商店街の中ほどで見知った顔とすれ違った。絵里子だ。

「あれ、先生、こんばんは」

自転車を止めると、担任教師に声をかけた。両手に荷物を抱えた担任教師は、立ち止まると寿治の姿を認めてにこりと微笑んだ。

「あらぁ、山川くんじゃない。ずいぶんと忙しそうね」

「先生こそ、年末の買い出しですか?」

絵里子の両手に提げられたビニール袋からは、大根や葱といった野菜類が覗いている。雑煮の材料だろうかと思って尋ねると、絵里子は袋を持った手を軽く持ち上げて首を横に振った。

「そう、明日の餅つき用よ、学校の」

「あっ、じゃあ、先生も学校に行くんですか、大晦日だっていうのに、大変ですね」

「あら、先生もって……うふふ。クラス委員も呼び出されたってことを知ってるんじゃ、君、まみさんと上手くいってるのね」

「あっ……」

年上の女教師はさすがに勘が鋭い。なんとなく気恥ずかしい思いでいると絵里子は悪戯っぽい笑みを浮かべて言う。

「うふふ、青春っていいわね。先生も彼氏が欲しいなぁ」

「あっ……やっぱり、先生はあの男の人と……やっぱり別れちゃったんですか?」

「え? 男の人? なにかしら、それ」

クリスマスイブの日、女教師がツリーの下で男性と喧嘩をしていた姿を思い出す。言ってから慌ててまずかったかと思って口を噤んだが、女教師は驚いた顔で聞き返してきた。

「いや、あの……クリスマスイブの日に……その……隣町で先生を見かけたんです。ツリーのところで、前に画材屋で会った男の人と喧嘩してたから……彼氏じゃないって言ってたけど、でも、あんな喧嘩をするのってやっぱり彼氏さんなんじゃないかなって思って……」

今更誤魔化すこともできずにしどろもどろで説明すると、最後まで聞き終えた女教師は破顔した。

「あら、やだ。見てたの? でも残念、違うわよ。あれはね……わたしの弟よ」

「え……!? 弟さん?」

「そうよ。あの日は、弟に付き合って買い物に行ったんだけど、なんせすごい人だったでしょ。お互いにイライラして喧嘩しちゃったの。姉弟って遠慮がないから、すぐに喧嘩しちゃうのよね、でも、すぐに仲直りできるけど。それにしても、まったくもう、やぁね、前に彼氏じゃないって言ったじゃないの」

「うわぁ……すみません……」

驚きに口をぽかんと開けている寿治の前で、女教師は、笑いを堪えて目尻に涙まで浮かべている。

(そっか違ってたんだ……)

まさか勘違いだったとは。恋人だとか友達以上、恋人未満の関係だとかを勝手に推測していた自分が恥ずかしくて、顔がかぁっと熱くなる。

「まぁ、でも、嬉しいわ。心配してくれてたんだものね。ありがとう。じゃあ、わたしはそろそろ行くわね。学校で景井さんを待たせちゃったら悪いから」

「はい……それじゃあ、よいお年を」

「山川くんこそ、よいお年を!」

絵里子は寿治に手を振ると、まさに師走というに相応しい急いだ足取りで去っていった。

(そっか、勘違いだったんだ……)

けれども、その勘違いがきっかけで、まみと思いが通じあったのだから、絵里子には感謝の思いだ。

(先生、ぼく、がんばるよ)

自転車のペダルに足をかけると、ぐっと力を込めた。

どっぷりと暮れた公園の中、あの日と同じく、ブランコに腰掛けていた亜季は寿治の姿を見つけると、ぴょんと飛び降りて駆け寄ってきた。